"SAKE" is so cool!  イギリス初の日本酒醸造所とは


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イギリス人は、昔からビール好きの国民として有名である。たくさんのビール醸造所が国内に点在し、家庭でも作ってしまうほどの勢いだ。ところがここ数年、ジンの売り上げが急速に伸びるとともに、日本ブームの影響もあって、日本酒にも注目が集まっている。ロンドンの有名レストランには、たくさんの日本酒が並んでいる。驚くことに、その中には、“Made in the UK”と書かれた日本酒が存在するのだ。今回は、近年イギリスに誕生した日本酒醸造所と、そこで作られる“カンパイ酒”について紹介する。

 

イギリス初の醸造所がロンドンに!

2017年、イギリスのロンドン近郊にある小さな日本酒醸造所が開業した。その名は『カンパイ』。イギリス初の日本酒醸造所として注目を集めている。この醸造所は、イギリス人夫婦のトムさんとルーシーさんの2人で運営。この夫婦が日本酒に興味を持ったきっかけは、日本を旅している時に立ち寄った渋谷の居酒屋だった。そこで、焼き鳥と日本酒を楽しみ、日本酒に惚れ込んでしまったという。イギリスに戻り、書籍やネットの情報などを調べながら少量の日本酒を作ってみたところ、大成功。とはいえ、この幸運は続かず、次の一樽は失敗に終わった。それから、何度も失敗を重ね、醸造のテクニックを身につけていったという。

普段の2人はというと、夫のトムさんは、ノッティングガム大学でマルチメディア・エンジニアリングを専攻し、スイス銀行に勤務。一方、妻のルーシーさんは、バース・スパ大学で生物学を専攻し、化学業界で働いている。このように彼らは、現職を持ちつつ、カンパイ酒の醸造に従事しているのだ。平日は仕事の後に、週末は朝から 日本酒づくりに専念する。レジャータイムが取れず、週末のイベントへの参加を諦めることが多くなったと私生活の変化を語るが、それでも、“カンパイ酒”は2人にとって新生児のようなもの。我が子を育てるように大事に、そして着実に育てている。その喜びは何にも変えがたいものだ。

 

外国生まれの日本酒“カンパイ”はどんな味わい?
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カンパイ酒醸造所が目指す清酒とは、コクがあり香り高い日本酒である。これは、イギリス人の嗜好に合わせた日本酒を醸造したいというトムさんの意向だ。カンパイ酒は、日本産の伝統的な日本酒の味とは異なるが、日本酒独特の風味を失っていない。

では、どのような種類の日本酒が醸造されているのだろうか。ここで製造されているのは、純米酒と濁り酒の2種。いずれもアルコール分は15〜20%ほどだ。トムさんは、「伝統的な日本酒について、多くのイギリス人は『とてもアルコールが強い、口が焼けるようだ』と思っている」と話す。こうした意見を参考にして作られた純米酒と濁り酒。その風味は、次のように紹介されている。純米酒は、ドライでマイルド。塩味の料理や魚介類にとても合い、カクテルにも最適である。一方、濁り酒は、ミデイアム・ドライでやや甘め。夏の食事やデザートにオススメ。バナナとパパイヤの味がするとコメントした客もいるほど、フルーティーさも感じる。カンパイ酒は、イギリスの大手百貸店『セルフリッジズ』で購入できる他、ロンドンのいくつかの和風レストラン及び有名レストランで楽しむことができる。

イギリスの情報誌『ロンドニスト』によると、2017年時点で、『カンパイ』はクラウドファンデングにより、12、975ポンド(約1760万円)の寄付金を得ており、販売数を見る限り、2人の初商品は成功しているかのようだと報道されている。現在、彼らは、醸造量を増やすために、広いスペースへの移動を考えているとのことだ。

 

2018年オープン予定の堂島醸造所と閉鎖となったアラン醸造所

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メイド・イン・イングランドの日本酒を先駆けたカンパイ酒醸造所に、ライバルが出現する。それは、2018年オープン予定の堂島醸造所である。堂島醸造所は、大阪の堂島麦酒醸造所による新たな試みとして、イギリスに誕生する日本酒の醸造所だ。社長の橋本さんは造り酒屋で育ち、子供ながらに自分も酒を作るのだと信じていた 。その夢がイギリスのケンブリッジで間もなく実現するというのだ。「酒を通して、日本文化をヨーロッパに根付かせたい」との意気込みを日本の『Yomiuri Online』で語っている。

その一方で、度重なる盗難の被害により夢を諦めた醸造所がある。それは、スコットランドのアラン醸造所だ。アランのビールは、スコットランドでは人気があり、実績を誇る醸造所の一つとして認知されている。アランは、小学校跡を買い取り、日本文化の展示室を含む大規模な日本酒の施設の開業を計画。アメリカ産の日本米を使った日本酒醸造を目指していたが、前述の理由により志半ばで実現には至らなかった。

 

お米は、さまざまな国で、さまざまにアレンジされ楽しまれている。現在カンパイ酒醸造所は、地元のビール醸造所に酒粕を無料で提供しているという。近い将来、“酒ビール”といった商品がこのビール醸造所から登場するかもしれない。イギリスで誕生した小さな日本酒醸造所から、日本酒の可能性は無限であり、より多くの人々がもっと日本文化を楽しめる日は近いと感じる。

文:ラッド順子
イギリス在住のライター。イギリスの食文化などに精通し、イギリスのさまざまな魅力を発信している。旅行や食べ歩きも好きで、よくイギリスの穴場スポットを散策している。

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