日本酒だけではない。お米から生まれるいろんな酒の話 ④東南アジア米酒巡り

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泡盛・米焼酎、紹興酒、マッコリの順に比較的メジャーなお米生まれの酒を取り上げてきたが、稲作文化圏の東南アジア各地には、知られざるお米生まれの酒が庶民の暮らしの中に息づいている。シリーズの最後は、そんなお米由来の酒をいくつかご紹介することにしよう。

 

タイには泡盛のルーツと言われる酒やお米のウイスキー(?)が

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泡盛の原料がタイ米であることはシリーズ①で軽く触れたが、その泡盛のルーツと言われている酒が、同じくタイ米を原料とするタイの蒸留酒ラオ・カーオである(タイ語でラオは酒、カーオは米)。田舎の冠婚葬祭などに欠かせない庶民の酒で、アルコール度数は28〜40度。無色透明ながら香り・味共に少々クセが強いため、各種薬草を原料とするヤードーンという赤い添加物を混ぜて飲むのが一般的だ。滋養強壮・精力増強に効果があるとされるヤードーンは、タイではスーパー等で手軽に買えるので、効き目に興味のある方はラオ・カーオとセットでどうぞ。

その他タイには、もち米とサトウキビを主原料に、ハーブやスパイスで香りを付けた通称タイ・ウイスキーがある(分類上は焼酎)。ほんのり甘みがあって、タイ好きで知られる秋篠宮殿下が、初めてのタイ旅行で出会って以来大好きになってしまったとのこと。『メコン』『センソン』『リージェンシー』等が代表銘柄である。

 

お米生まれのベトナムウォッカはエスニック料理と相性抜群

ベトナムにもお米を原料とする蒸留酒(ベトナムウォッカ)がある。最も有名なのが、古代米の黄色もち米を原料とする『ネプ・モイ』(ベトナム語でネプはもち米、モイは新しい)。シナモン、ココナッツ、ウイキョウ等を加えた麹で発酵させるため、無色透明ながらナッツやバニラのような甘い香りが特徴的だ。アルコール度数は40度。後味が程よくさっぱりしているので、スパイスの効いたエスニック料理と相性が良い。

また、うるち米を原料とする『ルア・モイ』もベトナムで人気の蒸留酒である(ルアは稲の意)。無色透明で飲み口はほんのり甘く、度数は45度と高め。ソーダ割りやフルーツを使ったカクテルベースとしてオススメだ。

少し変わっているのが、赤もち米で造った『ネプ・カム』である。東洋のシェリー酒の異名を持ち、赤い色と紹興酒のような香りが特徴で度数は29.5度。後味は意外にさっぱりしている。

これらの酒は米粉で作った麺料理のフォーや生春巻き等、お米を使った地元の名物料理と相性が良いのはもちろん言うまでもない。

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インドネシア、フィリピン、マレーシアなどのどぶろく色々

醸造酒に目を向けると、インドネシアにはブルムというライスワインがある。特に国際的なリゾート地・バリ島産の『ブルムバリ』は、バリ土産の定番として空港等でもよく見かける。黒もち米を原料に使っているため見た目は赤ワインより紫がかっており、ポートワイン(ポルトガル産の甘口ワイン)に似た甘味と酸味のある味わいが特徴である。

 

では最後に、東南アジア各国で造られているお米生まれの醸造酒(どぶろく)をいくつかご紹介してこの項を締めくくるとしよう。

・タプイ(フィリピン):ルソン島北部の一般家庭で造られる、炒り米を原料とした甘口の酒。度数は12度前後。

・タパイ(マレーシア/インドネシア):うるち米で造る度数20度前後のやや黄味がかった自家製酒。液化が進む前の固形の段階でスナックとして食されることも多い。

・サト(タイ):タイ東北部の農村で広く造られている、もち米を原料とする酒。甘味が強く度数は12度程度。蒸留すると上述のラオ・カーオになる。

・チャン(ネパール/インド):お米や麦等を原料に、各家庭で造られる度数5%前後の酒。乳白色でとろみがあり、程良い酸味と甘みですっきりとした飲み口が特徴。

その他黒もち米を使うラオスのラオ・ハイ、竹の筒を通して飲むベトナムのルオウ・カン 、マレーシアのイバン族が造るトゥアなど、お米を原料とする多彩な酒文化が各地域で根付いている。

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東南アジアでは、自家製の酒を許可なく売るのは違法だが、自分で楽しむのは問題ないという国が多い。そのため特に農村部では、それぞれの家庭にそれぞれの酒の味がある。主食としてのみならず酒造りの原料としても、お米は日々の暮らしの中に溶け込んでいるのだ。

 

参考サイト:


ライスワイン全般 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%B3
ラオ・カーオ(ラオ・ラーオ) http://soklek.sakura.ne.jp/hoshi-k/laokhao.htm
メコンウイスキー http://princeakishino.blog.fc2.com/blog-entry-53.html
ベトナムの伝統酒 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/108/8/108_583/_pdf
ベトナムのローカル酒 https://allabout.co.jp/gm/gc/448843/
ブルム http://rikastar.blog.fc2.com/blog-entry-945.html
タプイ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%97%E3%82%A4
タパイ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%91%E3%82%A4
ネパール チャン http://www.asahi.com/housing/world/TKY201111120246.html
ラオ・ハイ https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/95/3/95_3_193/_pdf
ルオウ・カン https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%AA%E3%82%A6%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%B3

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