カリフォルニアのお米づくりと除草管理―慣行栽培と有機栽培での除草対策―

カリフォルニアのお米づくりと除草管理―慣行栽培と有機栽培での除草対策―

 

前回でも少し触れたが、カリフォルニアのお米づくりでの除草対策はどうしているのか? と、興味がある生産者の方も多いだろう。日本でもこの除草管理に頭を悩ませている農家の方のお話をよく耳にする。今回はカリフォルニアにおける慣行栽培と有機栽培での除草管理を比べながら、皆さんの参考になれば幸いである。

 

慣行栽培の除草対策

アメリカ、カリフォルニア州でのお米の慣行栽培における除草対策は、やはり除草剤に大きく依存している。除草剤と言っても、雑草の種類や散布するタイミングによって、さまざまな種類や特徴があり、水稲栽培においてはおおよそ15種類以上もの主流な除草剤がある。代表的なものに商品名"Londax"(ロンダックス)というスルホニルウレア系除草剤があるが、これは水草、特にコナギ(アメリカコナギ)などの葉を枯らす。また商品名"Cerano"(セラーノ)という塩素系除草剤は、ヒエ(イヌビエ)などを駆除するために使われる。

そうして除草剤の散布は例のセスナ機で行われることが多いが、薬剤の濃度、散布量、タイミングなどは厳密に計算、計画されて実施される。また、2種類以上の除草剤を組み合わせたり、落水したり、深水にしたりして、薬剤の効能を生かすように工夫している。農家一人ひとりを見ても、この面倒な薬剤使用について知識が乏しいので、Pest Control Advisor(PCA-ペストコントロールアドバイザー)という資格を持つ専門家に頼ることが常である。このPCAはカリフォルニア州の『Department of Pesticide Regulation(DPR)という農薬や化学肥料の法的な使用規制をする機関から認証されている。薬剤散布を専門とする会社とPCA、そして農家の三位一体的な役割によって、除草対策がなされているのである。

除草剤を使うことで、まわりの環境、特に水質や土壌浸透が問題になる。そこで農薬会社は即効性があり、かつ残留期間が短い新商品を開発し続ける。しかし、自然界は皮肉なもので、その薬剤に対して耐性をもつ雑草が出てくるようになる。数年前には効いた薬剤がだんだんと効かなくなるのだ。また、今までに見たこともないような雑草も毎年のように発見される。どこまでも果てしなく続く「いたちごっこ」のようだ、と思うのは筆者だけではないはずだ。

jyosoukanri1セスナ機による除草剤散布の様子

 

有機栽培の除草対策

有機栽培における除草対策は、機械除草と水管理に尽きる。機械除草といっても、日本のように水稲の株間に除草機を走らせるようなことはしない。基本的に田植えはしない直播栽培であるので、種を播く前が勝負である。播種前に浅く湛水して、水生雑草を生やし、落水後、浅耕して除草を繰り返す。ある有機栽培農家は、最終的な浅耕の仕上げにレーキ状の「スプリングピン」のアタッチメントで土壌面をなでるように除草する。土を掘り起こさずに、雑草の種を地表面に出さないようにする工夫である。これは特に乾田直播の場合に採用され、また、あまりにも雑草の繁茂がひどいときは播種後、稲苗の芽が出てからでも、このレーキで除草することも稀にある。

jyosoukanri2レーキ状の除草アタッチメント

乾田と湛水の場合では雑草の種類と生え方が違ってくる。乾田の場合はヒエやスゲ類の草が先に生えるため、稲苗の葉先までわざと深水にして雑草を抑える。湛水の場合は逆に水草が先に出てくることが多いので、稲苗が4葉から5葉程度のときに、落水してこれを枯死させるのである。水田の表面がひび割れるまで極端に乾かすこともある。

このように雑草の生え方を見極めながらの水管理が非常に重要になってくるが、この水管理で気をつけなければいけないことがある。それは、入水に混じって新たな雑草の種を呼び込んでしまわないようにすることである。頻繁に水管理することによってこのリスクは大きくなるが、入水口を2段構えにしたり、側溝の草刈りは必須だ。稲の生長を見ながら、かつ雑草の繁茂具合が収穫に影響しない程度に妥協していくことも、有機栽培には必要なことかもしれない。

jyosoukanri3有機栽培の水田と雑草(イヌビエ等)

有機栽培での除草管理に関して、もう一つ大事なことがある。それは水田と畑作の転作体系をとることである。いわゆるローテーションと呼ばれているものだ。年度ごとにローテーションすることによって、農地の雑草の生態を一定にしないのである。また時には数年ごとに休耕し、カバークロップ(ベッチやアルファルファ)のみを栽培することもある。有機栽培の生産者はそういう長期的な展望を踏まえ、生物多様性を維持することで、持続可能な農業を模索しているのである。

 

文:madon
アメリカ 北カリフォルニア在住。オーガニックのお米づくりを中心にアメリカ米農家サポート、精米、お米分析などに携わる。目下、持続可能性農業について大学で学びながら奮闘中。

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