日本酒だけではない。お米から生まれるいろんな酒の話 ③マッコリ

2003年に放映された「冬のソナタ」をきっかけに、ドラマ・音楽・観光・美容・食など、様々な分野で韓流がブームになったことをご記憶の方も多いだろう。マッコリもそんな流れに乗って、いつしか日本人の間でおなじみの酒となった。乳酸菌飲料を思わせる口当たりの良さもあって、女性にも根強いファンは多い。そこで今回は、お米と縁の深い韓国の伝統酒・マッコリにスポットを当ててみよう。

 

かつては農家が家庭ごとに醸した、韓国で最も歴史のある酒

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「マッ(粗雑に)+コルダ(濾す)」という韓国語を語源とするマッコリは、その名の通り蒸したお米に麹と水を混ぜて発酵させた後、「粗く濾して」造られる酒だ。麦やイモ類、とうもろこし、栗、蕎麦などで造られるマッコリもあるが、メインはやはりお米で造る“サル・マッコリ”である(サルは韓国語で米の意)。アルコール度数は6〜8度で、ビールや缶チューハイより少し高い程度。甘味と酸味が主体でありながら、苦味や渋味もバランス良く調和し、発酵によって生成される微炭酸がさっぱりとした後味をもたらしてくれる。

マッコリは韓国で最も歴史の古い酒の一つで、元々は農家の人々が空腹を満たし、疲れた体を癒すために飲まれたことから「農酒(ノンジュ)」の異名を持つ。かつては農繁期に備え各家庭で醸造されるなど、庶民の暮らしには欠かせない飲み物だった。

ちなみに醸造場は現在韓国全土に約750カ所、造られているマッコリの種類は2000種近くに上る。そして今日ではりんご、梨、いちごといったフルーツや、松茸、なつめ、高麗人参が入ったものなどバラエティも豊富になっている。

 

美肌・疲労回復からガン予防まで。まさしく栄養成分の宝庫

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マッコリのカロリーは100ml当たり約46kcal。同じ量の日本酒の約半分で、ワインや焼酎と比べても低カロリーである。不足しがちなビタミンやミネラルも豊富に含まれ、中でも一番多いビタミンB群は疲労回復や疲れ目の軽減に効果的で、肌の新陳代謝も高めてくれる。その他にもメラニン色素の生成を抑えるコウジ酸、脂肪燃焼効果を高めるピルビン酸、タンパク質、アミノ酸、クエン酸、カロチンなどが含まれており、まさに栄養成分の宝庫と言えるだろう。

また2011年には韓国食品研究院が、ビールやワインの10〜25倍に相当するファルネソールがマッコリから検出されたと発表した。ファルネソールは果実酒の香り成分で、高い抗ガン作用が期待できると言われている。

お米の発酵パワーがもたらす日本酒の美健効果については既に紹介済だが、同じくお米生まれのマッコリも、日本酒に引けを取らない『百薬の長』効果を備えているようだ。

●下線部該当記事:
・飲んでよし、塗ってよし、浸かってよしのスキンケア。なぜ日本酒は美肌に効くのか
https://rice-assoc.jp/eat-gohan/96-2018-06-16-00-41-18.html

・お米の発酵パワーで心身を健やかに。適量の日本酒がもたらす『百薬の長』効果とは
https://rice-assoc.jp/eat-gohan/100-2018-06-30-13-13-12.html

 

 

炭酸割、果汁割からハーブティー割まで楽しみ方いろいろ

okomenosake3 3そのまま冷やして飲むだけでも十分美味しいマッコリだが、炭酸水や果汁100%のジュースで割ると甘酸っぱさが程よくなじんで、アルコールに弱い方でも気軽に楽しめる。カルピス、ヤクルト、ピルクルなど乳酸菌飲料との組み合わせもすこぶる相性が良い。

逆にお酒に強い方なら、カシスやクァントローとのマッチングがおすすめ。グラスにマッコリ150mlとリキュール20mlを注ぎ、軽く炭酸を加えるとシュワっと爽快なカクテルの出来上がりである。また「甘さがちょっと苦手」という方には、ローズヒップ、ミント、レモングラスなどのハーブティーで割るのも一興である。意外な取り合わせだが、甘さが緩和される上にハーブティーの栄養素も摂取できるので、美健効果倍増となる。

 

かつて韓国では消費量が低落傾向にあったマッコリだが、韓流ブームをきっかけに日本でファンが増えたおかげで、本国でもその魅力が再認識され、若者の間で人気が高まっているとのこと。なお韓国では、非加熱処理の生マッコリ(トンドンジュ)がポピュラーである。炭酸のシュワシュワ感が強く、味はさっぱりとして甘さ控えめ、活きた乳酸菌がヨーグルトより多く含まれ食物繊維も豊富なので、本場韓国を訪れた際はぜひ一度ご賞味頂きたい。

 

参考サイト:
macaroni「韓国の伝統酒、マッコリ」
https://macaro-ni.jp/35831#heading-222920

調味料の百科事典
https://kireinasekai.net/makkori-kenkou/

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/マッコリ

韓国農水産食品流通公社
http://www.atcenter.or.jp/item/list/makkoli.php

腸内革命
https://www.chounaikankyou.club/article/makkori.html

韓国が始まる、韓国が広がる。KONEST
https://www.konest.com/contents/korean_life_detail.html?id=3550

女性の美学
https://josei-bigaku.jp/makkori6969/

VOKKA
https://vokka.jp/8872

管理栄養士が教える! EPA・DHA豊富な戻りガツオで作る「カツオの角煮」

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「鰹節」として和食のお出汁には欠かせないカツオですが、みなさん鰹節以外でどのような食べ方をされているでしょうか。お刺身やタタキなどはよく聞いたことがありますが、実はあまり食べた経験がない方もいらっしゃるのではないでしょうか。スーパーなどでは頻繁に見かけるお魚ではありませんが、実はカツオにはお出汁としての旨味だけでなく、栄養もとても豊富で是非食べていただきたい食材なのです。今回は、そんなカツオの魅力をお伝えしたいと思います。

 

カツオには旬が2回ある!

カツオは温帯から熱帯地域の世界各地に分布している魚です。日本近海では、春は黒潮にのって太平洋側を九州南部から北上し、秋にはUターンして南下する回遊魚であり旬が春から夏と秋の2度あります。3月頃から日本近海を北上し始めるカツオは、獲れる時期や地域によって味はもちろん含まれる栄養素も変わってきます。

初夏に獲れる時期のカツオは「初ガツオ」とも言われ、味は淡白であっさりしておりダイエットにも最適なヘルシー素材です。一方秋に獲れるものは「戻りガツオ」と言われ、餌をたっぷり食べて南下してくるため脂がのっているのが特徴です。

 

戻りガツオの方が血液サラサラに

カツオには不飽和脂肪酸であるEPAやDHAが豊富に含まれています。EPAは『エイコサペンタエン酸』の略であり、血栓ができにくくしてくれる作用があるため動脈硬化や脳梗塞などの予防に効果的であると言われています。またDPAは『ドコサヘキサエン酸』の略称で、脳の機能を向上する作用に加え認知症予防にも効果があることが分かってきました。

EPAもDHAも必須脂肪酸の1つであり、体内では作ることができないため食事などから摂取する必要があります。これらのEPAやDHAは、イワシやサバなどの青魚に含有されており、特に脂がのった魚の方が含有率は高くなります。秋に取れる戻りガツオは春先に取れる初ガツオに比べEPAやDHAを含む脂肪酸が約10倍多く含まれています。同じカツオでも脂がよくのった戻りガツオを食べることで、血液をサラサラにし脳機能にも効果的です。

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カツオは貧血予防に効果的

カツオは赤身で血合いが多いのが特徴であり、特に血合い部分には鉄分が豊富に含まれています。魚や肉由来の鉄分はヘム鉄と呼ばれ、野菜や海藻由来の非ヘム鉄よりも吸収率が高いという特徴があります。特に女性は鉄分が不足している人が多いため、良質な鉄分源としても◎。鉄分に関しては初ガツオも戻りガツオもほとんど同じ含有率となっています。

その他カツオには水溶性ビタミンであるビタミンB6・ビタミンB12に加え、脂溶性ビタミンであるビタミンDなども豊富に含まれています。ビタミンB6はヘモグロビンの合成に、ビタミンB12は赤血球の成熟に関与するビタミンのため、鉄分と並んで貧血予防に必須の栄養素です。またビタミンDはカルシウムの吸収を助ける栄養素であるため、成長期を初め強い骨を作る際に欠かせません。カツオを食べることで貧血予防に加え骨粗鬆症などの予防にもなります。

 

◆カツオの角煮

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<材料>

カツオ(お刺身用) 150g

塩         少々

☆生姜       1カケ

☆酒        大さじ1

☆砂糖       大さじ1

☆濃口醤油     大さじ2

 

<作り方>

① カツオに塩をふり10分程放置しておく

② 生姜はすりおろしておく

③ キッチンペーパーなどで①のカツオの水分をしっかり拭き取る

④ ③を1~2cmくらいの角切りにする

⑤ 鍋に☆を入れて加熱し、まわりがフツフツと沸騰してきたら④を入れて煮汁が少なくなるまで煮る

※カツオは火を通すと身が締まってかたくなってしまうため、そのかたさが苦手な方は③の後に熱湯をかけて身をほぐし、⑤へと進んでフレーク状にしても◎。お好みの食べ方で。ご飯がとっても進みます。

 

参考サイト:

文部科学省 食品成分データベース

https://fooddb.mext.go.jp/index.pl

島根大学「国内初!100人規模の臨床研究で実証〜DHAに認知症予防効果〜」
https://www.shimane-u.ac.jp/docs/2010102502066/

厚生労働省 審議・研究会等より
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4j.pdf

 

文:カベルネmama
管理栄養士、食生活アドバイザー2級の資格を保持。保育園で献立作成や食育を担当していた経験を持つ。現在は幼い3人の息子の育児をしながらレシピ記事作成を行う。料理を作ること・食べることが大好き。子どもたちのため、栄養たっぷりで簡単に作れ、喜んで食べてくれるものを考案する日々を送る。

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日本酒だけではない。お米から生まれるいろんな酒の話 ②紹興酒

本格中華のお供に欠かせない酒といえば紹興酒。脂っこい中華料理と相性抜群で、色、香り、味のどこを取っても日本酒とは似ても似つかないが、実はどちらも同じお米を原料とする醸造酒の仲間であることをご存知だろうか。今回は、知っているようであまり知られていない「お米生まれの酒」、紹興酒を取り上げてみたい。

 

もち米が主原料で日本酒造りと共通点は多いが、なぜ琥珀色?

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中国の酒は、穀物で造る蒸留酒の「白酒(パイチュウ)」、果実で造る醸造酒の「紅酒(ホンチュウ)」、お米で造る醸造酒の「黄酒(ホアンチュウ)」の三つに大きく分類される。紹興酒は浙江省の紹興市付近で造られる黄酒の一種で、シャンパーニュ地方製のスパークリングワイン以外はシャンパンと名乗れないのと同様、紹興エリア以外で造られた黄酒は紹興酒と名乗れない。

紹興酒(黄酒)の主原料はお米だが、もち米を使う点が日本酒と異なる。また、お米を糖化してアルコール発酵させるのに日本酒は米麹を使うが、紹興酒は麦麹を使用する。その他お米を1週間水に浸けて乳酸発酵させたり、酒薬と呼ばれる特殊な原料を使うなどの違いはあるものの、基本的な醸造法自体は日本酒との共通点が多い。

では、透明な日本酒と違って紹興酒はなぜ濃厚な琥珀色をしているのか。主な理由はアミノ酸の量が日本酒の数十倍も多く、このアミノ酸が貯蔵中に糖と化学反応を起こし、褐色物質を生成するためと言われている。ただ今日では、ほとんどの市販品に色と香味を整える目的でカラメルを添加しているため、その色味も影響していると思われる。

 

娘の誕生を祝し造った酒を地中に埋め、嫁ぐ日に振る舞う習慣も

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紹興酒が初めて歴史に登場したのは2,500年近く昔の春秋時代であるが、紹興市がある浙江省では、古代の黄河文明の頃から酒造りが行われていたと記録されている。その後も様々な書物に紹興酒の記述はあるが、紹興の名産品として本格的に生産が始まったのは宋の時代(960年〜)から。当時の紹興酒は高貴な方への進物として特別な扱いを受けており、蔵出しの際には都で祭りが催され、見物客でごった返したとの記録も残っている。

そして紹興では女の子が誕生すると、贈られた祝いのお米で造った酒を甕(かめ)に入れて地中に埋め、娘が嫁ぐ日に掘り出して嫁入り道具に持たせたり、祝い酒として振る舞う習慣があった。娘の幸せを願う親の想いを込め、甕には美しい花の模様が彫られたことから「花彫酒」と呼ばれたが、こうした習慣がなくなった今日、「花彫酒」は長期間熟成させた紹興酒を意味するようになっている。

ちなみに沖縄にも、子供が生まれた記念に泡盛を甕に寝かせ、成人した日に封を開けて親子で酌み交わす習慣がある。子を想う親心は万国共通ということだろう。

 

飲み方色々。アミノ酸たっぷりでアンチエイジングにも期待大

お米と麹を主原料とする紹興酒は日本酒以上にアミノ酸が豊富で、ビタミンやミネラルも数多く含まれているため、血行促進、疲労回復、食欲増進、利尿作用、免疫力向上、アンチエイジングなど様々な効能が期待できる。

ただし日本酒よりアルコール度数とカロリーが高く、痛風の原因となるプリン体が多く含まれるため飲み過ぎは禁物。1日150mlを目安にするのが健康的である。

飲み方は色々。中国では常温のストレートが一般的だが、慣れない人にはロックやソーダ割りの方が飲みやすいかも知れない。また、寒い日にはぬる目の燗もおすすめだが、温かい烏龍茶やジャスミン茶で割ったり、生姜をスライスして飲むと代謝が上がり、ポカポカと体を温めてくれる。冷え性の人にはぜひお試し頂きたい。

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「世界三大珍味」がトリュフ、フォアグラ、キャビアであることはよく知られているが、「世界三大美酒」が紹興酒、純米吟醸酒、ワインであることを知る人は少ない。特にこのうちの二つがお米からできていることはほとんど語られていないので、今回最後まで読んで下さった皆さんには、ぜひこの事実を酒席で広めて頂けると幸いである。

 

「日本酒だけではない。お米から生まれるいろんな酒の話 ①泡盛・米焼酎」の記事はこちらをクリック

 

参考サイト:
STOCK LAB LIQUOR COLUMN
https://www.stock-lab.com/osake-kaitori/column/506714/

健康・美容の情報メディア「ケアクル」
https://media.carecle.com/articles/5GnF3

First Style
https://firststyle.jp/2981

忠孝酒造株式会社
http://www.nomikata.net/aniversary.html

酒中旨仙〜中国地酒や白酒 全30種類〜
https://ameblo.jp/k-umasen/entry-11984678200.html

https://ameblo.jp/k-umasen/entry-11986014842.html

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/黄酒
https://ja.wikipedia.org/wiki/紹興酒

 

【10月薬膳レシピ】冷えが気になる季節…鶏だんごと野菜の味噌汁で体ポカポカ

10月になり少しずつ風の冷たさ感じる季節になりました。寒くなると気になるのが体の冷え。最近は室内だとしっかりと温度管理されているため、夏は冷房の中、冬は暖房の中で過ごすことが多くなります。そのため、自分自身の力で体温を調整することができなくなり、一年中体の冷えを感じる方も多くなっているのです。最近は女性だけでなく男性の冷え性も増えています。これから始まる冬を快適に過ごすためにも体の中からしっかり温めてあげましょう。

 

胃腸を整えて温めることが大切

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冷えはお腹の中から温めてあげることが大切です。特に冷たいものを取る際は要注意。冷えを感じる方はなるべく摂らない方が良いのですが、どうしても摂りたい時は、一緒に温かいものや体を温める食材を摂ることをおすすめします。また冷えを感じる時は、お腹の中から冷え、消化も弱っていることが多いです。温める食材と一緒に消化を整える食材を一緒に摂るよう心がけましょう。そして、生活の中では運動を取り入れたり、お風呂もシャワーだけでなく湯船につかったりなど、代謝を上げることも大切です。

 

◆体の中から温める食材
ネギ、ニラ、生姜、ニンニク、唐辛子、胡椒、シナモン、山椒、玉ねぎ、鶏肉、ラム肉、鮭、エビ、くるみetc

◆消化を整える食材
生姜、ニラ、ネギ、粟、白菜、山芋、蓮根、大根、カボチャ、カブ、舞茸、干し柿etc

 

体ポカポカ 鶏だんごと野菜の味噌汁

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<レシピ2〜3人分>
*鶏モモミンチ 200g
*卵 1個
*酒 大さじ1
*醤油 小さじ1/2
*塩 少々
*片栗粉 大さじ1
*ニラ 3束
*生姜 1片
玉ねぎ 1/4個
人参 1/4
大根 2cm
ネギ 1/2本
だし汁 800ml
味噌 大さじ2

 

<作り方>

1. 玉ねぎは薄切り、人参と大根はいちょう切り、ネギは斜め薄切りにする

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2. 鶏だんごを作る

ニラは細かく刻み、生姜はすりおろして*印をすべて混ぜ合わせる

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3. 粘りが出るまでしっかりと混ぜ合わせる

4. 鍋にだし汁を入れて、煮立ったらだんごを作り、落とし入れる

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5. アクが出たら取る

6. 1の野菜を入れて、蓋をし、柔らかくなるまで10分程度煮る

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7. 味噌を溶き入れたら出来上がり

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8. 器に盛ったら、仕上げに小口切りしたネギをトッピングする

★今回、だしは昆布と椎茸でとったものを使用しています。

 

文:建部春菜
「薬膳とヨガと心地よい毎日」主宰。熊本を拠点に薬膳やヨガをベースとしたライフスタイルを提案。様々な場所で薬膳やヨガのイベントを開催 。また、学研プラス merアプリにて「かんたん薬膳」を連載。

 

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日本酒だけではない。お米から生まれるいろんな酒の話 ①泡盛・米焼酎

お米で造られる酒と聞けば、多くの人が日本酒を思い浮かべるかも知れない。しかし「所変われば品変わる」のことわざ通り、様々な国・地域の風土や食文化に応じて、お米は日本酒とは全く趣が異なる多彩な美酒の「生みの母」となっている。では具体的にどのようなお米の酒があるのか。ということで、今回は泡盛と米焼酎について取り上げてみたい。

 

同じ「お米が原料の蒸留酒」とは思えない、全く異なる味と香り

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そもそも「泡盛の原料ってお米だったの!?」と驚く人は多いかも知れない。何も知らずに泡盛を飲んで、「原料はお米だ」とその場で言い当てる人がいたら、その舌は神の領域と言えるだろう。それほどまでに泡盛は、お米生まれの酒とは思えない強烈な個性を放ち、一度ハマるとクセになる独特の味と香りを特長とする。

一方の米焼酎は、飲んだ経験のある人ならご存知の通り、芋や麦を原料とする焼酎と比べると全般的に味と香りがマイルドで、スッキリとしてクセのない風味を特長とする。何も知らずに口にした人でも、原料を知ると「確かにお米っぽいかも…」という印象を持つだろう。しかしこの両者は、日本の酒税法上どちらも単式蒸留焼酎と分類される。要するに泡盛も米焼酎の一種であり、二つの酒は原料も製法もほとんど変わらないのだ。

 

お米の種類、仕込回数、蒸留方法のわずかな違いがそれぞれの個性に

では、これほどまでに異なる味と香りに仕上がるのはなぜか。両者の細かな違いをまとめたものをもとにご説明しよう。参考までに日本酒も同じように並べてみた。

泡 盛  原料[タイ米]    麹[黒麹]   発酵[泡盛酵母] 仕込回数[1回]

米焼酎  原料[酒米・食用米] 麹[主に白麹] 発酵[焼酎酵母] 仕込回数[2回] 

日本酒  原料[酒米]     麹[黄麹]   発酵[清酒酵母] 仕込回数[3回以上]

 

泡盛は細長くてさらさらしたタイ米を黒麹菌と混ぜ合わせて米麹にし、そこに水と泡盛酵母を加えて発酵させ、できた醪(もろみ)を蒸留すれば原酒ができる。その原酒をろ過して半年から1年(または3年以上)熟成させ、割り水でアルコール度数を調整するとおなじみの泡盛となる。

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米焼酎は、酒米か食用米を麹菌と混ぜ合わせて米麹にし、そこに水と焼酎酵母を加えて発酵させた一次醪に、さらにお米と水を加え数週間かけて発酵させていく(二次仕込み)。こうしてできた二次醪を蒸留すれば原酒となるが、蒸留の際にタンク内の気圧を落とし、沸点を下げて低温での蒸留を行うことで、クリアな味わいとまろやかな口当たりを生み出している蔵元が多い。つまり原料の種類、仕込みの回数、蒸留方法のちょっとした違いが、泡盛と米焼酎の個性の差異につながっているのだ。

 

割って良し、温めて良し、そのままでも良し。楽しみ方は色々

泡盛は濃厚で芳醇な香りとかすかな甘味を特徴とするが、3年以上寝かせた古酒(クース)の中には、熟成が進むほどにバニラの香りを放ったり、黒糖やバラ、洋梨、柑橘類、コーヒー等の香りを彷彿させるものも少なくない。

そんな泡盛の楽しみ方は、本場沖縄では水割りで飲まれることが多く、冬場には泡盛特有の芳香が湯気と共に広がるお湯割りも人気だ。ただし古酒に関しては、ぜひ一杯目はストレートかロックで、香りの豊饒さとまろやかな口当たりを堪能してほしい。また若い人には、強めの炭酸水でのソーダ割りもおすすめ。肉料理との相性は抜群である。

かたや米焼酎は、一般的にはお米由来のマイルドな香りとドライな口当たり、スッキリした飲み口、そしてさっぱりとした後味の良さが持ち味である。そんな米焼酎の楽しみ方は、お米生まれ故にまさしくオールマイティ。水割りやお湯割りはもちろん、ロックでもストレートでも、さらには熱燗でもOKだ。クセがないため合わせる料理を選ばないところも、お米生まれの酒ならではの魅力と言えるだろう。

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最後にもう一つだけ、お米生まれのレアな日本の酒をご紹介したい。日本最西端の与那国島だけで造られる花酒である。原料と製法は泡盛と全く同じだが、蒸留工程の初期分だけを集めているのでアルコール度数は60度を超える。そのため、税法上は泡盛ではなくスピリッツに分類される。

おすすめはストレート。それも瓶ごと冷凍庫で冷やしてほしい。度数が高いため凍ることはなく、そのトロッとした舌触りと濃醇な喉越しは、美しい名前と背中合わせの妖しい魅力を秘めている。機会があればぜひお試しあれ。

 

参考サイト:

沖縄県酒造組合 泡盛百科

http://www.okinawa-awamori.or.jp/enjoy/05.html

HAVESPI
https://havespi.jp/11818/

macaroni

https://macaro-ni.jp/52334

FOODIE
https://mi-journey.jp/foodie/7375/

球磨焼酎酒造組合
http://jp.kumashochu.or.jp/page0107.html

焼酎街道
https://food-drink.pintoru.com/shochu/shochu-drinking/

崎元酒造所
https://www.sakimotoshuzo.com/hanazake

Under Water Sometimes Above Ground
http://www.hopislander.com/archives/1019867465.html

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