【季節の行事レシピ】管理栄養士が教える「入梅の時期に欠かせない『梅仕事』」

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田植えの時期を今か今かと待っているような水田が、あちらこちらに現れるこの時期。新暦の6月5日頃〜6月20日頃は、二十四節気の「芒種(ぼうしゅ)」にあたります。「芒(のぎ)」とは、稲や麦などの穂先にある硬い針のような突起のことを意味し、文字が表すように「芒を持つ植物の種を撒く時期」とされています。地域によってはすでに稲の田植えは終わっている所もあるかと思いますが、この時期は昔から農家にとって大事な「梅仕事」がはじまる時期としても覚えておいて欲しい季節です。

 

古くから人々の生活に息づく芒種の七十二候とは?

“二十四節気”とは半月毎の季節の変化を表しますが、これをさらに「初候・次候・末候」と約5日おきに分けて気象の動きや動植物の変化を知らせるのが七十二候。二十四節気と同じく七十二候も古代中国で作られました。二十四節気は古代のものがそのまま使われているのに対し、七十二候は何度も変更されてきており、現在主に使われているのは明治時代に改訂された「略本暦」。七十二候を知ると、日本の美しい風土や人々の些細な習慣など、繊細な季節の移ろいを感じることができます。

芒種の初候は「蟷螂生ず(かまきりしょうず)」。カマキリが卵から孵化し生まれる頃を表します。カマキリは、稲や野菜に手をつけず害虫を補食してくれると、昔から“益虫”とされていたのです。次候は「腐草蛍と為る(ふそうほたるとなる)」。きれいな水辺に棲む蛍が、あかりをともして飛び交う頃。昔の人は腐った草が蛍に生まれ変わると信じていたとか。末候は「梅子黄なり(うめのみきなり)」。梅の実が熟して色づく頃を表します。この頃、雨がしとしとと降り続ける梅雨の季節にも入ります。土壌にとっては恵みの雨。育てた苗が育ち、田植えが忙しくなる頃ですが、それと同時に忙しくなるのが、梅干しなどを作る梅仕事。今回は「梅子黄なり」にちなんで梅干しの健康パワーと、基本的な梅干しの漬け方についてご紹介します。

 

梅干しパワーで美腸に

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梅干しに含まれる酸っぱい成分、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸には整腸作用があることが広く知られています。腸が健康であれば、便は腸に長くとどまらずに排泄されます。しかし、運動不足や乱れた食生活などの影響で腸内に便が長くとどまってしまうと、便秘や下痢などの原因になることも。腸内に便が長くとどまることで悪玉菌が便を腐らせ、滞留便やガスなどの老廃物がたまります。このような老廃物がたまってしまうと悪玉菌はさらに増えて、便秘や下痢を繰り返したりお腹が張ったりと、腸の機能低下につながってしまいます。

梅干しは腸内で増殖する悪玉菌を抑える作用に加え、蠕動(ぜんどう)運動を促進し便秘や下痢改善への効果が期待できます。腸の蠕動運動は朝が一番活発なこともあり、朝梅干しを食べることでより一層の効果を期待できますよ。朝に1粒の梅干しを食べることを習慣にし、美腸を目指しましょう。

 

◆基本の梅干しの作り方

<材料>

黄色に熟した梅         2kg

塩(梅用)           360g(梅の18%)

赤紫蘇(茎などを除いた量)   300g(梅の15%) ≪10~20%の間お好みで≫

塩(紫蘇用)          54g(紫蘇の18%)

焼酎(消毒           少々

 

<道具>

下漬け用の容器(ホウロウ・ガラス・陶器製のもの、また食品用ビニール袋でも◎)

重石(梅と同じ重さ[水を入れたペットボトルや水を入れたビニールでも可

落としぶた(平たいお皿でも代用可能ですが、下漬け用容器と同等の大きさ)

大きなボウルなどの容器(赤紫蘇をもみ込む用)

土用干し用のザル

出来上がった梅干しの保存容器

 

<作り方>

◎梅の下漬け

① 梅は水でざっと洗い、1つずつ丁寧にふいて水気を除く

② 梅のヘタを竹串や爪楊枝でとる
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③ 漬けこむための容器に少量の焼酎を入れて容器の中をすすいで消毒する
(食品用ビニール袋の場合も同じように焼酎で消毒しましょう)

④ ③の容器の底がうっすら隠れるくらいに塩をふる

⑤ 梅を一段並べ、その上に塩をふる

⑥ 塩と梅を交互に重ねていき、梅を入れ終わったら残った塩を最後にふる
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⑦ 落としぶたをして上に重石をのせて冷暗所におく

⑧ 少しずつ梅酢がでてくるので時々容器をゆすりながら様子をみる

⑨ 数日~1週間くらいで透明の梅酢があがってくるため、梅がしっかり梅酢に漬かっている状態を保つ(その後もカビがなえていないかチェックする)
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◎赤紫蘇の準備(梅酢が十分に上がってきた頃)

⑩ 茎などを除いてしっかり洗ってザルに上げて半日ほどおき、ある程度水気が乾くまでおいておく
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⑪ 大きなボウルに赤紫蘇を入れ、塩の半量を加えてしっかりもみ込み灰汁を出す
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⑫ 赤紫蘇を絞って出てきた灰汁は捨て、絞った赤紫蘇に残りの塩を加えてさらにしっかりともみ込んできつく絞り灰汁を捨てる

⑬ ボウルに絞った赤紫蘇を入れ、下漬けで出てきた梅酢を200ml加えてもみほぐし、梅酢に色を移す

⑭ 赤紫蘇を下漬けした梅の上に広げ、赤く染まった梅酢も一緒に加える

⑮ 容器を傾けて全体になじむようにする

⑯ 落としぶたをして梅がしっかり漬かる程度の重石をのせ、冷暗所で土用の頃(7月20日頃)までおいておく

    ※あらかじめ下ごしらえした赤紫蘇も売られているのでそれを購入しても◎

 

◎土用干し

⑰ 梅雨が明けるのを待ち、晴れの続く日を見計らって『三日三晩の土用干し』を行う

⑱ 大きなザルに梅同士がくっつかないように並べて日当たりのよいところにおく(この作業を三日繰り返します)赤紫蘇もしっかりしぼって一緒に干しましょう
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土用干しが終わったらいよいよ梅干しの完成です。そのまま保存する方法と梅酢に戻して保存する方法があります。そのまま保存すると色は控えめですが酸味がきつすぎない味に、梅酢に戻して保存すると色鮮やかになり果肉がみずみずしく酸味が強い梅干しになります。それぞれお好みでどうぞ。すぐに食べることもできますが、時間が経過するごとに塩味や酸味が落ち着いてより美味しく食べることができます。土用干しは三日三晩を言われますが、自分の好きなかたさになるまでで大丈夫です。手作りだからこそ自分好みの梅干しに。梅が出回るこの時期に『梅仕事』してみませんか。

 

参考サイト:

七十二候|暮らし歳時記 http://www.i-nekko.jp/meguritokoyomi/shichijyuunikou/

参考文献:

『日本の七十二候を楽しむ』東邦出版

『日本の365日を愛おしむ』東邦出版

『暮らしのならわし十二か月』飛鳥新社

 

文:カベルネmama

管理栄養士、食生活アドバイザー2級の資格を保持。保育園で献立作成や食育を担当していた経験を持つ。現在は幼い3人の息子の育児をしながらレシピ記事作成を行う。料理を作ること・食べることが大好き。子どもたちのため、栄養たっぷりで簡単に作れ、喜んで食べてくれるものを考案する日々を送る。

 

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