お米の収穫後、日本では伝統的な稲架(はさ)掛けがお米をおいしくする要因のひとつになるのであるが、カリフォルニアのお米づくりにおいてはそういう伝統もなく、あくまで合理的に乾燥、精米されている。今回はカリフォルニアの大規模栽培ならではのお米の乾燥、精米工程について皆さんにご紹介したい。

 

カリフォルニアのお米の乾燥

ご承知のごとく、コンバインによる収穫後は速やかに乾燥工程にかかるのが通例であるが、乾燥施設の状況によって、一時、貯蔵サイロに保管される場合もある。カリフォルニアのお米づくりにおいては、それぞれの工程が分業化されて、乾燥工程だけをビジネスにしている会社も少なくない。特に最近ではオーガニック米の需要も増えつつあり、オーガニック認証を受けた乾燥施設も出てきた。

それぞれの農家もしくは籾米を買い取った業者は、あらかじめ日時とおおよそのお米の量を乾燥施設に連絡し、依頼しておくことが前提になる。農繁期の10月初旬ごろはこのスケジュール調整がとても重要になってくる。籾米の水分量に合わせて時期を決め、乾燥までの時間、乾燥に要する時間も考慮しつつ、いかにお米の品質を損なわないようにするか。経験と速やかな判断が必要になる。

乾燥方法は大きく分けて、コラムドライとビンドライの二つに分けられる。日本でもカントリーエレベータ式乾燥、貯蔵施設が各地にあるが、このアメリカ方式を参考に導入したものが多い。コラムドライは、高さ30メール近くある円筒状のビンの中心に温風(55℃~65℃)を送り込んで乾燥する方法である。ビンの中心部と周囲はメッシュ状の網で仕切られ、上部から投入された籾米はその円筒の外側を自然落下しながら乾燥されていく。目的の水分量に達するまで何度かこれを繰り返す。

ビンドライは、円筒錐形の構造で、大きなスクリューで内部攪拌しながら下から送風することによってゆっくり乾燥する方法である。乾燥後はいずれの場合も、一旦貯蔵されて、テンパリング(籾米水分の均一化)時間が必要になってくる。特にコラムドライの場合は比較的高温で乾燥するため、テンパリング時間が12時間近くかかることもある。

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▲貯蔵施設

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▲ビンドライ式乾燥施設

 

カリフォルニアの精米工程

乾燥後は、大抵の場合はお米の買い手側の条件に合わせて、精米、出荷となる。各精米業者はそれぞれ独自の精米機を導入し、顧客の要望に沿って受託し、玄米、白米、胚芽米などに精米して梱包、出荷している。

やはり精米機は日本のメーカーのものが多い。微調整が可能で、耐久性にも優れた日本製が好まれる。特に色選別機などはほとんど日本のメーカーである。精米施設を訪問し、機器に日本のメーカー名が入っているのを見るたびに、日本のお米づくりにかけるこだわりと技術は本当にすばらしいと誇らしくなる。(具体的な会社名公表は控えたい)

精米工程は前処理でゴミや小石を除去、籾摺り、精米、選別(色選別及び金属除去)、梱包という工程である。日本の大規模な精米工程の場合とほとんど変わらないが、一つひとつの機械が見事に連携され、梱包までされる光景は見事である。また、アメリカの各精米業者は籾摺り後、もしくは精米後にサンプリングし、グレードを判定して、それぞれの顧客にUSグレード認証を発行している。このグレードはUSNo.1(優良)~USNo.6(可)の6段階に分けられ、異物混入(緑米など)度合い、お米の割れ具合、精米ロス度合いなどを総合的に判断して、ひとつの基準として付加価値をつけるものである。

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▲カリフォルニアの精米施設

お米の精米過程で出てきた副産物、もみ殻、糠、割れ米などは実に有効に利用されている。もみ殻はバイオマス発電の原料になる。糠は家畜飼料や化粧品(米油)の原料に、割れ米は米粉になる。精米業者はそれぞれの委託先からこれらを安く買い取り、ビジネスに繋げている。

また最近では、施設を稼働させる電力のエネルギーを90%以上ソーラー発電によってまかなう業者もある。敷地内に敷きつめられたソーラーパネルは、まるで宇宙観測所のようである。

 

品質を保つ工夫

農家の方ならご存じだと思うが、お米の品質を損なうことなく乾燥、精米するにはやはり籾米の水分調整が重要である。収穫時おおよそ18~22%ある水分を乾燥工程でゆっくりかつ均一に14%前後に落とすことが大事である。水分を落としすぎると割れ米が起きやすい。また乾燥が終わって精米まで数週間貯蔵する場合、コクゾウムシなどの被害に遭わないように、炭酸ガスを充填して処理する業者もある。

籾米の状態で貯蔵することで、お米の品質が長期間保たれることは確かであるが、この貯蔵期間が精米までどの程度必要なのか。ということをよく把握して上記の水分調整をしていくことが大事である。また玄米で貯蔵する場合は温度管理が大切である。おおよそ15℃~20℃程度で、湿度の低い場所が望ましい。

このように収穫後の品質維持にも心がけ、お米をおいしく食べていただき、消費者からの好評を聞くことは農家にとってなによりうれしいことであるし、皆さんの今後の糧にもなるはずである。

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文:madon
アメリカ 北カリフォルニア在住。オーガニックのお米づくりを中心にアメリカ米農家サポート、精米、お米分析などに携わる。目下、持続可能性農業について大学で学びながら奮闘中。