イネわらは捨てるところがないリサイクル資源

秋に収穫を終えるイネ。刈り取られたお米は、その後精米されて私たちの食卓へと並びますが、残されたお米以外の部分はどうしているのでしょうか。私たち日本人は古くから、イネのお米以外の部分大切に使ってきました。イネは食事だけではなく、私たちの生活に密接していたのです。


刈り取られたイネの今昔

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お米づくりの1年のページでも紹介しているように、収穫時、現在はコンバインを使うのが主流。刈り取りと同時にイネを脱穀。脱穀したもみとわらを分ける選別までの作業もコンバインで行ない、さらにはわらを細かく切断し、田んぼにまき散らすことができます。その後トラクターなどを使ってわらと土を一緒に耕し、鋤込むことで、わらを肥料分として活用しているのです。

そのほかにも家畜の資料、堆肥、畜舎の敷床として使われたり、野菜などを栽培する際のマルチ素材などとして、地面に敷いて雑草・害虫の発生を予防し、地面の温度を保たせたりなど活用されています。

しかし昔は、普段身につけるものや農業のための道具、家の屋根などをつくるためにもわらを使っていました。

農産物を結束するための縄をわらで編んだり、その縄でわらじ(草履)やみのを作ったり。農閑期の冬の仕事として、どの家でも家族総出で手作りされていました。わらじは、畑や田んぼで農作業をする時に履いていて、地域によっては昭和40年頃まで使われていたそう。同じように、みのは現代のレインコートのように農作業の際の雨具として、寒さや日光を防ぐためにも使用されていました。

他にも、帽子や笠、手袋など、さまざまな衣料品としてわらは大活躍。米を保存するための俵はもちろん、酒樽、弁当入れ、おひつ入れ、鍋敷きなど食品保存にも最適で、納豆づくりなどの製造にも欠かせないアイテムです。

また、昔はどの家もそうであったように、家の屋根としてわらを何重にも重ねて覆い、“わらぶき屋根”として日本家屋に欠かせない材料でもありました。わらを厚く重ねると、雨漏りもしにくくなるのです。このように、住宅用の資材としても活用。まさに、衣食住に必要不可欠な貴重な資材なのです。



神聖な場所にも“わら”を

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普段、神社などで目にする“しめ縄”や、お正月になると家々の軒下に飾られる “しめ飾り”。これらもわらで作られています。

しめ縄は、神様が宿る神聖な場所に飾ります。昔から日本人は、山や川、木や岩など、すべての物に神様が宿ると考えて来ました。そのため、神社はもちろん、山の中にある大きな巨木や岩、海の岩などにしめ縄が飾られるのは、神様が宿っているということなのです。

また、家を繁栄させ豊作をもたらす神様は、新年に家々にやって来て、一年の終わりに帰って行くと信じられていました。この神様は年神(としがみ)さまとよばれ、田の神と同じとされています。日本人は昔から、新年になると年神を迎えるために、しめ飾りや門松、鏡餅など、飾りや供え物を用意しました。

このように、神聖な場所にも活用されているイネわら。実は、うるち米よりももち米のわらの方が、撥水性・耐久性共に高いので、しめ縄など神事用のわら専用としてもち米を栽培している農家もいます。しめ縄用のわらは、長さや硬さ、色などが重要。青々とした美しい色にイネが生長する夏頃に刈り取って乾燥させるなど、特別な工程が必要になります。


毎年当たり前に見る光景も、その意味を知ると、昔から私たちは田の神様を信仰し、豊作を祈り続けて来たことが分かります。田んぼから生まれたイネを無駄にすることなく、そのすべてをきちんと使う。収穫に感謝することと同じように、イネに対してもその恩恵を大切にして来たことがうかがえます。


◆参考文献・サイト
・丸山清明監修『お米の大研究』PHP
・農林水産省「こどもそうだん お米」
 http://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0701/01.html
・本日のごはん塾
 http://gogolesson.jugem.jp/?cid=15
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