370年の想いを受け継ぐ五穀豊穣の舟歌神事「ホーランエンヤ」

日本各地には豊作を祈願するさまざまな祭りが残っているが、その中でも知る人ぞ知る珍しい祭りがある。「ホーランエンヤ」と呼ばれるこの祭りは、島根県松江市で10年〜12年に一度行われる祭りで、なんと9日間に渡って行われる日本でも珍しい祭事だ。

370noomoi1出典:総務省ホームページ(https://www.chiikinogennki.soumu.go.jp/furusato/digital/detail/id/kyo/7_839

ホーランエンヤは日本三大船神事に数えられる神事で、大規模な船団を繰り出して五穀豊穣を祈願する祭りだ。松江には宍道湖、中海という大きな水瓶があり、そこを繋ぐ大橋川および意宇川(いうがわ)に絢爛豪華な何艘もの船が歌と踊りを披露しながら行き交う。そのホーランエンヤが来たる2019年5月18日から開催されるので、それに先立ちこの祭りにどのような歴史があるのか、また見どころはどこか、などをご紹介しよう。

 

ホーランエンヤの起こりは江戸時代

ホーランエンヤは漢字で書くと「宝来遠弥」もしくは「豊来栄弥」と書くが、これは「城山稲荷神社式年神幸祭」という祭りの行事の一つだ。その起こりは慶安元年(1648年)にまでさかのぼり、当時は出雲国(いずものくに)と呼ばれていた地で大規模な凶作が起こったことに由来する。

当時の松江藩主 松平直政公がこの凶作を鎮める五穀豊穣の祈願を行うため、松江城にある城山稲荷神社からご神体を船に載せ、意宇川の途中にある阿太加夜(あだかや)神社まで運んで祭礼を行ったのが最初だ。その後も10年〜12年周期で定期的に行われる祭りとなり以後370年に渡って続いているが、その伝統は地元の有志によって受け継がれている。

 

ホーランエンヤには「櫂伝馬(かいでんま)踊り」と呼ばれる独特の歌と踊りがあるのだが、それは代々経験者によって後世に語り継がれてきたものだ。ホーランエンヤの継承は、開催期間が長く空くことや、途中戦争や災害などの発生によりこれまでずっと順調だったわけではない。前回開催時の経験者からうまく伝えられるかどうかが問題だったが、それでも熱意ある地元の人々の思いによって現代まで受け継がれてきたのだ。そういった人々の熱意も、この祭りで体感することができるだろう。

 

神様とともに川を往来する9日間

ホーランエンヤは全体で9日に渡って執り行われる祭りで、「渡御祭」、「中日祭」、「還御祭」の3つの行事に分かれる。

370noomoi2出典:総務省ホームページ(https://www.chiikinogennki.soumu.go.jp/furusato/digital/detail/id/kyo/7_839

2019年の日程では「渡御祭」が5月18日(土)、「中日祭」が5月22日(水)、「還御祭」が5月26日(日)で、それぞれの日程で特別な行事が行われる。中日祭は阿太加夜神社境内での7日間の祈祷が行われ、その中日に踊りが奉納される。だがそれより大きな見どころは、渡御祭および還御祭で奉納される、船団による櫂伝馬踊りだ。

櫂伝馬踊りは手漕ぎの船の上で執り行われる歌と踊りの神事で、大橋川沿いの次の5つの地区がそれぞれの地区に代々伝わる櫂伝馬船を繰り出す。これらの地区にはそれぞれ違う踊りと歌が代々伝わっており、順番に流れてくるそれぞれの船がそれぞれの櫂伝馬踊りを披露する。

370noomoi3出典:総務省ホームページ(https://www.chiikinogennki.soumu.go.jp/furusato/digital/detail/id/kyo/7_839

またその5隻の周りには大小様々な100隻以上の船が取り巻き、豪華な大船団を作り上げて大橋川と意宇川を練り歩く。そして観客はその大船団を川のほとりや大橋川にかかる橋の上から見物するのである。

 

櫂伝馬踊りは五船五様

ホーランエンヤの最大の見所、それは何よりも各地区の櫂伝馬踊りの踊り手と歌い手だ。

370noomoi4出典:総務省ホームページ(https://www.chiikinogennki.soumu.go.jp/furusato/digital/detail/id/kyo/7_839

櫂伝馬踊りは昔から各地区の有志によって伝えられてきたもので、その多くは口伝や経験者からの教育で行われてきた。櫂伝馬踊りをメインで踊るのはその地区の小学生や中学生と決められており、ホーランエンヤが開催される数年前から厳しい特訓を重ねて櫂伝馬踊りを体得するのだ。

櫂伝馬踊りという名前の通り船の櫂を持ちながら踊る踊りは勇壮で、各地区の違いを見てみるとよいだろう。また歌も地区ごとに独特で、「ホーランエンヤ」の歌声とともに船に乗る全員が一体となって歌い上げる。この歌もまた代々受け継がれてきたもので、こちらもぜひ聞き比べてみて欲しい。

 

櫂伝馬船は渡御祭で松江市中心部から阿太加夜神社まで1日をかけて移動をし、還御祭でまた戻ってくる。その間松江の中心分は普段の静かな町とはがらっと変わって賑やかになり、ホーランエンヤと前後してさまざまなイベントや催し物も開催される。10年〜12年ごとという他に例を見ないほど長いスパンで行われる祭りなので、10年のうちで最も松江が盛り上がる時期と言ってもよいだろう。長い人生のうちで10回も観ることは出来ないホーランエンヤ。ぜひこの機会に松江に来て、五穀豊穣を願い続け、舞われてきた勇壮な踊りと大船団の往来する姿を堪能してほしい。

 

◆開催日程

日程:2019年は5月18日(土)、22日(水)、26日(日)

ホーランエンヤ2019 公式ホームページ

https://www.ho-ran2019matsue.jp/index.html

 

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