お米の味が生きている。深淵なるにごり酒の世界

「にごり酒は、どぶろく、清酒のどちらでしょうか?」ーーそんなクイズを出されたら、大半の人が「どぶろく」と答えるだろう。しかし、にごり酒はれっきとした清酒の仲間である。白く濁った見た目から、にごり酒とどぶろくを同類と思い込んでいた人も多いだろうが、酒税法上は全く別物だ。では、濁っているのに清酒とはこれ如何に? というわけで、その辺りの疑問を糸口に、深淵なるにごり酒の世界へとご案内しよう。

 

濁っていても漉せば清酒、漉さなければどぶろく

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酒税法上の定義によると、清酒とは「米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、漉したもの」とされている。要は、醪(もろみ)を漉す工程があるか否かが分かれ目となる。そして、現在にごり酒として市販されているものは全て漉す工程を経ているため、清酒の一種として分類される。反対にどぶろくは漉さないため「その他の醸造酒」に分類される。つまり清酒という呼称は、酒の色や透明度とは無関係ということだ。


では、どうしてにごり酒は白く濁っているのか。布目の粗い酒袋で漉すことにより、酒粕部分を全て取り除かずにあえて残しているためである。それらは「澱(おり)」と呼ばれ、原料米、米麹やその分解物、酵母などで構成されている。つまり白濁した澱は、元をたどればお米そのものであり、お米由来の旨味をより色濃く味わえるように造られた酒がにごり酒なのである。

 

にごり酒はどぶろくか否かで国税庁と激しいバトル

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1899年に自家醸造が法律で禁じられて以来、どぶろく造りは一部の神社を除いて違法となり、酒造りの表舞台からは完全に姿を消した。それを1966年に「大極上中汲にごり酒」という形で蘇らせたのは、340年以上の歴史を持つ京都伏見の清酒『月の桂』の13代蔵元・増田徳兵衛である。

徳兵衛は、目の粗いザルで漉すという奇策を編み出した。漉せば清酒に分類されるという法の隙を突いたのである。しかし清酒の酒税は「その他の醸造酒」よりも低いため、にごり酒はどぶろくか否かを巡って国税庁と激しい議論が繰り返された。そして最終的には、酒を漉す網目の大きさなどにごり酒の定義を2年かけて検討し、ようやく清酒として認められることになった。これを機に全国の酒蔵が、どぶろく風のにごり酒を造れるようになったのである。


様々なバリエーションを楽しめるのがにごり酒の魅力

にごり酒の味わいは、「お米そのものの味が生きている」ことに尽きる。基本的に透明感のあるすっきりした飲み口の清酒に対し、にごり酒はまったりと濃厚なのが特長だ。また、種類が豊富でそれぞれ風味が異なるため、好みの一本に巡り会えた時の喜びは格別である。


にごり酒はまず、搾りたてをそのまま瓶に詰めた生タイプ(活性タイプ)と、加熱により発酵を止め酒質を安定させた火入れタイプの2種類に大きく分けられる。生タイプは瓶の中で発酵し続けるため、シャンパンのような刺激的な飲み口が楽しめる。ただし味の変化や傷みも早く、瓶が割れたり開栓時に噴きこぼれたりもするので、流通や管理には細心の注意が必要だ。


そして澱の残し具合によってもバリエーションがある。どぶろくに近い白濁タイプはそのままにごり酒と呼ばれるが、その他にも、白い澱がたっぷりと瓶の底に沈殿した「おりがらみ」や、澱がうっすら残る程度の「ささにごり」「うすにごり」などがある。飲む際は、瓶を軽く振って底に溜まった澱を混ぜ合わせて飲むも良し、上澄みだけを楽しんでから、後で濃厚な澱の部分を楽しむもまた良し。さらにはロックにしたり、炭酸水で割ったり、柑橘類を搾ったりと、楽しみ方は飲み手次第である。

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「白河の清きに魚の住みかねてもとの濁りの田沼恋しき」という江戸時代の狂歌がある。賄賂政治で悪名の高い田沼意次が失脚し、白河藩の藩主松平定信が老中となって寛政の改革を推し進めた際、窮屈な世を憂いた庶民が田沼時代の「濁り」を懐かしんで詠んだ歌だ。
澄んだ酒はもちろん旨いが、濁った酒もまた乙なもの。ぜひ「清濁併せ吞む」広い心持ちで、にごり酒の奥深い味わいを楽しんでいただけると幸いである。

参考サイト:
酒税法における「清酒」の定義|国税庁
https://www.nta.go.jp/about/council/sake-bunkakai/021127/shiryo/07a.htm

「にごり酒」の飲み方とおすすめの逸品紹介 - macaroni
https://macaro-ni.jp/32993

KURAND(クランド)
https://kurand.jp/21413/

夏に飲むべき日本酒は濁り酒のワケ| 日刊SPA!
https://nikkan-spa.jp/1356856

「元祖」にごり酒で清酒の新ジャンルを開拓|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
http://j-net21.smrj.go.jp/expand/shigen/jirei/masuda.html

どぶろくらぶ
https://doburoku.biz/doburoku/

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/田沼時代#当時の認識・評価

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