田植え初めで1年を占う? タイの農耕祭『プートモンコン』とは

JA全農によると、日本における国民一人あたりのお米の年間消費量は、50年前のピーク時における120kgに比較して、現在では60kgとほぼ半減しているそうだ。その理由についてはやはり食の多様化が挙げられるだろうが、我々日本人のお米に対する意識の変化も大きいように感じられる。

日本と同じようにお米を主食とするタイでは、5月前後に始まる雨季の前に、『プートモンコンと呼ばれる田植え初めの儀式が行われる。日本ではほとんど知られていない行事ではあるが、そのプートモンコンについて知ることは、お米に対する意識をほんの少しでも上向ける機会になるのではないか。そんな思いから、今回はタイのプートモンコンについてご紹介したい。

 

『プートモンコン』とは?

プートモンコンとは、タイの王宮広場前で行われる、タイ王国王室によって行われる田植え儀式である。今年もタイ国王が直々に参加した重要な行事なのである。農耕祭とも呼ばれ、タイ中の農民が祝福を受ける式典の日として、官公庁などは休みになる。

今年のプートモンコンは5月14日。『今年の』とつけると、「なるほど、プートモンコンというものは旧暦で行われるのだな」と思う人もいるかもしれないが、それは誤りである。なんとこの日は毎年占星術によって決められ、タイ王国宮内庁によって発表されるのだ。

そしてその儀式中、二頭の聖なる白い牛がコメ、とうもろこし、豆、ゴマ、草、木、酒のうちの何を食べるかによって今年の作物の出来を占うという。古来から農耕は宗教的儀式と密接に結びついてきた。様々な方法で豊作を祈願してきたわけだが、タイにおける豊作祈願がこのプートモンコンというわけである。

tauehajime1(写真引用:タイ農業共同組合省 https://www.moac.go.th/calendar-preview-401291791806

 

プートモンコンの起源

プートモンコンはタイの農耕祭。つまり『祭り』である。プートモンコンの起源について調べるに際し、祭りとは何か、ということについて考えてみよう。そもそも祭りとは『祀る』が名詞になったもので、感謝や祈り、神や仏を祀る行為を指す。日本にもたくさんの祭りがあるが、それらも農作物に対する感謝や、豊作を神仏に祈る行事であった。

例えば、日本の春祭りは農耕の初めとして豊作を祈願する儀式がその大元となっている。つまり、日本もタイも祭りに対するルーツ、根っこの部分は全く同じなのだ。その年の農作の始めに豊作を願い、祈りと感謝を捧げる大切な機会なのである。

日本と同じように、タイにおける主要農作物はお米。しかも世界一のお米の輸出国でもある。であるから、稲作とその始まりを告げるプートモンコンに対する国民の関心も非常に高い。儀式終了後に広場にまかれる種籾は金運上昇の縁起物として観覧者が殺到するという。日本人も縁起をかつぐのが大好きだが、こういうところでもタイと日本の類似点が見られて微笑ましい気持ちになる。

tauehajime2(写真引用:タイ農業共同組合省)

 

2018年のプートモンコンの結果は?

プートモンコンのメインイベントと言えば、やはり牛が食べたものによって今年の作物の出来を占うという儀式であろう

なぜ牛なのか? それはやはりタイの農作における牛(水牛)との密接な関わりが関係している。タイの稲作と牛との関係については、筆者の別記事、『「人牛一体」で大暴れ!タイ伝統の水牛レースは農耕に携わる人々の熱い想いが込められていた』をぜひご覧いただきたい。

そして気になる今年の結果は、『十分な量の水と豊富な食料に恵まれ、交通と貿易が改善し、経済が発展する』という占いが出たそうだ。何とも景気の良い結果ではあるが、牛が食すコメ、とうもろこし、豆、ゴマ、草、木、酒からどうしてそこまで分かるのか、不思議なところでもある。

ところでこの占い、実はからくりがあって、毎年細かな違いはあれ『豊作』という結果に変わりはないそうである。タイ人としても本気で占いを気にするということではなく、田植え初めの景気づけ、という側面が強いのであろう。

tauehajime3(写真引用:タイ農業共同組合省)

 

日本と同じく、お米が主要な農作物であるタイ。その田植え初めに王宮を挙げて祭りと儀式を行うあたり、お米に関する関心は日本人以上に高いと言えるのかもしれない。

そしてプートモンコンの起源や縁起物を大切にするタイ人の気質について考えると、我々日本人との共通点や似ている部分が多いことにも気付かされるのではないだろうか。

米離れが着実に進行している日本。タイにおけるプートモンコンのように、様々な機会にお米の美味しさや大切さを見直す機会を持てるようにしていきたいものである。

 

文:dctyk
タイ在住のライターで、日本にも拠点を持つ。日本とタイを行き来しながら、タイの食文化を探る日々を送る。タイ人直伝の米の炊き方を元に、湯取り法にたどり着いた。お酒に関する造形も深い。

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