【季節の行事レシピ】管理栄養士が教える「お米づくりの節目“半夏生”にいただく『タコ料理』」

一年でもっとも日が長く夜が短い夏至を迎えると、いよいよ夏に向けて暑さも増していきます。「半夏生ず(はんげしょうず)」という言葉を聞いたことがありますか? 以前は夏至から数えて11日目、七十二候の末候にあたる日を指していました。現在は黄経※100度の点を太陽が通る日とされており、例年7月2日あたりになります。「半夏」とは「カラスビシャク」という薬草の漢名で、この時期に花をつけることから「半夏生ず」と言われているそうです。この時期は農家にとってとても大事なことから雑節のひとつ「半夏生(はんげしょう)」としてお米づくりの節目とされていました。

hangeshou1▲サトイモ科の植物「カラスビシャク」。コルク層を除いた塊茎は、「ハンゲ」という生薬として用いられる

※黄経:地球から見て、太陽が一年かけて地球を巡る軌道を黄道と言います。その塩の軌道上で、春分の日の太陽の位置を0度として(夏至が90度、秋分が180度、冬至が270度)、太陽が何度の位置にあるかによって今日が何の日にあたるかを測ります。その角度のことを言います。

 

お米づくりに大切な「半夏生」とは?

hangeshou2

古来、夏至から数えて11日目にあたる半夏生までに田植えを終えていないと、秋の収穫の実りが減る(=半分になる)と言われており、「半夏半作(はんげはんさく)」「半夏半毛(はんげはんけ)」といった言葉があったほど。また、半夏生の日に降る雨のことを「半夏雨(はんげあめ)」といい、この日の天気によって一年の豊作を占う習わしや、この日に雨が降るとそれをきっかけに大雨が続くという言われなどがあります。さらに、かつては半夏雨には毒気が含まれていると考えられており、井戸に蓋をして備えたという驚きの慣習も。また、田植えを見届けた田の神様が、田んぼから天へ昇るときの雨だという言い伝えが残る地域もあるようです。

 

農家の労をねぎらう半夏生の行事食

hangeshou3

この日は、田植えを済ませた農家が休息をとる日ともされており、各地に半夏生に食べる行事食の風習が残っています。なかでも有名なのが、関西地方で食べられているというタコ。稲の根がタコの足のように、多くしっかり張るようにと願い食べ始めたのが発祥だとか。香川ではかつて、田植えや麦刈りを手伝ってくれた人たちのために、半夏生にうどんをうって振る舞っていた由縁から、7月2日は「うどんの日」となったと言われています。

また、福井県では昔から半夏生の日に丸焼きのサバを食べる習慣があるようです。江戸時代に福井県の東部、越前大野の殿様が、田植えで疲れた体を癒し、暑い夏を乗り切るために、領民に奨励したのが始まりだそう。今では夏バテ防止のスタミナ食として、県内全域でおなじみの行事食となっています。

半夏生の日に食べられていたタコやうどん、サバの中から、今回はタコを使ったサッパリしたごはんのおともをご紹介します。


◆タコとオクラのサッパリ和え

hangeshou4

<材料>
タコ(茹でたもの)   80g
オクラ         1袋
長芋          70g
生姜          1カケ
白だし         大さじ1程度

<作り方>
① オクラはサッと茹でて食べやすい大きさに切っておく
② 長芋は皮をむいて食べやすい大きさに切っておく
③ 生姜はみじん切りにし、タコは食べやすい大きさに切っておく
④ ボウルなどに白だしと生姜を入れて軽く混ぜ、タコ・オクラ・長芋を入れてよくなじませるように混ぜたら出来上がり

半夏生に欠かせないタコを使ったサッパリ和えは、オクラや長芋の粘り気が白だしや生姜などと絡んでとても美味しい一品です。オクラの他にきゅうりでも美味しくできます。サッパリしていますが、しっかりとした味付けなのでごはんのおともはもちろん、ごはんにかけても美味しくいただけます。お酒のおつまみとしても◎。これから暑くなり食欲がなくなる時期にも最適です。切って和えるだけのとっても簡単レシピなので、この機会に作ってみてはいかがでしょうか。


参考サイト:
半夏生さば - 越前おおの観光ガイド
https://www.ono-kankou.jp/tourism/detail.php?cd=488

福井の和食 | 福井県観光情報ホームページ ふくいドットコム
http://www.fuku-e.com/wasyoku/dento_detail.php?id=10

 

参考文献
『日本の七十二候を楽しむ』東邦出版
『日本の365日を愛おしむ』東邦出版
『暮らしのならわし十二か月』飛鳥新社

 

文:カベルネmama
管理栄養士、食生活アドバイザー2級の資格を保持。保育園で献立作成や食育を担当していた経験を持つ。現在は幼い3人の息子の育児をしながらレシピ記事作成を行う。料理を作ること・食べることが大好き。子どもたちのため、栄養たっぷりで簡単に作れ、喜んで食べてくれるものを考案する日々を送る。

 

この記事のレシピはコチラをクリック

お米の味が生きている。深淵なるにごり酒の世界

「にごり酒は、どぶろく、清酒のどちらでしょうか?」ーーそんなクイズを出されたら、大半の人が「どぶろく」と答えるだろう。しかし、にごり酒はれっきとした清酒の仲間である。白く濁った見た目から、にごり酒とどぶろくを同類と思い込んでいた人も多いだろうが、酒税法上は全く別物だ。では、濁っているのに清酒とはこれ如何に? というわけで、その辺りの疑問を糸口に、深淵なるにごり酒の世界へとご案内しよう。

 

濁っていても漉せば清酒、漉さなければどぶろく

nigorishunosekai1

酒税法上の定義によると、清酒とは「米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、漉したもの」とされている。要は、醪(もろみ)を漉す工程があるか否かが分かれ目となる。そして、現在にごり酒として市販されているものは全て漉す工程を経ているため、清酒の一種として分類される。反対にどぶろくは漉さないため「その他の醸造酒」に分類される。つまり清酒という呼称は、酒の色や透明度とは無関係ということだ。


では、どうしてにごり酒は白く濁っているのか。布目の粗い酒袋で漉すことにより、酒粕部分を全て取り除かずにあえて残しているためである。それらは「澱(おり)」と呼ばれ、原料米、米麹やその分解物、酵母などで構成されている。つまり白濁した澱は、元をたどればお米そのものであり、お米由来の旨味をより色濃く味わえるように造られた酒がにごり酒なのである。

 

にごり酒はどぶろくか否かで国税庁と激しいバトル

nigorishunosekai2

1899年に自家醸造が法律で禁じられて以来、どぶろく造りは一部の神社を除いて違法となり、酒造りの表舞台からは完全に姿を消した。それを1966年に「大極上中汲にごり酒」という形で蘇らせたのは、340年以上の歴史を持つ京都伏見の清酒『月の桂』の13代蔵元・増田徳兵衛である。

徳兵衛は、目の粗いザルで漉すという奇策を編み出した。漉せば清酒に分類されるという法の隙を突いたのである。しかし清酒の酒税は「その他の醸造酒」よりも低いため、にごり酒はどぶろくか否かを巡って国税庁と激しい議論が繰り返された。そして最終的には、酒を漉す網目の大きさなどにごり酒の定義を2年かけて検討し、ようやく清酒として認められることになった。これを機に全国の酒蔵が、どぶろく風のにごり酒を造れるようになったのである。


様々なバリエーションを楽しめるのがにごり酒の魅力

にごり酒の味わいは、「お米そのものの味が生きている」ことに尽きる。基本的に透明感のあるすっきりした飲み口の清酒に対し、にごり酒はまったりと濃厚なのが特長だ。また、種類が豊富でそれぞれ風味が異なるため、好みの一本に巡り会えた時の喜びは格別である。


にごり酒はまず、搾りたてをそのまま瓶に詰めた生タイプ(活性タイプ)と、加熱により発酵を止め酒質を安定させた火入れタイプの2種類に大きく分けられる。生タイプは瓶の中で発酵し続けるため、シャンパンのような刺激的な飲み口が楽しめる。ただし味の変化や傷みも早く、瓶が割れたり開栓時に噴きこぼれたりもするので、流通や管理には細心の注意が必要だ。


そして澱の残し具合によってもバリエーションがある。どぶろくに近い白濁タイプはそのままにごり酒と呼ばれるが、その他にも、白い澱がたっぷりと瓶の底に沈殿した「おりがらみ」や、澱がうっすら残る程度の「ささにごり」「うすにごり」などがある。飲む際は、瓶を軽く振って底に溜まった澱を混ぜ合わせて飲むも良し、上澄みだけを楽しんでから、後で濃厚な澱の部分を楽しむもまた良し。さらにはロックにしたり、炭酸水で割ったり、柑橘類を搾ったりと、楽しみ方は飲み手次第である。

nigorishunosekai3
「白河の清きに魚の住みかねてもとの濁りの田沼恋しき」という江戸時代の狂歌がある。賄賂政治で悪名の高い田沼意次が失脚し、白河藩の藩主松平定信が老中となって寛政の改革を推し進めた際、窮屈な世を憂いた庶民が田沼時代の「濁り」を懐かしんで詠んだ歌だ。
澄んだ酒はもちろん旨いが、濁った酒もまた乙なもの。ぜひ「清濁併せ吞む」広い心持ちで、にごり酒の奥深い味わいを楽しんでいただけると幸いである。

参考サイト:
酒税法における「清酒」の定義|国税庁
https://www.nta.go.jp/about/council/sake-bunkakai/021127/shiryo/07a.htm

「にごり酒」の飲み方とおすすめの逸品紹介 - macaroni
https://macaro-ni.jp/32993

KURAND(クランド)
https://kurand.jp/21413/

夏に飲むべき日本酒は濁り酒のワケ| 日刊SPA!
https://nikkan-spa.jp/1356856

「元祖」にごり酒で清酒の新ジャンルを開拓|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
http://j-net21.smrj.go.jp/expand/shigen/jirei/masuda.html

どぶろくらぶ
https://doburoku.biz/doburoku/

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/田沼時代#当時の認識・評価

【初夏レシピ】管理栄養士が教える!「袋で漬ける♪ 簡単はちみつ梅干し」

hachimitsuume1

【季節の行事レシピ】管理栄養士が教える「入梅の時期に欠かせない『梅仕事』」で、梅干しの基本的な漬け方についてご紹介しましたが、私はこれまでいろいろな種類の梅干しを購入していました。自分で漬けていなかった理由、それは「漬けるのにとても手間がかかって面倒!」だから。しかし!! この方法で作ったところ、とても簡単で美味しい梅干しができたのでご紹介します。しかもカビ発生の心配もいりません。梅干しを漬けてみたいけど、ちょっと面倒だと思っている方がいらっしゃったら是非一度試してみてくださいね。

 

◆袋で漬ける♪ 簡単はちみつ梅干し

hachimitsuume2

<材料>

黄梅           1kg

粗塩           100g(今回は梅の10%)

はちみつ         100g(今回は梅の10%)

ホワイトリカーなどの焼酎 適宜(袋内の消毒用)

※梅は黄色く、やや赤みがかった少し熟したものを選ぶと美味しく漬かりやすいです

 

<作り方>

① 梅を洗って傷があるものは取り除き、清潔な布巾などでしっかり水気を拭く

 

② 爪楊枝で梅のへたを取る
hachimitsuume3

③ ジップロックなどの保存袋の内部をホワイトリカーで消毒する
※ホワイトリカーをそのまま注いで口を閉じよく振ると内部全体を消毒できます。ホワイトリカーは消毒後捨ててしまっても、そのまま梅を入れて漬けてもOK。

 

④ ③の中に②の梅と粗塩を入れて梅によく絡むように振り、ジップロックを2重にして(外側にもう一枚する)タッパーなどの容器に入れて野菜室の一番下に入れ、梅の上に直接重みのある野菜を載せる
※梅酢が上がってくるまでは1日に1回は上下を反対にしましょう(1週間程度)
※タッパーの蓋は被せないでその上に重めの野菜を載せて重石代わりにする

hachimitsuume4

 

⑤ 3~4日経って梅酢が少し上がってきたらはちみつを加える
hachimitsuume5

⑥ 漬けはじめから1週間は必ず上下を反対にする

⑦ その後は時々反対にする程度で、梅雨明けまで約1ヶ月そのまま冷蔵庫で放置

⑧ 梅雨が明けたら瓶などの清潔な容器に梅のみを移す

⑨ 瓶ごと蓋をあけて外、もしくは太陽が当たる窓辺に置いておく

hachimitsuume6

⑩ ⑨を3日ほど繰り返したらほぼ完成

⑪ 瓶詰めのまま冷蔵庫で1ヶ月保存。1ヶ月くらいから美味しくいただけます

 

梅干しを冷蔵庫の中で漬けることで一番心配なカビの発生が防げます。重石を持っていない方も多いと思いますが、野菜がその変わりをしてくれるので一石二鳥ですね。たくさんの量はつけることができませんが、ちょっと試しに作ってみたい方にはとても簡単にできる方法だと思います。はちみつが入っているので、少しだけ酸っぱさを抑えた味になっています。両親や子どもたちにも好評のレシピです。是非試してみてはいかがでしょうか。

 

文:カベルネmama

管理栄養士、食生活アドバイザー2級の資格を保持。保育園で献立作成や食育を担当していた経験を持つ。現在は幼い3人の息子の育児をしながらレシピ記事作成を行う。料理を作ること・食べることが大好き。子どもたちのため、栄養たっぷりで簡単に作れ、喜んで食べてくれるものを考案する日々を送る。

 

この記事の印刷はコチラをクリック

 

 

お米の酒の原点・どぶろくについて[後編]地域おこしとどぶろく

1899年に酒税確保のため自家醸造が法律で禁じられて以来、密造酒としてのイメージが強いどぶろくは、約1世紀にわたりマイナーな存在として扱われてきた。しかし、小泉内閣時代に導入された通称「どぶろく特区」をきっかけに、町おこしの切り札としてどぶろくを活用しようとの動きが全国各地で広まっている。

 

特区第1号で造られたどぶろくに舌鼓を打った小泉首相

doburokukouhen1

「どぶろく特区」は、規制緩和によって地域活性化を目指す国の構造改革特区の一つである。酒税法では年間6,000リットル以上(一升瓶で約3,300本超)醸造できる業者だけに酒造免許の取得を認めているが、特区内では農家などが自家産のお米でどぶろくを製造し、自ら営む民宿や飲食店で提供するのであれば、年間6,000リットルに満たなくても酒造免許を取得できるものと定められた。


制度が始まった2003年にどぶろく特区第1号として認定されたのは、宮沢賢治の生誕の地で、日本の民俗学の先駆けとなった柳田國男の「遠野物語」でも知られる、岩手県遠野市である。特区内で初めて仕込んだどぶろくが完成した際は、小泉首相(当時)がマスコミの前で試飲して「美味い!」と絶賛。塩爺こと塩川財務大臣(当時)やキャスターの筑紫哲也氏も現地に赴き、百数年ぶりに解禁となったどぶろくに舌鼓を打った。これらのPR効果も手伝って、2004年に遠野を訪れる観光客は大幅に増加。経済波及効果も2.2億円と推計され、どぶろく特区による町おこしは順調なスタートを切った。

 

過疎村の住民の意識を変えたどぶろくによる村おこし

遠野市での成果が呼び水となり、その後全国の自治体でどぶろくによる地域振興への取り組みは着実に広がった。2018年8月現在、全国のどぶろく特区は184カ所に上っている。中でも有数の成功事例となったのが、人口約1,600名の過疎村である高知県三原村だ。2005年に3軒の農家がどぶろく製造免許を取得して農家食堂をオープン。「三原村=どぶろくの村」というブランドを浸透させるため、試飲と販売を主体にした「どぶろく祭り」を企画・開催した。すると、村の一大イベントだった花火大会でさえ1,000人程度しか集客できなかった所に、4,000人もの観光客が訪れたのである。


この成功に後押しされどぶろくの製造農家は7軒に増え、うち5軒が民宿を併設。新たにお遍路さんの宿泊需要も生み出した。祭りも今では「どぶろく・農林文化祭」と名を変え、コンスタントに毎年4,000人以上を集客。町おこしの起爆剤となっている。お米はどぶろくにすることによって、そのまま販売するより付加価値が最大15倍にもなると分かり、村長は「どぶろくが村民の意識を変え、村で様々なチャレンジが広がるきっかけになった」と日経新聞の取材に対して語っている。


全国各地にあるどぶろく祭りも地域振興に一役

doburokukouhen2(出典:大分県杵築市観光協会 フォトブック)


三原村同様、岐阜県の郡上大和、神奈川県の秦野、愛媛県の宇和島など特区を機に始まったどぶろく祭りは、各地域で名物行事として根付き始めている。
その一方で、国から醸造認可を受けた神社が神事として執り行う伝統的などぶろく祭りは、現在全国で20以上に達している。中でも世界遺産に登録された岐阜県白川郷で行われるどぶろく祭り(10月)。愛知県大府市の長草天神社で500年以上続くどぶろく祭り(2月)。大分県杵築市の白鬚田原神社で1300年以上続くどぶろく祭り(10月)などは全国的にも有名だ。
祭りを楽しみにそれぞれの地を訪れる観光客も増えており、経済効果の面でも地域振興に一役買っているのは間違いないようだ。

doburokukouhen3(出典:大分県杵築市観光協会 フォトブック)

古来、日本の各地では、収穫されたお米を神に捧げる際にどぶろくを造って供え、来期の豊穣を祈願してきた。特区をきっかけに甦ったどぶろく文化が、これからは地域おこしという新たな形で町や村に豊穣をもたらし、人々に活力を与えてほしいものである。

*「お米の酒の原点・どぶろくについて[前編]歴史・特徴・効用など」の記事はこちらをクリック。

参考サイト:
Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/どぶろく

Tohoku Web Magazine みちの
http://michino.jp/food/886

【知識創造ケーススタディ】〜「遠野スタイル」のまちづくり〜
http://open_jicareport.jica.go.jp/pdf/1000026691_02.pdf

どぶろくで活性化 高知・三原村、特産品づくりに刺激/日本経済新聞 電子版
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35585620Q8A920C1LA0000/

過疎村、「どぶろく」で起死回生 農家の「個性」が原動力/事業構想大学院大学
https://www.projectdesign.jp/201701/liquor/003360.php

全国各地のどぶろく祭り/神社と古事記
http://www.buccyake-kojiki.com/archives/1009900029.htm

 

【季節の行事レシピ】管理栄養士が教える「入梅の時期に欠かせない『梅仕事』」

umeshigoto1

田植えの時期を今か今かと待っているような水田が、あちらこちらに現れるこの時期。新暦の6月5日頃〜6月20日頃は、二十四節気の「芒種(ぼうしゅ)」にあたります。「芒(のぎ)」とは、稲や麦などの穂先にある硬い針のような突起のことを意味し、文字が表すように「芒を持つ植物の種を撒く時期」とされています。地域によってはすでに稲の田植えは終わっている所もあるかと思いますが、この時期は昔から農家にとって大事な「梅仕事」がはじまる時期としても覚えておいて欲しい季節です。

 

古くから人々の生活に息づく芒種の七十二候とは?

“二十四節気”とは半月毎の季節の変化を表しますが、これをさらに「初候・次候・末候」と約5日おきに分けて気象の動きや動植物の変化を知らせるのが七十二候。二十四節気と同じく七十二候も古代中国で作られました。二十四節気は古代のものがそのまま使われているのに対し、七十二候は何度も変更されてきており、現在主に使われているのは明治時代に改訂された「略本暦」。七十二候を知ると、日本の美しい風土や人々の些細な習慣など、繊細な季節の移ろいを感じることができます。

芒種の初候は「蟷螂生ず(かまきりしょうず)」。カマキリが卵から孵化し生まれる頃を表します。カマキリは、稲や野菜に手をつけず害虫を補食してくれると、昔から“益虫”とされていたのです。次候は「腐草蛍と為る(ふそうほたるとなる)」。きれいな水辺に棲む蛍が、あかりをともして飛び交う頃。昔の人は腐った草が蛍に生まれ変わると信じていたとか。末候は「梅子黄なり(うめのみきなり)」。梅の実が熟して色づく頃を表します。この頃、雨がしとしとと降り続ける梅雨の季節にも入ります。土壌にとっては恵みの雨。育てた苗が育ち、田植えが忙しくなる頃ですが、それと同時に忙しくなるのが、梅干しなどを作る梅仕事。今回は「梅子黄なり」にちなんで梅干しの健康パワーと、基本的な梅干しの漬け方についてご紹介します。

 

梅干しパワーで美腸に

umeshigoto2

梅干しに含まれる酸っぱい成分、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸には整腸作用があることが広く知られています。腸が健康であれば、便は腸に長くとどまらずに排泄されます。しかし、運動不足や乱れた食生活などの影響で腸内に便が長くとどまってしまうと、便秘や下痢などの原因になることも。腸内に便が長くとどまることで悪玉菌が便を腐らせ、滞留便やガスなどの老廃物がたまります。このような老廃物がたまってしまうと悪玉菌はさらに増えて、便秘や下痢を繰り返したりお腹が張ったりと、腸の機能低下につながってしまいます。

梅干しは腸内で増殖する悪玉菌を抑える作用に加え、蠕動(ぜんどう)運動を促進し便秘や下痢改善への効果が期待できます。腸の蠕動運動は朝が一番活発なこともあり、朝梅干しを食べることでより一層の効果を期待できますよ。朝に1粒の梅干しを食べることを習慣にし、美腸を目指しましょう。

 

◆基本の梅干しの作り方

<材料>

黄色に熟した梅         2kg

塩(梅用)           360g(梅の18%)

赤紫蘇(茎などを除いた量)   300g(梅の15%) ≪10~20%の間お好みで≫

塩(紫蘇用)          54g(紫蘇の18%)

焼酎(消毒           少々

 

<道具>

下漬け用の容器(ホウロウ・ガラス・陶器製のもの、また食品用ビニール袋でも◎)

重石(梅と同じ重さ[水を入れたペットボトルや水を入れたビニールでも可

落としぶた(平たいお皿でも代用可能ですが、下漬け用容器と同等の大きさ)

大きなボウルなどの容器(赤紫蘇をもみ込む用)

土用干し用のザル

出来上がった梅干しの保存容器

 

<作り方>

◎梅の下漬け

① 梅は水でざっと洗い、1つずつ丁寧にふいて水気を除く

② 梅のヘタを竹串や爪楊枝でとる
umeshigoto3

③ 漬けこむための容器に少量の焼酎を入れて容器の中をすすいで消毒する
(食品用ビニール袋の場合も同じように焼酎で消毒しましょう)

④ ③の容器の底がうっすら隠れるくらいに塩をふる

⑤ 梅を一段並べ、その上に塩をふる

⑥ 塩と梅を交互に重ねていき、梅を入れ終わったら残った塩を最後にふる
umeshigoto4

⑦ 落としぶたをして上に重石をのせて冷暗所におく

⑧ 少しずつ梅酢がでてくるので時々容器をゆすりながら様子をみる

⑨ 数日~1週間くらいで透明の梅酢があがってくるため、梅がしっかり梅酢に漬かっている状態を保つ(その後もカビがなえていないかチェックする)
umeshigoto5

 

◎赤紫蘇の準備(梅酢が十分に上がってきた頃)

⑩ 茎などを除いてしっかり洗ってザルに上げて半日ほどおき、ある程度水気が乾くまでおいておく
umeshigoto6

⑪ 大きなボウルに赤紫蘇を入れ、塩の半量を加えてしっかりもみ込み灰汁を出す
umeshigoto7

⑫ 赤紫蘇を絞って出てきた灰汁は捨て、絞った赤紫蘇に残りの塩を加えてさらにしっかりともみ込んできつく絞り灰汁を捨てる

⑬ ボウルに絞った赤紫蘇を入れ、下漬けで出てきた梅酢を200ml加えてもみほぐし、梅酢に色を移す

⑭ 赤紫蘇を下漬けした梅の上に広げ、赤く染まった梅酢も一緒に加える

⑮ 容器を傾けて全体になじむようにする

⑯ 落としぶたをして梅がしっかり漬かる程度の重石をのせ、冷暗所で土用の頃(7月20日頃)までおいておく

    ※あらかじめ下ごしらえした赤紫蘇も売られているのでそれを購入しても◎

 

◎土用干し

⑰ 梅雨が明けるのを待ち、晴れの続く日を見計らって『三日三晩の土用干し』を行う

⑱ 大きなザルに梅同士がくっつかないように並べて日当たりのよいところにおく(この作業を三日繰り返します)赤紫蘇もしっかりしぼって一緒に干しましょう
umeshigoto8

 

土用干しが終わったらいよいよ梅干しの完成です。そのまま保存する方法と梅酢に戻して保存する方法があります。そのまま保存すると色は控えめですが酸味がきつすぎない味に、梅酢に戻して保存すると色鮮やかになり果肉がみずみずしく酸味が強い梅干しになります。それぞれお好みでどうぞ。すぐに食べることもできますが、時間が経過するごとに塩味や酸味が落ち着いてより美味しく食べることができます。土用干しは三日三晩を言われますが、自分の好きなかたさになるまでで大丈夫です。手作りだからこそ自分好みの梅干しに。梅が出回るこの時期に『梅仕事』してみませんか。

 

参考サイト:

七十二候|暮らし歳時記 http://www.i-nekko.jp/meguritokoyomi/shichijyuunikou/

参考文献:

『日本の七十二候を楽しむ』東邦出版

『日本の365日を愛おしむ』東邦出版

『暮らしのならわし十二か月』飛鳥新社

 

文:カベルネmama

管理栄養士、食生活アドバイザー2級の資格を保持。保育園で献立作成や食育を担当していた経験を持つ。現在は幼い3人の息子の育児をしながらレシピ記事作成を行う。料理を作ること・食べることが大好き。子どもたちのため、栄養たっぷりで簡単に作れ、喜んで食べてくれるものを考案する日々を送る。

 

この記事の印刷はコチラをクリック

 

okomeno
mozi rekishi mozi tane mozi bunka mozi hito mozi hito mozi huukei mozi noukamuke
dozyoubunseki ec 5

土壌分析で計測される『EC』。水田とECの関係を知ろう


【季節の行事レシピ】管理栄養士が教える「お米づくりの節目“半夏生”にいただく『タコ料理』」


お米の味が生きている。深淵なるにごり酒の世界


【初夏レシピ】管理栄養士が教える!「袋で漬ける♪ 簡単はちみつ梅干し」


pHと土壌の酸性・アルカリ性からみなおすイネの栽培