【8月薬膳レシピ】枝豆と梅のさっぱり夏の美肌ご飯

毎日厳しい暑さが続き夏本番を迎えていますが、暦の上では8月7日頃に立秋を迎え少しずつ夜が長くなり秋に近づいていきます。とはいえ、湿気と暑さには十分注意したいところ。そして、その湿気と暑さは夏のお肌にも影響を与えるのです。今回は、夏でも美肌を保つために注意したい点を、薬膳的にお伝えします。

 

夏の美肌は良い汗をかくこと

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夏は日々の生活の中で湿気と暑さが盛んになり、たくさん汗をかく季節です。運動などでかく爽やかな汗は、発散やデトックスにつながり美肌作りにもとても効果的ですが、頭部や関節などにたまる汗は皮膚トラブルを起こしやすくなります。

夏に良い汗をかくためには、毛穴の開閉を行っている肺のバランスを整えて、水分代謝を整えることが大切です。暑い夏、良い汗をかいて美肌作りを心がけましょう。また、季節に関わらず注意したいことは体の余分なもの、老廃物を溜め込まないこと。これらは汗や尿、呼気や便によって体の外へ排出されます。その中でもほとんどが便によって排出されるのです。よって美肌作りには、まず、便秘をしないすっきり快調を心がけることがとても大切です。

 

夏の美肌のために取りたいオススメの食材

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◆肺のバランスを整える食材
ネギ、ミョウガ、シソ、春菊、ごぼう、玉ねぎ、らっきょう、にんにく、生姜etc

◆水分代謝を整える食材
はと麦、とうもろこし、アスパラガス、枝豆、そら豆、きゅうり、レタス、冬瓜、スイカ、緑豆etc


★[タイプ別デトックス 排便を促すオススメの食材
① お腹の張りや冷えが気になる方
 →甘いものの食べ過ぎや運動不足が原因
  味噌や漬物の発酵食、青梗菜、ニラ、白菜、大根、とうもろこしetc


② 便秘と下痢を交互に繰り返す
 →ストレスや緊張で巡りが悪いことが原因
  セロリ、かぼちゃ、甘酒、昆布、あらめ、ひじきetc


③ コロコロ便が出る
 →腸内の水分量が少なく、便が乾燥していることが原因
  トマト、オクラ、きのこ類、ごぼう、りんご、くるみ、ごまetc


「枝豆と梅のさっぱり夏の美肌ご飯」
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<レシピ4人分>
ごはん お茶碗4杯分
枝豆 100g
梅干し 3粒
みょうが 2個
大葉 3枚
塩  少々

<作り方>
1. 枝豆は水で洗い塩もみし、熱湯で5〜6分茹で、さやから取り出す
2. みょうがは薄切りに、大葉は千切りにする
3. 梅干しは種を取り、包丁で叩いてペースト状にする
4.ボウルにご飯を入れて、1.2.3 を入れて混ぜ合わせる
5.最後に塩少々を加え、味を整えたら出来上がり

 

文:建部春菜
「薬膳とヨガと心地よい毎日」主宰。熊本を拠点に薬膳やヨガをベースとしたライフスタイルを提案。様々な場所で薬膳やヨガのイベントを開催 。また、学研プラス merアプリにて「かんたん薬膳」を連載。

こだわりの酒造りはお米作りから。減反廃止で活気づく契約栽培・自社栽培の動き①

お米の作付けは、1970年代からの減反政策により長期的に減少してきたが、近年の国際的な日本酒人気の高まりによって酒米の需要が増加。それを受けて農林水産省は、2018年産からの減反政策廃止の前に、2014年産からいち早く酒米を減反の枠外とした。そしてこれを機に日本酒の造り手と米作農家との間で、酒米をめぐる新たな関係が生まれ始めている。

 

和食人気を背景に過去最高を更新し続ける日本酒の輸出

農林水産省は2013年に、日本酒を含むコメ・コメ加工品の輸出額を2020年までに600億円にする目標を掲げた。当時の輸出額は150億円なので実に4倍増となる。

こうした強気の目標を支えているのが、ここ数年の海外における日本酒人気である。2013年に和食が無形文化財に登録されたのが追風となり、和食人気と歩調を合わせる形で日本酒の需要も米国やアジア主要国で急上昇。同年に105億円だった日本酒の輸出額は、2017年には約1.8倍(187億円)となり、8年連続で過去最高を更新中だ。

日本酒の中で特に伸びているのが、吟醸酒や純米酒などの特定名称酒である。そして蔵の個性を色濃く出せる特定名称酒の市場拡大は、味と品質で差別化しブランド価値を高めたい蔵元にとって、大きな飛躍のチャンスとなっている。

sakamaisaibai1 1出典:「日本酒をめぐる状況」(農林水産省 政策統括官)
http://www.maff.go.jp/j/seisaku_tokatu/kikaku/pdf/07shiryo_04.pdf

 


お米の作り手とお酒の造り手を結ぶ新たな二つの動き

日本酒の味と品質を左右する要素は数々あるが、酒米がその中で最も重要な要素の一つであることは言うまでもない。ただ、これまで酒米の仕入れは地域のJAと各都道府県の酒造組合を通すのが一般的であり、蔵元にとっては毎年安定的に仕入れができるというメリットがある反面、お米の質や種類、農法などにこだわりたくても融通がきかないというデメリットもあった。

しかし酒米の需要が拡大し、いち早く減反の枠外となったことから、酒米作りの現場に新たな動きが出始めている。その一つが、酒米の複数年契約の拡大である。従来はJA側が単年ごとに需要を見込んで酒米を作付け・供給していたが、年度によって不足と供給過剰を繰り返すなどの問題があった。しかし、複数年契約を導入すれば長期スパンで蔵元の要望に応えられる上、お米の作り手側も安心して酒米を継続的に生産できるため、経営の安定にもつながる。

取り組みはまだ始まったばかりであるが、JA側では全国の酒造組合などに向けて、複数年契約の提案と段階的な拡大を働きかけていくという。

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農家と蔵元とのコラボが地域ブランド向上にもつながる

もう一つの動きが、地域の農家と蔵元による契約栽培の増加である。直接仕入れの契約を結ぶことにより、蔵元側は使いたい酒米の銘柄を細かく指定できるのに加え、「栽培地限定」「有機栽培」など特別な付加価値を持たせた酒を造りやすくなる。酒造現場の杜氏や蔵人にとっても、収穫前から酒米の性質や作柄を深く理解することで、精米・洗米・蒸米など各工程における微妙な判断に生かすことができる。

一方農家の側にとっても、収穫分の全量買い取りが保証されるため計画が立てやすい上、栽培方法や品種を他の稲田と差別化し自らの存在価値を高めることも可能だ。

何より、酒米の品種へのこだわり、栽培方法へのこだわり、仕込みと造りへのこだわり、完成した酒に対する市場の反響などを農家と蔵元が共有できることは、双方の結びつきとモチベーションの強化、一層の品質向上に大いに役立つだろう。さらに長い目で見ると、地元の農家と蔵元のコラボによって「良い酒米と美味しい日本酒を生む土地」という評価が高まれば、地域全体のブランド力向上にもつながっていくだろう。

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日本酒の輸出拡大を背景にした蔵元による酒米の契約栽培、さらにはもう一歩進んだ自社栽培への動きについては、歴史的な背景や各地の蔵元による具体的な取り組みなどにも触れつつ、次回以降でもう少し深掘りをしてみたい。

 

参考資料・サイト:
「日本酒をめぐる状況」(農林水産省 政策統括官)
http://www.maff.go.jp/j/seisaku_tokatu/kikaku/pdf/07shiryo_04.pdf
食品産業新聞社ニュースWEB
https://www.ssnp.co.jp/news/liquor/2018/02/2018-0201-1110-14.html
日本酒研究室
http://sake-labo.com/c02-01-011.html
醸界タイムスWEB版
http://www.jyokai.com/?p=6929
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25871210Y8A110C1QM8000/?n_cid=SPTMG002

 

【夏レシピ】管理栄養士が教える「熱中症予防!スペシャルスムージー」

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今年は特に暑いですね。みなさん、熱中症対策をどのようにされていますか。冷房の効かない室内にいる時や、畑仕事・工事現場でのお仕事など室外で作業をしなければならない時、スポーツをしている時など、熱中症にならないために必要なことが毎日テレビなどで放送されていますね。

熱中症予防に必要なことはたくさんありますが、その中でもビタミンやミネラルを上手に摂取することが、熱中症予防につながります。今回は、熱中症予防につながる飲み物をご紹介します。

 

疲労回復にはビタミンB1を

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暑くなると冷たい麺類やデザートなど、サラッと食べられるものが多くなりますよね。麺類やデザートには素早くエネルギーになってくれる糖質が多く含まれています。糖質は人にとって大切な栄養素ですが、糖質をエネルギーに変えるにはビタミンB1が必要になります。糖質をたくさん摂取してもビタミンB1がないとエネルギーに換えられないため、疲れやすくなり熱中症の原因にもなってしまうのです。ビタミンB1は、豚肉やウナギ・玄米や大豆に多く含まれていますので、ぜひ意識して食べてみてください。

 

疲労物質の正体は乳酸ではない!本当の原因は……?

これまで疲労は、乳酸という物質が溜まることで起こると言われてきました。しかし最近、乳酸は疲労物質ではないことが明らかになりました。では、疲労の原因となっているのは何なのでしょうか。それはFF(ファティーグ ファクター)というタンパク質。肉体的・精神的どちらの疲労でも増加するということです。

FFが発生する原因は、活性酸素。活性酸素が発生することでFFが発生してしまいます。活性酸素とは、激しい運動や睡眠不足・強いストレスなどの生活習慣、喫煙や紫外線・大気汚染などの環境因子などによって増加してしまいます。特に夏は強い紫外線に加え、暑さのストレスもあるため、最も活性酸素が増加しやすい時期になります。

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活性酸素を増加させないためには、生活習慣を見直したり環境因子を取り除くことが有効ですが、全てを取り除くことは難しいため、身体の抗酸化力を高めることが重要となります。

加齢によって抗酸化力は低下してしまいますが、抗酸化作用の強い食品を食べることで身体の抗酸化力を高めることができます。ビタミンA・ビタミンC・ビタミンEの3つのビタミンは、ビタミンACE(エース)とも呼ばれる抗酸化作用を持つ代表的な栄養素です。これら抗酸化力の強い食材を摂取することで活性酸素の増加を防止し、FFの増加を防ぐことができるため、疲労物質蓄積の予防、ひいては熱中症の予防につながります。ビタミンAとビタミンEは脂溶性のビタミンのため、油と一緒に摂取することで吸収率がUPします。

 

夏野菜最強の抗酸化力を持つモロヘイヤ

モロヘイヤはエジプト原産の夏野菜です。最近では、夏になると直売所やスーパーなどで見かけることも多くなりました。モロヘイヤは、ビタミンA(β-カロテン)・ビタミンC・ビタミンE全てが多く含まれている、まさに最強の抗酸化力を持つ食材です。ビタミンA(β-カロテン)とビタミンEは野菜でトップクラス。その他ビタミンB1やカリウムも比較的多く含まれており、夏バテや熱中症予防に最適の食材です。

 

 ◆モロヘイヤとフルーツのスムージー

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<材料>
モロヘイヤ(葉っぱのみ)  30g       
キウイフルーツ      1個
冷凍バナナ        1個
オリーブオイル      小さじ1
豆乳           180ml

<作り方>
① バナナは皮をむいてラップに包み、冷凍しておく
② モロヘイヤはよく洗って葉っぱをちぎる
③ キウイフルーツは皮をむいて1口大に切る
④ 冷凍バナナを1口大に切る
⑤ ②・③・④とオリーブオイル・豆乳をブレンダーで撹拌する

 

熱中症予防にはカリウムもとても大切です。大量の汗をかいてカリウムが不足すると倦怠感や食欲不振の原因に。カリウムは夏野菜や果物に多く含まれています。水溶性物質で煮たり茹でたりすることで損失してしまうため、生で食べるのがオススメです。

今回のスムージーは、疲労回復や熱中症予防に効果的な食材ばかりを詰め込みました。モロヘイヤはもちろん、カリウム豊富なバナナやビタミンCやカリウムを多く含むキウイフルーツ、エネルギー代謝に必要なビタミンB1を多く含む豆乳。味もとてもまろやかで美味しいです。ぜひお試しください。

 

 水分補給に!手作り経口補水液

<材料>
水                 1L
塩(ミネラルを多く含む天然塩)   小さじ1/2
砂糖(きび糖やはちみつ)      大さじ2~4
レモンなどの絞り汁(お好みで)   大さじ2

<作り方>
① 全てを混ぜ合わせる
② 冷蔵庫で冷やす
※厚生労働省資料参照

熱中症対策に様々な飲料が売られていますが、簡単に作れますのでこの機会にいかがでしょうか。

 

参考資料:
環境省 平成30年度「熱中症対策シンポジウム」資料
http://www.wbgt.env.go.jp/pdf/sympo/20180603_4.pdf

日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2015」資料
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/heatstroke2015.pdf

 

文:カベルネmama
管理栄養士、食生活アドバイザー2級の資格を保持。保育園で献立作成や食育を担当していた経験を持つ。現在は幼い3人の息子の育児をしながらレシピ記事作成を行う。料理を作ること・食べることが大好き。子どもたちのため、栄養たっぷりで簡単に作れ、喜んで食べてくれるものを考案する日々を送る。

【夏レシピ】管理栄養士が教える「梅干しアレンジレシピ」

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蒸し暑くなるこの季節に活躍する梅干し。日本では昔から『梅はその日の難のがれ』また『1日1粒食べると医者いらず』と言われる程、梅干しは美容や健康によく、さまざまな効果があります。スーパーの梅干し売り場を見てみると、昔ながらの酸っぱい梅干しに加え、かつお梅やはちみつ梅、減塩梅などたくさんの梅干しを見かけます。
今回は、そんな梅干しを使ったアレンジレシピを作ってみましょう。

 

梅干しに含まれる強力抗酸化作用で美肌に

美容に大敵である活性酸素。活性酸素は身体の中で必要以上に増えてしまうと、健康な細胞が酸化されて正常な機能を失ってしまいます。活性酸素が必要以上に増えるとシミ・シワなど肌の老化ばかりでなく、動脈硬化や心筋梗塞などの原因となってしまうことも。

活性酸素を必要以上に増加させないためには、抗酸化力を高めることが大切です。しかし、抗酸化力は加齢と共に低下してしまうため、抗酸化物質を多く含む食材を食べることが重要となります。梅干しには強い抗酸化作用を持つフラボノイドが含まれています。梅干しを毎日数個食べることでシミ・シワなどの老化を抑えて美肌に近づけるだけでなく、生活習慣病の予防にもつながります。

 

夏バテ予防に梅干しを

暑くなると食欲がなくなることがあります。冷たいものを食べたり飲んだりして、胃が疲れてしまうことが原因の1つに挙げられます。胃が疲れてしまうと消化がうまくいかず、食欲不振につながってしまいます。それを改善してくれるのがクエン酸です。

クエン酸は酸っぱい成分の代表物質で、梅干しにはたくさん含まれています。梅干しなどの酸っぱいものを食べると、酸っぱさに刺激されて唾液が出てきます。唾液には消化を助ける働きがあるため、暑い夏に冷たいものを食べたり飲んだりして疲れた胃の負担を軽減させてくれます。さらに、クエン酸には食欲増進効果もあるのでより一層夏バテしにくくなります。これからの時期には特に梅干しを食べてみてはいかがでしょうか。


カルシウムの吸収を助けるクエン酸

梅干しに含まれるクエン酸には、吸収されにくいカルシウムを体内で吸収しやすくしてくれる作用があります。これを「キレート作用」と言い、カルシウムや鉄などのミネラルを、クエン酸が囲い込んで吸収しやすくしてくれるというものです。

湯沸かしポットを長年使っていると、底の方に白い物質がこびりついてきます。これは水に含まれるカルシウムなどのミネラルが結晶化したもの。これを取り除く際に使われるのもクエン酸です。この際もクエン酸のキレート作用が働くことによってカルシウムなどのミネラルがクエン酸に囲い込まれて取り除かれ、ポットがキレイになるというわけです。

酸っぱくない梅干しもたくさん売られていますが、カルシウムの吸収を助けるクエン酸がたくさん含まれているのは酸っぱい梅干し。顔がくしゃっとなってしまうような、酸っぱい昔ながらの梅干しも食べてみてください。

今回ご紹介するレシピは、胡麻やちりめんじゃこなどが入ったカルシウムたっぷりのふりかけです。日本人に不足しがちなカルシウムですが、梅と一緒に食べることでキレート作用によりカルシウムを吸収しやすくしてくれるので、骨粗鬆症などの予防にも効果的です。

 

梅とちりめんのふりかけ
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<材料>
梅干し          50g
ちりめんじゃこ      40g
かつおぶし        ひとつかみ
胡麻           大さじ1
濃い口醤油        小さじ1
ごま油          大さじ1

<作り方>
① 天板にクッキングシートを敷いて梅干しを並べて置き、120度のオーブンで40分~1時間かけて焼く
② ①の梅干しの種を除き、こまかく刻む
③ フライパンにごま油を熱し、ちりめんじゃこを入れて炒める
④ ③に②と濃い口醤油を入れてからまったら、かつおぶしと胡麻を入れて混ぜ合わせる


umeboshi3どうしても食欲がない時は、このふりかけをかけてお出汁をかけ、お茶漬けにしてもおいしくいただけます。お好みで塩こんぶなどを入れてください。



参考サイト:
紀州梅効能研究会
http://www.umekounou.com/study/flavonoid.html 

 

文:カベルネmama
管理栄養士、食生活アドバイザー2級の資格を保持。保育園で献立作成や食育を担当していた経験を持つ。現在は幼い3人の息子の育児をしながらレシピ記事作成を行う。料理を作ること・食べることが大好き。子どもたちのため、栄養たっぷりで簡単に作れ、喜んで食べてくれるものを考案する日々を送る。

名水ある処に銘酒あり。お米から酒の旨みを引き出す水質の話

 

日本酒の80%は水でできている。そのため、水の良し悪しが酒の味を大きく左右することは言うまでもない。では、酒造りに適しているのはどのような水なのか。そして、土地ごとの水質の違いは酒の味にいかなる影響を及ぼすのか。今回はその辺りにスポットを当ててみたい。

 

鉄分とマンガンが少なくミネラル分が豊富な水が理想

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『一升の酒に八升の水がいる』と言われる程、酒造りには大量の水が欠かせない。味を左右する仕込みや割り水*の工程はもちろん、洗米・浸漬、蒸米、さらには瓶や道具の洗浄にも水がふんだんに必要だからだ。その量は、酒造りに使うお米の総重量の30〜50倍にも達する。

おまけに量さえあればOKではなく、酒造用水には次の三つの条件が必要となる。

一つ目は、鉄分が少ないこと。鉄分はアミノ酸と化学反応を起こして酒を濁らせる上、香味まで損ねるためである。そのため鉄分の基準値は水道水の0.3ppmに対し、酒造用水では0.02ppm以下とされている。

二つ目は、マンガンが少ないこと。マンガンは紫外線と化学反応を起こして酒を変色させるためである。そのためマンガンの基準値は水道水の0.05ppmに対し、酒造用水では0.02ppm以下とされている。

三つ目は、カルシウム、カリウム、リン酸、マグネシウムという4つのミネラル分が豊富に含まれていること。これらの成分は麹や酵母を繁殖させ、発酵を促す栄養源となってくれるからである。
*割り水:原酒に水を加えアルコール度数や味を調整すること


水の硬度によって酒の味は大きく変わる

一般的にミネラル分を多く含む水を硬水、少ない水を軟水と呼ぶ。硬水で醸す日本酒は発酵が進みやすいため、酸が強めでキリッとしたコクのある力強い辛口に仕上がる傾向がある。一方軟水で醸すと酵母が穏やかに発酵するため、なめらかで軽い口当たりの甘口に仕上がる傾向がある。

そして日本酒の世界では昔から、前者を『男酒』、後者を『女酒』と呼んできた。男酒の代表は、江戸期から日本一の酒どころと言われてきた兵庫・灘の酒である。仕込みに使われるのは六甲山の花崗岩層を通って湧き出る『宮水』で、鉄分が少なく、ミネラル分をたっぷり含んでいる。硬度は6.5(※ドイツ硬度)で、国内の酒造用水では最も高い水準だ。

宮水で醸す灘酒は旨味が強いキレのある辛口を特徴とするが、冬場に造った酒がひと夏を越すと程良く熟成してさらに旨味を増すため、『秋上がり・秋映え』のする酒とも称されている。

 

力強さとコクのある『男酒』vsなめらかで軽い口当たりの『女酒』

一方、女酒の代表と言われるのが京都・伏見の酒である。この地はかつて伏水(ふしみ)と記された程、ミネラル分をバランス良く含んだ良質の伏流水が街中に湧き出ている。硬度は4.0。灘酒より口当たりが柔らかく、しっとりした甘みを感じさせる。

伏見より硬度の低い水で仕込んでいるのが、日本を代表する米どころであり酒どころでもある新潟である。澄んだ雪解け水に由来する新潟の酒造用水は、硬度3.0でミネラル分が比較的少ない。そのため新潟の酒は全般的に、なめらかでスッキリした口当たりの淡麗辛口が主流である。

そして日本で最も低い硬度1.0の超軟水を多く使っているのが、『吟醸王国』として酒通に人気の静岡である。この地は富士川、安倍川、天竜川などの一級河川が流れ、富士山からの雪解け水にも恵まれている名水の宝庫。そんな超軟水で仕込んだ静岡の酒は全体的に香りが良く、あっさりとしたマイルドな味わいが主流となっている。

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『名水ある処に銘酒あり』と言われる程、古くから銘醸地と呼ばれている場所のほとんどは良質な水に恵まれている。裏を返せば、良質な水がふんだんに使える土地でなければ、長きにわたって安定的に美酒を醸すことはできない。

近頃は、酒と一緒に仕込み水を販売する蔵も増えた。蔵出しの酒を飲みつつチェイサー代わりに仕込み水を飲むと、この酒はこの水から生まれたのか……と改めて酒造りの深淵に触れられるので、機会があればぜひお試し頂きたい。


参考サイト:
SAKETIMES
https://jp.sake-times.com/think/study/importance_of_water
eSake
http://www.esake.com/j/knowledge/Ingredients/mizu/mizu.html
日本酒生活
http://www.akikotomoda.com/lecture/?p=651
醸造用水の現状と問題点((財)日本醸造協会)
http://www.jozo.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2011/09/356db1862ac5b9cc2112becfbbbc2bf9.pdf

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