日本人の常識を覆す!タイ米の美味しい炊き方と味わい方

 

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食の多様化が広まり、世界で最も幅広いジャンルの料理を味わえる日本。ただ、主食である『米』についてはどうだろうか。もちろん、日本米は美味であり、日本人の味覚にも最も合っている。それは間違いない。しかし、世界には日本米以外にもさまざまな米があり、それぞれが独自の美味しさを持っている。例えば、タイ米。1993年の米の大不作によって、大量に輸入されたタイ米。その時の悪いイメージを、未だに引きずっている人も多いのではないだろうか?しかし、実はタイ米はとても美味しい米の一つなのである。そこで今回は、タイ米に抱くマイナスのイメージを払拭すべく、日本人が知らないタイ米の魅力と、その味を最大限に引き出す最善の炊き方をご紹介したい。

 

そもそもタイ米の魅力とは?

 日本米とタイ米は、そもそも全く違う種類の米である。日本米は“ジャポニカ種”といわれ,日本以外でもアメリカやオーストラリアなどで栽培されている。米粒は中粒もしくは短粒で、粘り気が強いのが最大の特徴だ。一方、タイ米は“インディカ種”という品種で、米粒は細長く、“ジャポニカ種”とは異なり粘りはなく、パサパサとした食感を特徴とする。

タイ米はアジア全域で広く栽培されており、実は世界的に見ると、生産されている米のうち80%がこのタイ米。つまり、世界で最も食されている米なのだ。実際にタイのスーパーに行くと、多種多様なタイ米が売られているのを見て驚くだろう。特に“ジャスミン米”と呼ばれる米は香り米とも言われ、炊いている間にトウモロコシのような穀物を思わせる香りを漂わせる(ジャスミンのような香りがするわけではなく、ジャスミンのように香りが強いからその名がついた)。

このように、日本米とタイ米は異なる品種の米であり、その魅力も全く異なるのだ。それゆえ、タイ米を日本米と同じように炊いても美味くはないし、日本米と同じ美味しさを求める方が無茶とも言える。その辺の事情を知らないために、タイ米の美味しさが実際にはよく知られていない、と言うのが日本での実態ではないだろうか?では、タイ米を美味しく炊くには、どうすれば良いのだろうか?

 

実践!タイ米を美味しく炊く『湯取り法』とは

日本米とタイ米が全く違うものであることは、述べた通り。そして実は、炊き方も全く異なるのだ。それが『湯取り法』と呼ばれる炊き方である。まず、鍋に水をたっぷり張って沸かしていく。水の量については特に気にしなくてOK。この辺からして、すでに日本米の炊き方とは全く違うことが分かるだろう。

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お湯が湧いたら、必要な分のタイ米を投入する。まさに日本人の常識を覆す炊き方だ。米が焦げ付かぬよう、軽くかき混ぜながら7~8分ほど煮ていく。そう、“炊く”のではなく、“煮る”のが正しいタイ米の調理法なのだ。

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味見をして、少し芯が残る『アルデンテ』のような状態になったら一度火を止め、お湯を切る。再度火をつけ、今度は弱火にして鍋に残った水分を飛ばしていく。米がパチパチという音を出したら火を止めて蓋をし、10分ほど蒸らせば完成だ。

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こちらが炊き上がった(茹で上がった?)タイ米だ。

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食べてみると、日本米のような香りや旨味はあまりなく、あっさりとした味わい。一方で、大量のお湯で炊くためか、パサパサとした食感もそれほど気にならず、むしろタイ米が持つ優しい味わいに新鮮な驚きを感じるだろう。

以上が、タイ米の本来の美味しさを最大限に引き出す『湯取り法』という炊き方だ。もし炊飯器で炊く場合は、軽く水洗いしたあと(糠がないため日本米のように研ぐ必要はない)、米に対して1.5倍程の水を加えて十分に浸水させた後に炊き上げると、『湯取り法』で炊いた時と近い味わいを得られる。しかし、タイ米の美味しさを真に発揮するのは、何と言ってもおかずと一緒に食すときだ。

 

タイ米をより美味しくするオススメのおかず

 本場タイでは,ご飯を日本のように茶碗によそって食べるようなことはしない。平皿に盛り、その上におかずをのせて食べる、『おかずのせご飯』が定番だ。

taimai5日本米と違って米自体の水分量が少ないため、おかずの汁気を米の一粒一粒が吸い込んで、素晴らしい美味しさになる。日本でもおかずを一度ご飯に乗っけて食べる、いわゆる『ワンバン』派も多いが、それをさらに美味しくした味わいといえば分かりやすいだろうか。何しろ米自体がおかずの美味しさを吸収するのだから、まずいはずがない。それゆえ、タイのおかずはどれも汁気が多く、感動的なほどタイ米に合う。日本では“チンジャオロースー”や“ホイコーロー”など、中華系の濃い目の味付けの料理がよく合うだろう。もちろん、水分が少ない米の特性を活かしてチャーハンにしても最高だ。ぜひ一度、美味しいタイ米を味わっていただきたい。

日本人にとって、一番美味しいお米が日本米であることに間違いはない。無理して日本米をタイ米に切り替える必要も全くない。しかし、料理に合わせて日本酒にするか、ワインにするか考えるのと同じように、その日のおかずに合わせてタイ米を食べる、という習慣を取り入れれば、日本の食卓の豊かさはさらに広がるのではないだろうか? 日本米だけを食べるのは、あまりにももったいなさ過ぎる。世界にはタイ米のように、日本米とは異なる美味しさを持つお米も存在するのだから。

 

文:dctyk
タイ在住のライターで、日本にも拠点を持つ。日本とタイを行き来しながら、タイの食文化を探る日々を送る。タイ人直伝の米の炊き方を元に、湯取り法にたどり着いた。お酒に関する造形も深い。

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