田植えせずにお米をつくる!?水稲直播栽培 Part2 -アメリカのお米づくりと直播のやり方とは!-

田植えせずにお米をつくる!?水稲直播栽培 Part2 -アメリカのお米づくりと直播のやり方とは!-

 

前回に引き続き、今回はアメリカ、カリフォルニアでの水稲直播栽培のやり方について、もう少し詳しく紹介したい。

 

圃場の準備

水田圃場の準備は、冬期湛水もしくは春期湛水の後、落水し、浅耕して行うのが一般的である。一部の有機栽培農家は冬期にカバークロップ(ベッチなどのマメ科)を栽培して、鋤き込んだ後に湛水していることもある。これは水稲以外の作物から水田へと転作する場合によく実施される。また、水稲栽培は基本的に連作圃場だが、地力維持の観点から、他の作物(トマトやコーンなど)への転作も容易に行われる。日本のようにひとつの圃場において、お米の連作をできるだけ維持しようとする感覚は薄いかもしれない。

冬期湛水する主な理由は短期間の内に稲わらなどの分解を促進することと、冬に北方から飛来する数百万羽にものぼる水鳥、渡り鳥の生息地を確保し、野鳥の食餌や排泄物などによる有機物堆積、分解を助長するためとされている。

浅耕は数段階に分けて行われる。まず荒おこし(Plowing)、粉砕(Disking)、整地(Planing)という順序で、深さおおよそ15〜20㎝ぐらいまで耕起するのが通例である。もちろんこの過程で、圃場の均平がGPSシステムなどによって補正される。一般に荒おこしは写真①のようなChisel Plow(チゼルプラウ)、粉砕は写真②のDisk Harrow(ディスクハロー)、整地には写真③のCorrugated Rollers(コルゲートローラ)が使われる。

 

okomechoku2 1①Chisel Plow(チゼルプラウ)

 

okomechoku2 2②Disk Harrow(ディスクハロー)

 

okomechoku2 3③Corrugated Rollers(コルゲートローラ)

 

直播方法

湛水直播の場合は上記の浅耕の後、湛水して、4月後半から5月中旬ごろ飛行機で種籾を散播する。播種量はおおよそ160〜180パウンド/エーカー(18〜20kg/反)である。種籾は一度、水に浸漬され(約24時間)、脱水(約24時間)してから播かれるが、酸素発生剤(過酸化カルシウム)をコーティングされることも多い。発芽に必要な酸素を供給するためだ。このコーティングは日本でも従来、行われてきた。また最近では鉄粉をコーティングし、その重みで種籾が沈むような工夫もある。

注目すべきは湛水前の圃場面の小さな溝である。播種後、この溝の谷間に見事に種籾が入り、発芽するのをはじめて見たときは驚きだった。これは、北カリフォルニアの春先の気候が関係しており、この時期、強い季節風がよく吹く。この風は水田の水面を波立たせ、種籾をその溝に導くのだ。      

okomechoku2 4湛水前の溝の様子

 

乾田直播は浅耕後に汎用播種機で条播される。種籾は浸漬しないで播かれることが多いが、この播種機にちょっとした工夫がある。V字ディスクの後にヘラ状のプレートを付け、種籾を鎮圧しながら、水または液肥を注入する。発芽に最低限必要な水分を供給するのが目的である。その後、ローラーで表土を鎮圧する仕組みだ。播種の深さはおおよそ8~10㎝。鳥による食害もない。播種量はおおよそ100〜150パウンド/エーカー(11〜17kg/反)である。およそ10日ほどで見事に発芽が揃ってくるが、やはり農家としては発芽が揃うまでの間は祈る気持ちだ。

okomechoku2 5汎用播種機

 

okomechoku2 6播種機の工夫(白いヘラ状のプレート)

 

水稲の発芽と水管理

稲苗は直播後、おおよそ7日~14日の間に発芽が揃って、目視で確認できるようになる。湛水の場合は播種後の水管理に気を配るそうである。前述の季節風や出芽時期をみながら水深の調節が必要になるからだ。一方、乾田は湛水に比べて早期に出芽を確認しやすいが、播種後、4日~5日の間に土中内の種籾を一部、掘り起こして出芽を確認する農家も多い。その後、稲苗の3葉程度から徐々に湛水していく。

okomechoku2 7乾田直播の土中の種籾

 

okomechoku2 8乾田直播時の播種後約10日

水田の水管理は日本と同様、畔と入排水口を作り、管理していく。日本に比べて1枚の圃場面積が大きいので入排水に時間がかかる。農家の経験と感が問われる作業でもある。

一般的な水管理の方法はFlow through System(フロースルーシステム)と呼ばれる。側溝から水を導入し、勾配の高い側から低い側へ順次入れていく。管理コストが安価で、入排水口の設置が容易だという利点がある。


okomechoku2 9一般的な水管理方法(フロースルーシステム)
引用元:
University of California, California Rice Production Workshop, v09 http://rice.ucanr.edu/files/196747.pdf

 

okomechoku2 10畔と入排水口

 

水稲直播栽培について2回にわたってご紹介してきたが、アメリカ、カリフォルニアでのお米づくりが、皆さんの今後の水稲栽培のヒントになれば幸いである。今回はあまり触れなかったが、除草対策や施肥のタイミングなどについてもまた別の記事でご紹介できればいいと思う。

 

文:madon
アメリカ 北カリフォルニア在住。オーガニックのお米づくりを中心にアメリカ米農家サポート、精米、お米分析などに携わる。目下、持続可能性農業について大学で学びながら奮闘中。

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