ふきを佃煮風に煮たものを「きゃらぶき」といいます。きゃらぶきの「きゃら」は、伽羅煮(きゃらに)の意味で、これは醤油を使って伽羅色(茶色がかった黄褐色)に煮あげるためにこう呼ばれるのだそうです。
といっても、よく見かける市販のきゃらぶきは、「真っ黒に近い色に煮たふきの佃煮」ではないでしょうか。味も色も濃く煮たきゃらぶきもおいしいものですが、新鮮なふきが手に入った時は、なるべくその名の通りの伽羅色に煮あげて、あっさりテイストのきゃらぶきを作ってみませんか?
きゃらぶきの作り方
<材料>
ふき(野ふきなど細いもの)の茎部分
塩(板ずり用)
★醤油、砂糖、みりん、酒=2.5:1:1:1の割合を基本に好みで調節を。
*簡単に作るなら濃縮だしを少し薄めて使ってもよい。
好みで、タカノツメ、ごま油など
① ふきを洗う。根元や筋のへこみなどに汚れがついていることが多いので丁寧に。
② 洗ったふきをまな板の上にひろげ、塩を多めにふってまな板の上でごろごろと転がすようにする(板ずり)
③ ②のふきの塩を洗い流してから熱湯で2~3分ゆで、水にとって冷ます。
④ 1時間経ったあたりで水を替え、もう1時間程度水にさらす。
⑤ 太いもの、筋が多いものは皮をむく。根元を少し折ってそこからひっぱるようにするとむきやすい。
⑥ 好みの長さに切りそろえる。やや長めにしておいた方が、後でアレンジはしやすい。
*細めで皮が柔らかいふきを使う時や、野趣あふれる味を好む場合は、洗ったふきを好みの長さに切ってから軽く塩ゆでするだけでもOK。
⑦ 浅い鍋かフライパン(テフロン加工のものがおすすめ)にふきと★で合わせた調味料を入れて強火で煮る。調味料の量はふきが軽く浸る程度。
⑧ 調味料が煮立ったら弱火にして煮含めていく。ふきの食感が残る程度で火を止めて味を含ませる。
*タカノツメやごま油を加える時は、火を止める前に。
*味付けはあまり神経質にならなくても大丈夫。保存性を考えて醤油を多めにしてもよし、砂糖多めの甘いふきに仕上げてもよし。ただし、くれぐれも煮すぎには注意。
きゃらぶきの味わい方
噛むたびにふきならではの風味が香るきゃらぶきは、ごはんによく合うのはいわずもがな。炊きたてごはんに添えても、お茶漬けやおにぎりの具にしても味わい深いものです。
酢飯とも合うので、巻き寿司の具に使うのもよいでしょう。きゃらぶきとゆでた三つ葉だけを芯にした細巻きは、酒のつまみとしてもしゃれています。また、きゃらぶきを刻んで使うことも試してみてください。より食べやすくなり、子どもさんにも喜ばれるでしょう。
きゃらぶきの保存法
味をやや濃いめに作れば冷蔵庫で1週間程度は保存できますが、心配なら冷凍も可能。小分けにして冷凍しておくと、お弁当作りなどにも役立ちます。
作りすぎた時や冷蔵保存しても使い切れない時には、チャーハンや雑炊の具として使うほか、卵と相性が良いので卵焼きやオムライスに使うのもおすすめです。
また、時にはサンショウやゴマなどと合わせると、また違う風味で楽しむことができて飽きません。写真は、刻んだきゃらぶきに、砕いた甘湯葉、木の芽、すりごまを混ぜています。箸休めとして、またおにぎりの具としてもぴったりです。
新鮮なふきさえ手に入れば、きゃらぶきは簡単に作れます。店頭でふきを見かけたら、あるいは野山でふきを摘んで作ってみませんか。保存料や添加物なしで作ったきゃらぶきは、ほのかに苦いふきの風味が生きていて「きゃらぶきってこんな鮮やかな味だったの?」と驚かされること請け合い。
日本人が古くから愛してきたごはんのおとものひとつ、きゃらぶきの味わいを再確認してみましょう。
文:松本葉子
食と旅を専門とするフリーランスライター。全国の飲食店のほか、農家、牧場、漁協など生産現場での取材を元にした記事を雑誌、webなどで執筆。自身の料理スキルを生かした記事執筆や食品企業へのレシピ提供も行う。