味噌に酢・醤油にみりん、これらに共通するものはいったい何でしょうか。これらは昔からある日本の調味料、そして麹を使って作られる発酵食品です。麹と聞いたことはあっても、どんなものなのかよく分からないという方もいらっしゃると思います。麹ははるか昔からある日本人に欠かせない、または日本食には欠かせない大切な役割を果たしてきた貴重な存在なのです。今回はそんな麹のお話と麹を使った万能調味料をご紹介します。
麹とはそもそも何だろう?
麹とはカビの一種で『麹菌』『麹カビ』とも言われる微生物です。肉眼では見ることができないくらい小さい微生物のため実際に見ることは難しいですが、この麹菌があるからこそ味噌や醤油などの日本古来の調味料ができあがります。
この麹菌を米麹に増殖させたものを『米麹』と言います。その他にも麦麹・大豆麹などが代表的で、麹は穀物に麹菌を増殖させて作られます。これらの麹を使った酒造りは奈良時代の初期から行われていたという記述もあるそうです。
麹の酵素でより美味しい食材に
麹に含まれる酵素には食材の成分を分解し、消化・吸収を促す効果やお肉などを柔らかくし美味しいものへと変化させる作用があります。お肉に含まれるタンパク質、お肉が硬くなる原因はこのタンパク質が加熱によって固まってしまうためです。これを防ぐためにはタンパク質が固まらないようにすることが重要です。
そこで麹に含まれる酵素の出番。麹には30種類以上の酵素が含まれているといわれていますが、その中でもプロテアーゼはタンパク質を分解して「ペプチド」と「アミノ酸」に分けることができます。そのため加熱しても柔らかいお肉になるだけでなく、もともと硬いお肉も柔らかくする効果も期待できます。さらに、タンパク質が分解されてアミノ酸になったことでアミノ酸量が増え美味しさのアップにもつながります。このように、麹に含まれている酵素のお陰で、食材を美味しいものへと変化させる効果が期待できます。
麹菌がビタミン類を生成する?
麹菌が代謝される際にビタミンB1やナイアシン、ビオチンなどをはじめ多彩なビタミン類が作られることが分かっています。ビタミンB群は糖質やタンパク質、脂質などの代謝に関わる重要な栄養素であるため、その1つでも欠けてしまうと風邪などの感染症などにかかりやすくなったり、疲れやすくなったりしてしまいます。また、健康な皮膚を保つためにも重要になるため、美肌には欠かせない栄養素です。麹菌はこれらのビタミンB群を生成してくれる、私たちにとってとても心強い味方なのです。
◆簡単! 手作り塩麹
<材料>
米麹 200g
塩 60g(麹の30%)
水 300CC~500CC程度
※今回は乾燥麹を使用して作りました
<作り方>
① ボウルなどに米麹を入れ手でほぐす
② 塩を①に入れ、手もしくはスプーンなどで混ぜる
③ ②を清潔な保存容器に入れ、水を加えて混ぜる
④ 軽く蓋をしめ、常温で5~10日程発酵させる(毎日1度は混ぜましょう)
⑤ 味噌のような甘く芳醇な香りがしてきたら完成です
<ポイント>
1. 水の量は米麹の乾燥具合にもよりますので使用する米麹によって異なります。米麹がヒタヒタにつかるくらいを目安に入れてみてください
2. 仕込んですぐは米麹の中まで水分が浸透していないため、仕込んで数時間から半日したところできちんとヒタヒタに浸かっているか確認してみてください
3. 発酵するため、保存容器は少し大き目のものを使うことをオススメします
4. 発酵は通常常温で行いますが、真夏など室温が25度を超えると冷蔵庫に入れた方が安心です。その場合、発酵に少し時間がかかってしまいます
塩麹は鶏肉や豚肉などの下味をつける際にお塩の代わりに使うと、とても柔らかく美味しいお肉に仕上がります。その他にも、普段使っているお塩の代わりに是非塩麹を使って、いつもとは一味違ったお料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。
参考サイト:
東京大学 農学生命科学研究科 プレスリリース
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2011/20110829-1.html
参考資料:
『からだに「いいこと」たくさん 麹のレシピ』池田書店/おのみさ著(2010年)
文:カベルネmama
管理栄養士、食生活アドバイザー2級の資格を保持。保育園で献立作成や食育を担当していた経験を持つ。現在は幼い3人の息子の育児をしながらレシピ記事作成を行う。料理を作ること・食べることが大好き。子どもたちのため、栄養たっぷりで簡単に作れ、喜んで食べてくれるものを考案する日々を送る。