何を調べる? 何が分かる? お米の『品種鑑定』のはなし

「ブランド米に別品種のお米が混入していた」というニュースが時おり世間を騒がせる。平成27年に施行された食品表示法により、販売するお米には原料玄米の品種などの表示が義務付けられているが、それを遵守せず利益を求める業者などが存在するのが現実だ。そのため、近年はお米の品種鑑定が頻繁に行われるようになっており、悪質な業者の摘発が進んでいる。異なる品種の混在はどのようにして調べられるのであろうか?

 

お米の品種鑑定ではDNAを調べる

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言わずもがなであるが、お米は玄米や精米の状態になるとその品種の見分けが困難になる。多少の形の違いがあっても、1粒1粒を見て数百の品種から当てはまるものを言い当てられる人はまずいないだろう。

お米の品種鑑定に利用されるのは、品種ごとのDNAの違いである。遺伝情報をコードする塩基配列のわずかな差異。それを検出する方法がいくつも開発されており、昔に比べれば費用も安価になっている。ブランド米の偽装問題や、消費者の食に対する意識の向上が、品種鑑定の重要性をどんどん高めてきたのだ。

品種鑑定を請け負うのは基本的に民間の分析会社である。会社によって精度が異なるともいわれているが、各社が行う分析は『定性分析』と『定量分析』の大きく2つに分けられる。

 

定性分析とは

『定性分析』とは試料中に含まれている成分を特定するための分析である。例えば、水道水を定性分析すると、H2O以外にもCl(塩素)やFe(鉄)などの成分が含まれていることが分かる。お米の場合は、『想定される品種以外の米粒が混ざっていないか』を調べることができる検査だ。例えば、コシヒカリと思われる米粒を定性分析にかけることで『コシヒカリ以外の成分は含まれていなかった』か『コシヒカリ以外の成分が含まれていた』という結果を受け取ることになる。

検査の際には数百グラムの米粒(精米や玄米、炊いたお米など)が必要になる。試料が均一になるよう粉砕されたお米からDNAを抽出し、DNAの増幅を行ったのちに分析機器にかけることが多い。分析方法は会社によって様々だが、1回の分析にかかる費用は1万~2万円ほどだ。

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定性分析では目的以外の成分(品種)の有無を確認できるが、それぞれの成分がどのくらい混入しているのか? というところまではわからない。意図していない品種の混入が100中の10粒なのか、80粒なのかでは、想定される原因や対処方法が違ってくるだろう。また、混入の割合があまりに少ないと検出されないこともあるので注意したい。混入している成分の量を知るためには、次にご紹介する定量分析にかける必要がある。


定量分析とは

『定量分析』はその名が示す通り、試料中に含まれる成分の量(割合)を測定する分析である。お米を定量分析することで『お米1粒1粒の品種』が分かり、『○粒中○粒は××という品種だった』というように、混入している品種の量を知ることができる。サンプルのコメ1粒ずつから別々にDNAを抽出し、分析機器にかけることが多い。このような分析ができるようになったのは、米1粒からでもDNAを抽出する方法や、抽出したわずかなDNAを増やす技術が発達したおかげだ。


「はじめから定量分析にかければいいじゃないか!」と考える人もいるかもしれないが、ほとんどの場合、定量分析は定性分析よりも費用が高額になり時間もかかる。調べる粒の数(多くは20~25粒)だけ作業が多く、分析にもより高い精度を要求されるためだ。分析の手法や機械は会社によって異なるため価格には幅があるが、1つの試料から10〜25粒を抜き出して分析すると4万〜6万円ほどになる。
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各社は得られた分析結果とそれぞれの持つデータベースを照らし合わせ、該当の品種を見つけ出す。そのため、データベースにない品種が混ざっていた場合は品種不明、もしくは他の品種と誤判定される可能性がある。分析会社によって判定できる品種の数に違いがあるため、A社では判明しなかった混入品種がB社の分析では見つかった、ということも起こりうるのだ。各社は鑑定が可能な品種の一覧をもっているので、それを参考にしながら分析を依頼する会社を選ぶとよい。

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誠実にお米を生産・販売している農家からすれば、わざわざ高い費用を払ってお米の品種やブレンド量を証明するなどということは全くの蛇足に思えるかもしれない。しかしながら、ひとたび食品偽装のニュースがもちあがれば、消費者を安心させるため鑑定をせざるを得ない場合もあるだろう。今後、より簡便かつ安価な分析手法が発展することを期待したい。


文:小野塚 游(オノヅカ ユウ)
“コシヒカリ”の名産地・魚沼地方の出身。実家では稲作をしており、お米に対する想いも強い。大学時代は分子生物学、系統分類学方面を専攻。科学的視点からのイネの記事などを執筆中。

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