ご飯が白いカビに覆われると豊作かも?鎌倉から続く米占いとは

 

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大分県日田市の大原八幡宮で毎年3月15日に開催されている米占い(よねうらない)。建久4年(1193年)の鎌倉時代から記録があり、国の選択無形民俗文化財に指定されている。1ヶ月保管した小豆飯に生えるカビの生え方で、地域と五穀の吉凶を占う祭りだ。

占いの流れ


旧正月が過ぎた2月15日。大原八幡宮にて米1升3合、小豆3合の小豆飯が炊かれる。全国には同じようにカビの生え方で吉凶を占う『粥だめし』の祭りが複数あるが、粥ではなくご飯を使うのは特徴の一つだ。

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用意される器は図の通り2つで一つは日田の地形、もう一つは五穀を現す。地形盆は藤かずらで河川をつくり地形に合わせた丘を作り盛り付け、川名の札を立てる。五穀盆は5等分に仕切りを作り稲、粟、豆、稗、麦の札を外側に立て小豆ご飯が敷かれる。
米占い日田市提供写真日田市提供

お祓いを終えると神殿内に納め、鍵をかけて1ヶ月間保管される。
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3月15日、朝8時。大波羅八幡宮と刻まれた鳥居をくぐりきれいに掃除された境内に入る。階段を登ると市有形文化財に指定されている1687年築造の楼門と1794年築造の本殿が現れる。


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大原八幡宮の起源は天武天皇の九年(680年)とされる歴史ある神社だ。


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8時になると神殿で祝詞がはじまる。このあたりでだんだんと占いを行う地元の氏子さんたちが集まってくる。今年は5名ほどが参加されていた。10名ほどになることもあるそうだが、昔に比べると人も減っているそう。氏子が占う事も特徴の一つで、神社の宮司さんたちは占いの結果に関与しない。地元の『古老』が務めるとされている。

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祝詞が終わると、保管されていた盆が外の占いの為に設置された台へと運び出される。

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予想以上にカビがモッリモリだ。その後スタッフで美味しく頂けるレベルではない。しかし不思議なことに全く臭くはない。

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氏子さんたちの注目を一身に集めるカビたち。

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皆さん真剣にカビを見つめている。カビは周りの環境で変化していく為、遅くとも30分以内には占い終わる必要があるのだ。

占う基準について『日田市十年史』から引用する。

地形盆について
・全面、白一色のカビで覆われている…日田市郡平穏無事
・赤色の斑点がある…河川の位置、方位から判断して〇〇村方面に火災がある
・青色のカビがあり、亀裂が生じ下流に向かってカビがふくれ上がっている…〇〇川筋に大洪水がある
・やや黄色がかったカビで塗りつぶしたようになっている…暴風に見舞われる

五穀盆について
・仕切られた区域内が白カビのみで覆われ表面に露がある…豊作
・黄色や赤色を帯びた斑点があり露が少ない…干ばつにより凶作
・青色や紫色にカビた部分がある…病虫害のため不作

また、円の中心は植え付け時、外側は収穫時を表すそうである。

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この五穀盆の写真を見ると、米麦の間くらいに黒いカビがあるので田植え後に病害虫が出る可能性があるが、収穫時には回復し豊作となるだろうとのこと。じっとカビを見つめていると、神秘的にも見えてくるような、見えないような…。

いつから始まった?


大原八幡宮の歴史が書かれた巻物(縁記)に建久4年(1193年)に大伴氏が鎌倉鶴岡八幡宮に習い『大原の祭の式制を定』とした記録があり、そこから米占いが始まったとされる。また、江戸時代末の祭事についてまとめられた『大原宮行事旧慣』には米占いの手順が示されている。

正月十五日
当日小豆粥の神饌を献し撤饌の上、粥だめしを造り本殿に納む、
丸盆に此御飯をつめ五つにしきり、稲、麦、粟、大豆、蚕の札を立つ、次の盆には藤蔓にて郡内河川の型を置き、川の名札を立置、
二月十五日
早旦正月十五日調整のかゆだめしを神殿より出し、従覧所に陳列して衆庶に観覧せしむ、之を米占いと云う、
諸人は此かゆだめしに依って、作並の吉凶を勘し地方の天災地異を判断す、


粥とあるが古来、御飯は固粥と呼ばれていたとから現在の小豆飯のことを粥と呼んだと推測される。以前は五穀に蚕が含まれていたが現在は時代に合わせて稗に変わっている。日付の違いは旧暦の表記のため。


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カビの意味をどう感じるか


毎年参加しているという男性に話を聞いてみた。「やっぱり凛としますね。旧正月が終わり、年の初めにその年の吉凶を考えるというのは」とのこと。ちょうど農作業がこれから始まる時期でもある。宮司さんから言われる事を聞くのではなく、見た人が自ら考えることに意味があるのかもしれない。2017年の水害は予見できなかったそうだが、5年前はピタリと当たったとの話もあった。的中率は不明だそうだが、毎年自然と人が集まり占いが続いている。
初めてこの占いを知った人は「ご飯がもったいない」と感じる事もあるだろうが、今よりもっと穀物が貴重であったろう鎌倉からずっと、神社と地域に暮らす人との協働で伝えられてきている不思議なお祭りである。地元の氏子でなくても見学自由なので、一度訪れてみては。

◆開催日程
毎年3月15日
午前8時〜8時20分ほど
大原八幡宮(大分県日田市田島184)
お問い合わせ先:大原八幡宮(0973-23-8951)
この記事の情報は2018年のもの

参考文献
「日田市史」 発行編集 日田市 平成2年発行
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