【春レシピ】管理栄養士が教える 「今が旬!たけのこを使ったごはんが進むレシピ」


takenoko1寒い冬が終わり暖かくなってくると、野山には春の訪れを知らせるように山菜が顔を出しはじめます。春を代表する食材のなかでもたけのこは、ごはんと一緒に炊いたり煮物にしたりと、いろいろな料理にして食べることができる、この時期には欠かせない食材です。そんなたけのこですが、いくつか種類があり、優れた栄養価を持っていることをご存じですか。たけのこについて知った上で、ごはんとの相性バッチリなたけのこ料理をつくってみましょう。

 

疲れやストレスを和らげるなど、身体の機能を改善

実はたけのこには、私たちの身体にとっても良いさまざまな栄養が含まれています。具体的な栄養素と、注意したい点をまとめてみました。


 
① チロシンの効果で疲労やストレスを緩和
たけのこを茹でるとヒダの間に見られる白い物質。「食べても大丈夫?」と心配になったことはありませんか。この白い物質、実はチロシンというアミノ酸の一種なのです。チロシンはチーズから発見された非必須アミノ酸。ドーパミンやノルアドレナリンなど神経伝達物質の原料になる栄養素で、疲労やストレスを緩和する作用が期待できます。またドーパミンは、脳を興奮状態にしてやる気を起こさせることから、脳が活性化しうつ状態が改善するとも言われています。


 
② カリウムでむくみ改善&高血圧予防
むくみの原因の1つは、血中のナトリウム濃度が高くなるため。むくみ改善にはナトリウムを身体の外に排出することが大切となり、その役割を果たすのがカリウムです。カリウムを摂取することで、過剰なナトリウムを排出し、むくみを改善することにつながります。同様に、余分なナトリウムを排出することによって血圧を下げ、高血圧予防にも効果があることが分かっています。

 
③ 妊活中・妊娠中の人には特に摂取してほしい葉酸も豊富
葉酸は水溶性のビタミンで、精子の染色体異常の抑制や子宮内壁を強くすることで受精卵の着床をしやすくするという作用があるため、妊活中の方には是非摂取していただきたい栄養素です。さらに、細胞の新生に必要なDNAなどの核酸を合成する役割をもっており、細胞分裂が活発な妊娠初期には特に気を付けて摂取したい栄養素でもあります。


 
④ 食べ過ぎによる影響
たけのこには食物繊維が含まれており、食べ過ぎは胃腸を悪くする可能性も。不溶性の食物繊維が多く含まれるたけのこは、腸の中で水分を吸って嵩(かさ)が増すため、食べ過ぎると便秘や腹痛の原因になることがあります。また、油と一緒に食べる天ぷらなどは胃もたれをおこすこともあるので注意が必要です。食べ過ぎに気を付け、しっかり噛んで食べましょう。

 

獲れる時期によって、料理の仕方も変化する!?

たけのこにはさまざまな種類がありますが、収穫時期や料理にも違いがあります。主な種類別に見てみましょう。


◆孟宗竹(もうそうちく)
一番馴染みのある品種が中国原産の孟宗竹です。産地は九州や四国を中心とした関西以南、東北地方でも少し収穫されますが寒冷地では育ちにくいため多くはありません。収穫時期は3月から5月。柔らかい食感で風味も良く、厚みがあるのが特徴です。天ぷらや焼き物、たけのこごはんなどさまざまな料理に使えます。


◆淡竹(はちく)
中国原産の品種で5月頃から旬を迎える淡竹は、孟宗竹と異なり地面を掘って収穫する必要がありません。また寒さに強く北海道でも収穫できる品種です。アクが少なく基本的にはアク抜きする必要がないため、下ゆでしてから調理することができます。柔らかくシャキシャキした食感が特徴で、炒め物や煮物などがオススメです。


◆真竹(まだけ)
古くから日本で栽培されていた品種で、孟宗竹がすっかり大きくなった6月頃が収穫時期です。真竹は淡竹と同じく地面を掘って収穫する必要がありません。サクサクとした食感で風味も良く、アクが少ないのが特徴です。淡竹と同様下ゆでしてからスープや炒め物、メンマにして食べると美味しいです。

その他、根まがり竹/姫竹/月山竹や四方竹(しほうちく)、寒山竹(かんざんちく)などの品種があります。

 

お米とたけのこの“おいしい関係”

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たけのこに含まれるアクの正体はシュウ酸とホモゲンチジン酸と言われており、時間と共に増加してえぐみが強くなります。そのため、たけのこは掘った後、なるべく早くアク抜きをしましょう。たけのこのアク抜きには米ぬかを使います。米ぬかに含まれるカルシウムがシュウ酸と結合してシュウ酸カルシウムとなることでえぐみを感じにくくさせると言われています。米ぬかのでんぷんがアクを吸着するという説もあります。さらに、米ぬかに含まれる酵素がたけのこの繊維を柔らかくして旨みを引きだす作用も。たけのこにとってお米はまさに最高のパートナーと言えるでしょう。
重層でもアク抜きはできますが、たけのこの色が悪くなることからオススメしません。米ぬかが手に入らない場合は、米のとぎ汁で茹でることでも代用できます。

 

ごはんが進むたけのこを使ったレシピ

たけのこ入り麻婆春雨
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<材料4人分>
たけのこ(アク抜き済み) 200g
人参 中1本
玉ねぎ 小1個
ニラ 1束
緑豆春雨 80g
豚ひき肉 200g
生姜 1片
にんにく 1片
☆酒 大さじ1
☆醤油 大さじ2
☆砂糖 小さじ2
☆鶏ガラスープ 1カップ
☆赤みそ 大さじ1
ごま油 適宜
塩 少々
水溶き片栗粉 適宜
豆板醤 適宜

<作り方>
① 春雨は軽く茹でて食べやすい大きさに切っておく
② 生姜とにんにくはみじん切りにする
③ 人参は千切り、玉ねぎは薄切りにし、ニラは2~3cmの長さに切る
④ たけのこは5cmの長さに切り、立てて5mm幅に切った後、繊維に沿って5mm幅に切って細切りにする
⑤ ☆を合わせておく
⑥ フライパンにごま油を入れて熱し②を弱火で炒め、香りが出てきたら豚ひき肉を炒める
⑦ 肉に半分くらい火が通ったら③の野菜と④のたけのこを入れて炒める
⑧ 野菜がしんなりしたら①の春雨を加えさっと炒め、⑤を入れて煮る
⑨ 味をみて足りなければ塩で整え、水溶き片栗粉を入れひと煮立ちさせて火を止める
⑩ お好みで豆板醤を入れる

 

たけのこ入りにすることでヘルシーに仕上がります。しっかりした味付けなのでごはんが進みますが、食べ過ぎには気を付けてください。この麻婆春雨を春巻きの皮に包んで揚げ焼きにすると、お弁当のおかずにもなりますよ。是非試してみてください。


参考サイト:
タケノコ 
https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%82%BF%E3%82%B1%E3%83%8E%E3%82%B3&oldid=67726636

ラシック
https://rassic.jp/content/124

食育大事典
http://www.shokuiku-daijiten.com/mame/?p=943

 

文:カベルネmama
管理栄養士、食生活アドバイザー2級の資格を保持。保育園で献立作成や食育を担当していた経験を持つ。現在は幼い3人の息子の育児をしながらレシピ記事作成を行う。料理を作ること・食べることが大好き。子どもたちのため、栄養たっぷりで簡単に作れ、喜んで食べてくれるものを考案する日々を送る。

 

"SAKE" is so cool!  イギリス初の日本酒醸造所とは


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イギリス人は、昔からビール好きの国民として有名である。たくさんのビール醸造所が国内に点在し、家庭でも作ってしまうほどの勢いだ。ところがここ数年、ジンの売り上げが急速に伸びるとともに、日本ブームの影響もあって、日本酒にも注目が集まっている。ロンドンの有名レストランには、たくさんの日本酒が並んでいる。驚くことに、その中には、“Made in the UK”と書かれた日本酒が存在するのだ。今回は、近年イギリスに誕生した日本酒醸造所と、そこで作られる“カンパイ酒”について紹介する。

 

イギリス初の醸造所がロンドンに!

2017年、イギリスのロンドン近郊にある小さな日本酒醸造所が開業した。その名は『カンパイ』。イギリス初の日本酒醸造所として注目を集めている。この醸造所は、イギリス人夫婦のトムさんとルーシーさんの2人で運営。この夫婦が日本酒に興味を持ったきっかけは、日本を旅している時に立ち寄った渋谷の居酒屋だった。そこで、焼き鳥と日本酒を楽しみ、日本酒に惚れ込んでしまったという。イギリスに戻り、書籍やネットの情報などを調べながら少量の日本酒を作ってみたところ、大成功。とはいえ、この幸運は続かず、次の一樽は失敗に終わった。それから、何度も失敗を重ね、醸造のテクニックを身につけていったという。

普段の2人はというと、夫のトムさんは、ノッティングガム大学でマルチメディア・エンジニアリングを専攻し、スイス銀行に勤務。一方、妻のルーシーさんは、バース・スパ大学で生物学を専攻し、化学業界で働いている。このように彼らは、現職を持ちつつ、カンパイ酒の醸造に従事しているのだ。平日は仕事の後に、週末は朝から 日本酒づくりに専念する。レジャータイムが取れず、週末のイベントへの参加を諦めることが多くなったと私生活の変化を語るが、それでも、“カンパイ酒”は2人にとって新生児のようなもの。我が子を育てるように大事に、そして着実に育てている。その喜びは何にも変えがたいものだ。

 

外国生まれの日本酒“カンパイ”はどんな味わい?
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カンパイ酒醸造所が目指す清酒とは、コクがあり香り高い日本酒である。これは、イギリス人の嗜好に合わせた日本酒を醸造したいというトムさんの意向だ。カンパイ酒は、日本産の伝統的な日本酒の味とは異なるが、日本酒独特の風味を失っていない。

では、どのような種類の日本酒が醸造されているのだろうか。ここで製造されているのは、純米酒と濁り酒の2種。いずれもアルコール分は15〜20%ほどだ。トムさんは、「伝統的な日本酒について、多くのイギリス人は『とてもアルコールが強い、口が焼けるようだ』と思っている」と話す。こうした意見を参考にして作られた純米酒と濁り酒。その風味は、次のように紹介されている。純米酒は、ドライでマイルド。塩味の料理や魚介類にとても合い、カクテルにも最適である。一方、濁り酒は、ミデイアム・ドライでやや甘め。夏の食事やデザートにオススメ。バナナとパパイヤの味がするとコメントした客もいるほど、フルーティーさも感じる。カンパイ酒は、イギリスの大手百貸店『セルフリッジズ』で購入できる他、ロンドンのいくつかの和風レストラン及び有名レストランで楽しむことができる。

イギリスの情報誌『ロンドニスト』によると、2017年時点で、『カンパイ』はクラウドファンデングにより、12、975ポンド(約1760万円)の寄付金を得ており、販売数を見る限り、2人の初商品は成功しているかのようだと報道されている。現在、彼らは、醸造量を増やすために、広いスペースへの移動を考えているとのことだ。

 

2018年オープン予定の堂島醸造所と閉鎖となったアラン醸造所

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メイド・イン・イングランドの日本酒を先駆けたカンパイ酒醸造所に、ライバルが出現する。それは、2018年オープン予定の堂島醸造所である。堂島醸造所は、大阪の堂島麦酒醸造所による新たな試みとして、イギリスに誕生する日本酒の醸造所だ。社長の橋本さんは造り酒屋で育ち、子供ながらに自分も酒を作るのだと信じていた 。その夢がイギリスのケンブリッジで間もなく実現するというのだ。「酒を通して、日本文化をヨーロッパに根付かせたい」との意気込みを日本の『Yomiuri Online』で語っている。

その一方で、度重なる盗難の被害により夢を諦めた醸造所がある。それは、スコットランドのアラン醸造所だ。アランのビールは、スコットランドでは人気があり、実績を誇る醸造所の一つとして認知されている。アランは、小学校跡を買い取り、日本文化の展示室を含む大規模な日本酒の施設の開業を計画。アメリカ産の日本米を使った日本酒醸造を目指していたが、前述の理由により志半ばで実現には至らなかった。

 

お米は、さまざまな国で、さまざまにアレンジされ楽しまれている。現在カンパイ酒醸造所は、地元のビール醸造所に酒粕を無料で提供しているという。近い将来、“酒ビール”といった商品がこのビール醸造所から登場するかもしれない。イギリスで誕生した小さな日本酒醸造所から、日本酒の可能性は無限であり、より多くの人々がもっと日本文化を楽しめる日は近いと感じる。

文:ラッド順子
イギリス在住のライター。イギリスの食文化などに精通し、イギリスのさまざまな魅力を発信している。旅行や食べ歩きも好きで、よくイギリスの穴場スポットを散策している。

【4月薬膳レシピ】巡りを良くする春のデトックスちらし寿司


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春本番!心地よい空気とともに気温も上昇し、パワーも満ちあふれる季節です。何かと新しいことやものに触れる機会も多くなり、やる気満々で挑みたいところですが・・何となく頭がぼーっとしたり、肩や首のコリなど特に上半身の不調が気になりませんか??


春の不調はデトックスと巡りから


気温の上昇とともに陽気も高まり、エネルギーや血のめぐりも悪くなることによって、上半身が滞りやすくなります。肩や首のコリ、目の充血、頭痛・・・そして春にトラブルを起こしやすい肝臓の機能が弱まるとデトックスできず、湿疹や吹き出物など肌トラブルも起こしやすくなります。
また精神的にもイライラ、うつうつしやすかったり、朝スッキリと起きれなかったりすることも。
この時期感じる上半身の不調は、エネルギーや血の巡りを良くし、肝臓の働きを高めることが大切です。そして出来るだけ早起きをして心身ともにのびのびと楽しい気持ちで過ごすことを心がけましょう。


この時期に取りたいオススメの食材
肝臓の働きを正常化し、エネルギーや血のめぐりを良くする

菜の花、たけのこ、菊花、人参、春菊、セロリ、クレソン、ニラ、ピーマン、小松菜、チンゲン菜、にんにく、生姜、鮭、イワシ、サフラン、納豆、


春のデトックスちらし寿司
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<レシピ4人分>
米 2合
*酢 大さじ3
*きび砂糖 大さじ1
*塩 少々
たけのこ 1本
人参 1/2本
干ししいたけ(水で戻す) 4枚
干ししいたけの戻し汁 400ml
△醤油 大さじ1.5
△酒 大さじ1
△みりん 大さじ1
△きび砂糖 大さじ1/2
菜の花 8〜10本
菊花 4〜5個

<作り方>
1. 米2合を炊いておく
2. 人参は千切り、茹でたけのこはいちょう切り、しいたけは薄切りにする
*茹でたけのこは沸騰したお湯に酒少々を加え、さっと下ゆでする
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3. 鍋に油をひき、2を炒める
全体に油が回ったら、干ししいたけの戻し汁と△の調味料を加え、水分がなくなるまで煮詰める
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4. 炊いたお米に*の調味料を混ぜ、酢飯を作る
5. 4に3を入れ混ぜ合わせる
6. 5に菜の花、菊花を飾り出来上がり

 

建部春菜
「薬膳とヨガと心地よい毎日」主宰。熊本を拠点に薬膳やヨガをベースとしたライフスタイルを提案。様々な場所で薬膳やヨガのイベントを開催 。また、学研プラス merアプリにて「かんたん薬膳」を連載。

“山田錦”、“五百万石”、“雄町”……。酒造好適米の品種によって酒の味はどう違う?

 

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お米を原料に使って醸造する日本酒は、ワインほどの歴然とした差はないものの、やはり原料の品種によってベースとなる酒の味に個性の違いが生じる。日本には現在100種類を超える酒造好適米(酒造りに適したお米)が作られているが、その中でも特にメジャーな品種に絞って、それぞれの特徴と味の違いをご紹介したい。

 

生産量の約75%を占める上位3品種

農林水産省が実施している醸造用玄米検査の数量データによると、“山田錦(約40%)”、“五百万石(約27%)”、“美山錦(約8%)”の上位3品種だけで酒造好適米の全生産量の約75%を占めており、その後はいずれも2%から1%台以下の品種が続いている。まずは上位3品種について詳しく見てみよう。


◆自他ともに認める酒造好適米の王者 ―“山田錦”
昭和11年(1936)に兵庫県農事試験場で開発され、現在は約30の府県で栽培されている酒造好適米の王者。今でも兵庫県産が60%以上を占め、中でも土壌と気象条件が揃った三木市や加東市、西脇市方面の特定エリアは、最も良質なものが獲れる特A地区に認定されている。他の品種に比べて長稈(茎が長い)でやや太いが、しなりやすくて倒伏しやすい。丈夫な稲穂に育てるには、田起こしする際にミネラルを混和させる必要がある他、心白を出やすくするために砕石(ゼオライト)を土壌に混合させたり、苗の間隔を通常の2倍とって日当たりと通気性を良くするなど、育成に手間暇を要する。タンパク質が少ないため雑味が少なく、全体的にすっきりとした中にコクのある酒質に仕上がる。また香味が良いため大吟醸クラスの酒を造るには申し分なく、近頃大人気の銘柄『獺祭』をはじめ、山田錦しか使わないという蔵も全国に少なくない。


◆酒どころ新潟生まれの東の横綱 ―“五百万石”
西の横綱が“山田錦”なら、東の横綱は主に新潟を主産地とする五百万石である。新潟の気候風土に合うように作られたお米で、その名も昭和32年(1957)、新潟県の米の生産量が五百万石を突破したことを記念して付けられている。吸水性はやや低いものの、蒸米にした場合に適度な硬縮性があり、機械での麹米作りに適しているため需要が増加している。米の粒が小さいため高精米には不向きだが、すっきりと軽快でキレのある飲み口に仕上がることが多く、口当たりも優しい。まさに淡麗辛口の、新潟の酒のイメージそのものである。


◆雪のような心白を持つ突然変異種 ー“美山錦”
昭和53年(1978)に長野県農事試験場で、突然変異によって誕生した品種。北アルプスの山頂を染める雪のような心白があることから、この美しい名が付けられた。耐冷性に優れ寒冷地でも栽培ができるため、秋田、山形、岩手など東北地方でも多く生産されている。米質が硬くて醸造の際に溶けにくいため、雑味が少なく米の風味がしっかりと感じられやすい。そして香味は控え目で、全体的にきれいですっきりとした軽快な味わいに仕上がることが多い。

 

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絶滅寸前から復活した通好みの人気品種

◆熱烈なファンも多い「酒米の母」―“雄町”
安政6年(1959)に発見された日本最古の純血種の酒米。「酒米の母」とも言える存在で、“山田錦”をはじめとする酒造好適米の6割以上が、雄町を親にした品種改良から誕生している。そのため、上位3種と合わせて「四大酒米」と総称されることも多い。
稈長が高くて倒伏しやすく、また病虫害にも弱いため、絶滅の危機に瀕し「幻の米」と呼ばれた時期もあった。全生産量の9割以上が岡山で作られている。雄町米で造られた酒は、ふくよかな旨味と深いコク、絶妙な甘味と酸味のバランスが特徴で、そのコクのある味わいに惚れ込み自らを「オマチスト」と呼ぶファンもいるほど。

◆『夏子の酒』で一躍有名に ―“亀の尾”
明治26年(1893)に山形県で発見、育成された米。食用、酒造用の両方で高く評価され、「不世出の名品種」と謳われた。“ササニシキ”、“コシヒカリ”など多くの食用米の祖先でもある。病害虫に弱く倒伏しやすいため一時は絶滅の危機に瀕したが、漫画『夏子の酒』で物語の鍵を握る伝説の米“龍錦”のモデルになったこともあって、再び人気を集めている。酒としては奥行きがあって力強い、しっかりとした味わいに仕上がるのが特徴である。

 

主な酒造好適米の特徴と個性について知っておくだけで、日本酒の楽しみ方は大きく広がってくる。今回の記事を参考に、お米の品種と味の違いについてご自身の舌で確かめてみてはどうだろう。

参考文献:
『新訂 唎酒師必携』(1999年初版)

【全国のごはんのおとも】青森県民お気に入りの“ねぶた漬®” 、“つがる漬”

 

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本州最北端に位置する青森県は、東を太平洋、西を日本海、北を津軽海峡や陸奥湾に面し、白神山地や八甲田山など豊かな自然環境を有している。中央部には奥羽山脈が縦走し、西側の津軽地方、東側の南部地方とでは、昔から異なる文化や風土を形成してきた。中でも食文化は、「隣町同士でも食べるものが違う」と言われるほど、その地域の特性を色濃く映し出している。

 

お米を主体とした食文化が息づく津軽地方

青森県の西部に位置する津軽地方には、弥生時代に稲作が行われていたとされる垂柳遺跡などがあることから、古来、お米ともちを使った料理が発達してきた。また、広い範囲が日本海、陸奥湾、津軽海峡に面した沿岸地帯であることから、海の幸を主体とした郷土料理が伝承されてきた地域でもある。この津軽地方をメインに、長年青森県民に人気の“ごはんのおとも”がある。

 

ルーツは江戸時代の松前藩!? ロングセラーのお漬物

青森県民の食卓に欠かせない味というのが、数の子とスルメ、昆布と大根をしょうゆ漬けしたものだ。よく似たものに“松前漬”がある。その昔、海を隔てて向かい合う北海道の松前藩と津軽藩との交流によって、松前漬の食材や調理方法などが共有されていたとか。松前漬が数の子、スルメ、昆布をしょうゆで漬け込んだものであるのに対し、青森県で食べられているものには、大根やキュウリといった野菜の漬物が入っている。ここでは、青森県でロングセラーとなっている2つの商品を紹介したい。

 

●ねぶた漬®
昭和41年の発売当初から、長い間愛され続けている甘辛い味付けの“ねぶた漬®”。味付けが濃いため、ごはんのおとも以外にお酒のおつまみとしても人気が高い。前出のとおり、数の子、スルメ、昆布、大根、キュウリをしょうゆベースの漬け汁に漬けたものであるが、食材が細かく刻まれているのが特徴だ。野菜はシャキシャキ、パリパリ感があり、歯ごたえを楽しむことができる。数の子は大きめの塊と細かいものがあり、細かいものは野菜やスルメなどにからみ、プチプチ感を楽しめる。

これらの食材をまとめているのは、昆布のぬめり。この正体は、昆布の成分である“フコイダン”によるものである。この成分は水溶性食物繊維で、整腸作用のほか、アレルギーの予防やコレステロールの抑制などの効果が期待できるという。これらの食材がうまく合わさり、絶妙な食感と食味を表現している。加えて適度な粘りがあるため、ご飯などの食材によく絡み、さらに比較的濃い味付けによってごはんがどんどん進むのである。

ちなみにねぶたとは、青森の夏祭りを代表するねぶた祭りで使用される山車のことである。ねぶた漬®のパッケージには勇壮なねぶたが使用されており、青森を代表するお土産品の一つとなっている。お土産には、ギフト用や数の子の量が多い“特撰ねぶた漬®”などがお勧めだ。


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●つがる漬
“つがる漬”は、主に弘前市や津軽地方で好まれている食べ物だ。つがる漬のつけ汁には、津軽地方で醸造された特選しょうゆを使用されるといったこだわりよう。大きめに切られた数の子を口にした時の食感は、高級感や満足感を感じさせる。さらに手間を惜しまず、丁寧に薄皮を取り除いた数の子の食感は、おかずの1品として十分な存在感だ。

 

おともはごはんだけじゃない!? 美味しい食べ方は無限


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津軽平野は、県内でも有数の米の産地である。平野の周囲にある山々から、ミネラル豊富な雪解け水が流れ込むため美味しいお米が育つのである。美味しいお米と“ねぶた漬®”や“つがる漬”との相性は抜群だ。もちろん一番のお勧めの食べ方は、熱々の白いごはんに乗せて食べることである。しかし、白いごはん以外の食材とも良く合う。そばやうどんなどの麺類や、豆腐や細切りにした長芋などにかけたり、キュウリやワカメなどを刻んだものに混ぜたりするだけで、ごはんに合うおかずが完成する。納豆と混ぜる食べ方もお勧めだ。さらに、チャーハンや炊き込みご飯などにアレンジしてもおいしく食べることができる。夏の暑い日など食欲の落ちやすい時期でも、これがあれば夏バテ知らずだ。


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“ねぶた漬®”も“つがる漬”も、青森県内のスーパーで販売されているため、手軽に手に入れることができる。冷凍保存もできるため、大量に購入しても安心だ。数の子、スルメや昆布、野菜を使って自家製の漬物を作る家庭もあるほど。「小さいころから、いつも食卓にある身近な食べ物だ」「これさえあれば、何杯でもごはんが食べられる」という県民が多い。このように青森県民にとってねぶた漬®やつがる漬は、古くからごはんのおともとして身近な存在であり、これからも欠かすことのできない食材であると言っても過言ではない。

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【秋レシピ】管理栄養士が教える!サバの水煮缶で作る『サバのソフトふりかけ』


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