【3月薬膳レシピ】花粉症の季節到来! くしゃみ、鼻水、目のかゆみに……豆腐と野菜の中華風炒め

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3月に入り、日差しの暖かさを感じる日も増えてなんだか気持ちが上がる季節になりましたね。しかし、そんな心地よい季節とともにやってくるのが花粉。花粉症の方にとっては、辛い時期に入ります。できれば薬を飲まずに普段の養生で治していきたいものです。花粉症は食生活や大気汚染、ストレス、不規則な生活などが関係するといわれています。しかし生活を変えることはなかなか難しいことですよね。今回は、少しでも症状緩和の手助けになるレシピをお伝えします。

 

くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみには?

上記のような症状の方は肺に熱がこもっているので、熱をとってあげることが大切です。また目は肝臓とのつながりが深いので、しっかりと肝臓を補ってあげることも大切です。

◆肺の熱をとる食材
ミント、菊花、桑の葉、セロリ、せり、クレソン、豆腐、春菊、レンコン、豆乳、緑豆etc
◆肝臓を補う食材
決明子(けつめいし)、くこの実、セロリ、せり、クレソン、トマト、ピーマン、菊花etc

*花粉症も人によって症状が違います。今回お伝えするレシピは目の赤みや口が渇くなど、やや熱のこもった症状の方に適しています。目のかゆみはなく、冬の風邪のように鼻水がダラダラと出たり冷えを感じたりする方は、生姜やネギなど温めて発散させるものがオススメです。この場合取りすぎは鼻の粘膜のアレが悪化してしまうので、鼻水がおさまったら取るのを控えてください。

 

豆腐と野菜の中華風炒め

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<レシピ2人分>
セロリ 1本
木綿豆腐 1パック
トマト 中1個
*ぬるま湯 大さじ2
*鶏ガラスープの素 小さじ1
*薄口醤油 小さじ1
*塩 ひとつまみ
水溶き片栗粉 (小さじ1の片栗粉を小さじ2の水で溶いたもの)
ごま油 適量


<作り方>
1. セロリは筋を取り斜めに切り、セロリの葉とトマトはざく切りにする
2. 豆腐は水気を切って、食べやすい大きさに切る
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3. *印を合わせておく
4. 鍋にごま油を熱し、セロリの茎、豆腐、トマト、セロリの葉の順に入れて炒める
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5. 3を加え、最後に水溶き片栗粉でとろみをつけたら出来上がり

文:建部春菜
「薬膳とヨガと心地よい毎日」主宰。熊本を拠点に薬膳やヨガをベースとしたライフスタイルを提案。様々な場所で薬膳やヨガのイベントを開催 。また、学研プラス merアプリにて「かんたん薬膳」を連載。

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管理栄養士が教える! 実は簡単♪ 万能調味料「塩麹」

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味噌に酢・醤油にみりん、これらに共通するものはいったい何でしょうか。これらは昔からある日本の調味料、そして麹を使って作られる発酵食品です。麹と聞いたことはあっても、どんなものなのかよく分からないという方もいらっしゃると思います。麹ははるか昔からある日本人に欠かせない、または日本食には欠かせない大切な役割を果たしてきた貴重な存在なのです。今回はそんな麹のお話と麹を使った万能調味料をご紹介します。

 

麹とはそもそも何だろう?

麹とはカビの一種で『麹菌』『麹カビ』とも言われる微生物です。肉眼では見ることができないくらい小さい微生物のため実際に見ることは難しいですが、この麹菌があるからこそ味噌や醤油などの日本古来の調味料ができあがります。

この麹菌を米麹に増殖させたものを『米麹』と言います。その他にも麦麹・大豆麹などが代表的で、麹は穀物に麹菌を増殖させて作られます。これらの麹を使った酒造りは奈良時代の初期から行われていたという記述もあるそうです。

 

麹の酵素でより美味しい食材に

麹に含まれる酵素には食材の成分を分解し、消化・吸収を促す効果やお肉などを柔らかくし美味しいものへと変化させる作用があります。お肉に含まれるタンパク質、お肉が硬くなる原因はこのタンパク質が加熱によって固まってしまうためです。これを防ぐためにはタンパク質が固まらないようにすることが重要です。

そこで麹に含まれる酵素の出番。麹には30種類以上の酵素が含まれているといわれていますが、その中でもプロテアーゼはタンパク質を分解して「ペプチド」と「アミノ酸」に分けることができます。そのため加熱しても柔らかいお肉になるだけでなく、もともと硬いお肉も柔らかくする効果も期待できます。さらに、タンパク質が分解されてアミノ酸になったことでアミノ酸量が増え美味しさのアップにもつながります。このように、麹に含まれている酵素のお陰で、食材を美味しいものへと変化させる効果が期待できます。

 

麹菌がビタミン類を生成する?

麹菌が代謝される際にビタミンB1やナイアシン、ビオチンなどをはじめ多彩なビタミン類が作られることが分かっています。ビタミンB群は糖質やタンパク質、脂質などの代謝に関わる重要な栄養素であるため、その1つでも欠けてしまうと風邪などの感染症などにかかりやすくなったり、疲れやすくなったりしてしまいます。また、健康な皮膚を保つためにも重要になるため、美肌には欠かせない栄養素です。麹菌はこれらのビタミンB群を生成してくれる、私たちにとってとても心強い味方なのです。

 

◆簡単! 手作り塩麹

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<材料>

米麹    200g

塩    60g(麹の30%)

水    300CC~500CC程度

※今回は乾燥麹を使用して作りました

 

<作り方>

① ボウルなどに米麹を入れ手でほぐす

② 塩を①に入れ、手もしくはスプーンなどで混ぜる

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③ ②を清潔な保存容器に入れ、水を加えて混ぜる

④ 軽く蓋をしめ、常温で5~10日程発酵させる(毎日1度は混ぜましょう)

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⑤ 味噌のような甘く芳醇な香りがしてきたら完成です

 

<ポイント>

1. 水の量は米麹の乾燥具合にもよりますので使用する米麹によって異なります。米麹がヒタヒタにつかるくらいを目安に入れてみてください

2. 仕込んですぐは米麹の中まで水分が浸透していないため、仕込んで数時間から半日したところできちんとヒタヒタに浸かっているか確認してみてください

3. 発酵するため、保存容器は少し大き目のものを使うことをオススメします

4. 発酵は通常常温で行いますが、真夏など室温が25度を超えると冷蔵庫に入れた方が安心です。その場合、発酵に少し時間がかかってしまいます

 

塩麹は鶏肉や豚肉などの下味をつける際にお塩の代わりに使うと、とても柔らかく美味しいお肉に仕上がります。その他にも、普段使っているお塩の代わりに是非塩麹を使って、いつもとは一味違ったお料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

参考サイト:

東京大学 農学生命科学研究科 プレスリリース

http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2011/20110829-1.html

参考資料:
『からだに「いいこと」たくさん 麹のレシピ』池田書店/おのみさ著(2010年)

 

文:カベルネmama

管理栄養士、食生活アドバイザー2級の資格を保持。保育園で献立作成や食育を担当していた経験を持つ。現在は幼い3人の息子の育児をしながらレシピ記事作成を行う。料理を作ること・食べることが大好き。子どもたちのため、栄養たっぷりで簡単に作れ、喜んで食べてくれるものを考案する日々を送る。

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お米生まれなのにお米を超える底力! 美容と健康に効く驚きの酒粕パワー

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酒粕は、文字通り酒の搾りカスである。そう書いてしまうと一見身も蓋もないが、「たかがカス」と甘く見てはいけない。お米から生まれた酒粕は、醸造の過程でお米をはるかに凌ぐ驚くべきパワーを秘めているのである。今回は新しい学術的な知見も踏まえつつ、酒粕が持つ美容と健康への効能についてスポットを当ててみたい。

 

ただのカスではなくペプチド、アミノ酸、ビタミン等栄養素の宝庫

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酒粕とは、蒸したお米を米麹と水で仕込んで発酵させ、できた醪(もろみ)を搾って酒を得た後に残る固形物である。醪のうち重量比で約3/4が酒になり、1/4が酒粕となる。酒の搾り方によって板状の板粕、柔らか過ぎて板状にならなかったばら粕、ペースト状の練り粕、熟成発酵させ奈良漬などに用いる踏込粕(土用粕)等の種類がある。

 

これまでは大半が廃棄され、ごく一部が甘酒や粕汁、粕漬け等の形で食卓に上るのみだった。しかし近年の学術的研究によって、酒粕には植物性タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ビタミン、核酸関連物質、100種以上の酵素など豊富な栄養素が含まれていることが判明。カスどころか底知れぬパワーの宝庫として、改めて価値が見直されている。中でも近年注目されている成分が、生活習慣病の予防や改善に効果があるレジスタントプロテインである。

 

肥満抑制・コレステロール低下・抗うつ・肝機能障害にも効果的

レジスタントプロテインは、お米やそば、大豆等に含まれる難消化性タンパク質の一種である。胃で消化されずに小腸へ達し、脂肪を吸着して便と一緒に排出されるため、便秘改善、血中コレステロールの低下、肥満抑制等の効果を持つ。そして酒粕ならお米よりもはるかに効率よく摂取できることが確認されている。

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それだけではない。酒類総合研究所の発表によると、S-アデノシルメチオニン(SAM)が酒粕に多く含まれていることが判明した。SAMはアルコール性の肝機能障害やうつ病、関節炎等への効果がある成分で、欧米では処方箋薬やサプリとして使われているが、酒粕なら1日20gで抗うつに、50gで抗肝障害に有効な量が摂取できる。アルコール性肝機能障害の治療に酒の搾りカスが役立つのも不思議な話だ。日頃の食生活で不足しがちな葉酸も多く含まれており、貧血予防等の効果も期待できるという。

さらに、愛媛大の研究によればガン細胞の抑制や糖尿病の治療にも効果があり、秋田大の研究によれば花粉症にも効くとのこと。実に恐るべきカスである。

 

保湿・美白・アンチエイジングにも効く酒粕の旨い摂り入れ方は? 

美容効果についても侮れない。酒粕には保湿効果のあるアミノ酸をはじめ、シミやニキビに効く美白成分の誘導体であるアルプチン、シワやくすみを防ぐコウジ酸、アンチエイジング効果が期待できるフェルラ酸などが多く含まれている。カロリーを燃やすビタミンB1や、肌のターンオーバー周期を整え皮膚と粘膜を正常に保つビタミンB2も効率的に摂取できる。また、メラニンの生成を抑制する効果もあるため、紫外線を多量に浴びた日は酒粕パックも効果的だ(詳しくはコチラ)。

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では酒粕を美味しく摂取するにはどうするか。粕汁、魚の粕漬、甘酒などが定番だが、寒い季節にぜひ試してほしいのが酒粕鍋である。鍋に水、昆布、豚もも肉の薄切り、白菜、にんじん、白ネギ、木綿豆腐、椎茸を入れて中火にかけ、沸騰したら酒粕と味噌、ほうれん草を加えるだけ。もちろんお供は日本酒で、最後はご飯を入れ雑炊で締めたい。

お米好きには酒粕煎餅もおすすめだ。大さじ2の酒粕と水を適量の塩・ごま油と混ぜ合わせた後、茶碗1杯分のご飯(残り物でOK)を加えてさらによく混ぜ、スプーンですくって耐熱皿の上に一口サイズ大で平たく乗せる。あとは電子レンジで焦げがつくまで加熱するだけ(500Wで5分が目安)。純米酒、古酒のアテにピッタリである。

 

酒粕は和食の旨味の素とされるアミノ酸が豊富で、昆布のグルタミン酸、鰹節のイノシン酸、キノコ類に多く含まれるグアニル酸等のだし素材と組み合わせると、旨味の相乗効果が期待できる。料理好きな方はぜひご自身の直感とセンスで、酒粕パワーを日々の食卓の中でも引き出してほしい。

 

参考サイト:

IN YOU journal

http://macrobiotic-daisuki.jp/sakekasu-13222.html

KURAND
https://kurand.jp/11434/
https://kurand.jp/15557/

酒粕と日本酒の専門店竹屋
https://www.sake-kasu.com/blog/?p=344

NIKKEI STYLE
https://style.nikkei.com/article/DGXDZO48237660Z01C12A1W13001

健康と美容に貢献する「酒粕」の成分
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/107/5/107_282/_pdf

E・レシピ
https://erecipe.woman.excite.co.jp/detail/7a55f04e6cd6e327a893a6130c31a2f4.html

【2月薬膳レシピ】風邪を引いた時に食べたい 長芋と卵の雑炊

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2月に入ると立春を迎え暦の上では春となりますが、寒さはまだまだ続きますね。そしてこの時期注意したいのが、風邪やインフルエンザの流行です。予防注射をしたり日々の手洗いうがいをしっかりしていても、体が疲れていたり免疫力が低下していたらかかってしまうこともあります。かかってしまったら、回復を1日でも早めることが大切です。薬だけに頼らず、食べる食材も意識してみてくださいね。

 

消化を整えながら、気を補う

風邪を引いたら体力が消耗してしまうので、まずは体力の基本となる気(エネルギー)を補うことが大切です。その気をしっかりと体に吸収させるには消化が整ってないと意味がありません。

風邪の時はまず、消化を整えながらしっかりと気を補ってあげることが大切です。

◆消化を整える食材

大根、白菜、山芋、カリフラワー、レンコン、ブロッコリー、かぼちゃ、お粥、白湯etc

◆気を補う食材
山芋、イモ類、かぼちゃ、お米、鶏肉、豚肉、豆類、舞茸、椎茸、なつめ、カカオetc

 

風邪の回復に……長芋と卵の雑炊

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<レシピ1人分>

ごはん 1/2膳

*だし汁 150ml

*薄口醤油 小さじ2

長芋 3cm

卵 1個

小ネギ 適量

塩 適量

 

<作り方>

1. 長芋は皮をむいてすりおろす。塩少々をお好みで加えて混ぜる

2. ごはんはザルに入れて水で洗い、ヌメリをとる

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3. 卵は卵黄と卵白に分けておく

4. 鍋に*を入れて煮立ったらご飯を入れる

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5. 軽く混ぜて再び煮立ったら、1を半分入れる

6. 同じように軽く混ぜて再び煮立ったら卵白を入れてひと混ぜする

卵白が半熟くらいで火を止めて、器に盛る

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7. 残りの1と卵黄をのせて、小ネギをトッピングすれば出来上がり

 

文:建部春菜
「薬膳とヨガと心地よい毎日」主宰。熊本を拠点に薬膳やヨガをベースとしたライフスタイルを提案。様々な場所で薬膳やヨガのイベントを開催 。また、学研プラス merアプリにて「かんたん薬膳」を連載。

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お米づくり無くして語れない、日本人のソウルフード「納豆」

ごはんのおともとして、日本の食卓に欠かせない「納豆」。その歴史は古く、起源は弥生時代という説も。どのようにして誕生したかについては諸説あるが、そのほとんどに共通しているのは「稲藁に煮豆を包んで置いておいたら、自然発酵して糸引く豆になっていた」ということ。今回、納豆づくりを通して知り得た、“ごはんのおとも”にとどまらない、お米との密接な関係をご紹介したい。

 

納豆を作るのに欠かせない、藁でつくる「藁苞(わらづと)」

訪れたのは、熊本県の益城町東無田集落。昔から、お米や大豆を栽培しているこの地域では、納豆づくりは冬仕事のひとつだ。余談だが、納豆の消費量は西へ行くほど少ないと言われている中、熊本県は西日本一の消費量(購入金額)*を誇る、納豆好きの県民性としても知られている。

「わら納豆講習会」の会場となっている公民館に入ると、大量の藁を囲むように地域のおかあさん達が手際よく“藁苞”を編んでいた。藁苞は、納豆となる大豆を入れるためのものだ。

 

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藁は、この地域で10月頃に収穫した後の稲藁を、機械で裁断せずに天日干しして乾燥させたもの。さらに、手作業で藁のハカマなどをすき取られ、きれいに揃えられていた。

今回は、約60〜70cmの長さのビニール紐を用意。紐を半分に折り、そこに藁を3〜4本束ねて入れ、紐を交差させてまたそこに藁を3〜4本入れる。これを繰り返していく。

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藁を入れるときは、穂の部分を上にして入れた次は、根の部分を上にして入れる、と、互い違いにするのがポイントだ。ゆるくならないように、片手でビニール紐と藁を押さえながら、もう一方の手で次の藁を揃えて入れ、編んでいく。コツを掴むまでは、なかなか苦労する作業だ。

nattoudukuri3▲うっかり紐を交差し忘れたりして編み目が飛んでしまうと、大豆をきちんと入れられない。作業は丁寧に進める

 

ある程度の長さ、いわゆる煮豆を入れられるのに十分な長さ(今回は約20〜30cmほど)になったら、紐を固結びして余分な紐は切り落とす。煮豆を入れられるよう、口を合わせて閉じ、丸めて両はしをビニール紐でぐるぐるぐると、何重にもしっかりと結び止める。

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さらに、余分な両はしの藁は鎌できれいにカット。片足で鎌を固定し、ザクザクと藁を切る地元のお母さんの姿に感動。こうやって、藁苞が完成した。

 

煮豆を冷ますな! 時間勝負の連携プレー

藁苞づくりをしている隣の部屋では、シューッと音を立てる圧力鍋。前日から水にさらしていたという大豆8升を、弱火で40分、圧力鍋で炊いてたところだ。

「今、火を止めて蒸気が出るのを待っているところです。蒸気が抜けてしまったら藁苞の中に大豆を入れていきますが、ここからはスピード勝負。なるべく大豆が冷えないように藁苞に入れて、米袋に並べて入れて、納豆を寝かせに行きます」と教えてくれたのは、地域に住む堀川貴子さん。この地域に嫁いで初めて、納豆づくりを経験したという。手際よく煮豆の準備や藁苞づくりの様子を見守っていた。

 

nattoudukuri6▲この地域でとれた大豆“フクユタカ”。やや大きめの粒で、高タンパクで豆腐加工に適している品種でもある。「茹でただけの大豆もとてもおいしんですよ」と、炊き上がった大豆を受け取る堀川貴子さん(写真右)

 

前述の「稲藁に煮豆を包んで置いておいたら、自然発酵して糸引く豆になっていた」という説の通り、藁には最初から納豆菌が存在する。ただ、その納豆菌の量だけでは発酵や粘り気などが少なくなるため、今回は市販の納豆パックを少し種付け(自然な粘り気で十分な方は、そのままでもOK)。スピード勝負とのことで、地域のお母さん方の連携プレーが光っていた。

 

nattoudukuri7▲藁苞の口をパカっと開け、煮豆をたくさん入れ、最後に納豆パックの納豆を少し入れる

nattoudukuri9▲左から右へと、見事な連携プレーで次々と煮豆が藁苞に入れられていく。豆を入れたら藁苞の口を締め、藁でぐるっと巻いて結び止める。口を閉じた藁苞は、米袋の中に並べ入れる

 

籾殻の山は、納豆の大事なお布団

米袋に入れられた納豆が運ばれたのは、大きな“籾(もみ)山”。収穫した稲穂から実を取ったあとの籾もまた、納豆づくりに重要な役割を果たす。先ほど藁苞納豆を入れた米袋を、この籾殼の中に入れて、2日間寝かせるのだ。

nattoudukuri10▲子どもたちが思わず登ってしまう高さ!

nattoudukuri11▲籾の上にシートを敷いて藁苞が入った米袋を置き、さらに藁で覆ってシートをかぶせて、その上から籾を重ねかぶせる。さらにブルーシートをかぶせるなど、温度が一定になるように慣れた手つきで作業をする堀川カク子さん

 

「適温は35〜38度くらい」と話すのは、納豆づくりの名人・堀川カク子さん。納豆の温度管理を一手に引き受けるカク子さんもまた、50年前に東無田集落にお嫁に来た際に、ご主人のお母さんから納豆づくりを習ったそう。そんなカク子さんは籾の中に手を入れて、皮膚の感覚だけで温度を確認する。熱すぎでも寒すぎても活発にならない納豆菌。「熱すぎるとエグ味というか苦くなったりもするんですよね。熱くなりすぎていたら籾をとり、寒くなっていたら籾をかける。この2日間は神経を使いますね」と教えてくれた。

 

各家庭で納豆づくりをするときには、籾殻のほか、藁苞をこたつの中に入れたり、布団の中に入れたりする人も多いのだそう。美味しい納豆を作り上げるには、藁や籾といった稲刈りの産物と人の手間ひまが必要不可欠なのだ。

 

これまで感じたことがない風味がプラス!

納豆づくりから2日後、できたての納豆とご対面。ドキドキと期待に胸を膨らませて、藁苞を開けてみると……

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糸引くお豆、納豆がお目見え! しっかり納豆らしい香りもあり、自然と食欲が湧いてくる。藁に包まれた納豆を早速いただいてみると、これまで市販の納豆パックでは感じなかった「藁」の香りもただよい、まさに風味豊かな逸品。普段、パックについている醤油を使うことが多かったが、「地元では塩をかけて食べる人が多いよ」と教えてもらったことを思い出し、塩をふりかける。大豆そのものの甘みが引き出され、何杯でもごはんがすすむ味わいだ。

 

納豆づくりを通して知り得た、お米づくりとの関係性。お米農家はもちろん、大豆を育てる方や、納豆ができるまでに準備・管理してくれた方たちへ、改めて感謝の気持ちを込め、心から「ごちそうさまでした」とつぶやき箸を置いた。

 

参考資料・サイト:

*データ元……統計局ホームページ/家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(平成27年(2015年)~29年(2017年)平均)参照

https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html

国産大豆の品種時点2018
http://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/daizu/d_ziten/attach/pdf/index-18.pdf

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