土をいじってはいけない日!? 土地の神様を祀る『社日』。

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「立春」や「春分」といった二十四節気や5月5日の端午をはじめとする五節句以外に、季節の節目となる「雑節」。その雑節のひとつ、春分の日、または秋分の日に最も近い戊(つちのえ)の日を『社日(しゃにち)』と言う。今では祝日となっている「春分の日」や「秋分の日」が馴染み深く、社日を知らないという方も多いかもしれない。雑節は日本の気候風土、主に農作業に合わせた季節の目安であり、社日もまた、昔から私たちの生活に欠かせないものなのだ。

 

春は土地の守護神へ豊作を祈り、秋には収穫を感謝する

1年に2回おとずれる『社日』。春の社日は春社(しゅんしゃ・はるしゃ)、秋の社日を秋社(しゅうしゃ・あきしゃ)と言い、春にはその年の五穀豊穣を祈り、秋には稲穂をお供えして収穫に感謝する風習が古くからある。


社日を祝う習慣は中国から来たと言われており、「社」は土・土地の神の意味。日本では古くから自分の土地の神様=産土神(うぶすなかみ)を大切にする文化があったため、社日の風習は広く信仰されることになったそう。

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春分と秋分のそれぞれに近い戊の日を社日と定めていることも、この「土・土地の神」であることが関係している。「戊」の日は五行説に基づく十干(じっかん)のひとつで、これもまた中国から伝来されたものだ。十干とは、万物は木、火、土、金、水の5種類の元素からなるという考えに、それぞれ兄(え)と弟(と)に分けたもの。「戊」は、五行説で「土(兄)」(つちのえ)にあたり、山のように動かない土を意味することから、土の神を祀る日に選ばれたとも言われている。

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このような由来から、社日に土をいじると土地の神の怒りにふれると、土をさわることを避ける風習があり、農作業を休むことも。とはいえ、春の社日は種まきの時期として、秋の社日は収穫の時期として、農業をなりわいとしてきた私たち日本人にとって、とても大事な1日なのだ。

 

地域で異なる土地ごとの神様を祝う行事

上述のような風習から、春の社日には米、麦、豆、粟、稗(ひえ)または黍(きび)の五穀の種を供えて豊作を祈ったり、「地神講」、「社日参り」といった行事が行われる。福岡県の博多では「お潮井」と呼ばれる箱崎浜の真砂を竹かごに入れて持ち帰り、玄関先に下げたり、建物や土地のお祓い、田畑の虫よけとして撒いてお清めしたりという風習も。長野県小県郡では、土地(田)の神様が春に山から里へ降りてきて秋になるとまた山へ帰ると考えられ、社日には餅をついてお祝い。京都府の一部では、朝早くから東にあるお寺や地蔵をお参りして日の出を迎え、その後順を追って南〜西へお参りをして日の入りを見送るというならわしも。産土神様の数だけ、社日を祝い感謝する行事はさまざまだ。

 

雨が降る? 耳がよくなる?『春の社日』にまつわる伝承

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産土神様を祀る行事の他に、春の社日にはさまざまな言い伝えがある。「春の社日にお酒を飲むと、耳の聞こえがよくなる」として、この日に飲むお酒のことを治聾酒(じろうしゅ)と呼ぶ。「春社にお参りをすると中風(脳卒中)にかからない」など、身体に関する伝承も。また、「春の社日にはよく雨が降る」ことが多いことから、この日の雨を社翁(しゃおう)の雨と呼ぶそう。


今年の春の社日のお天気はいかがだろうか。土や空を見ながら産土神様のことを少し意識してみると、自然と密接に関わっていた祖先の気持ちにちょっと寄り添えた気がしてくる。

参考文献・サイト:
『暮らしのならわし十二ヶ月』飛鳥新社
『和のくらし・旧暦入門』洋泉社
暮らし歳時記
http://www.i-nekko.jp/meguritokoyomi/zassetsu/shajitsu/

日本文化研究ブログ
https://jpnculture.net/syanichi/

日本文化いろは辞典
http://iroha-japan.net/iroha/A05_zassetsu/04_syanichi.html

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