カリフォルニアのお米農家紹介1-パーク・ファーミング・オーガニックス農場-

 

今回を皮切りにいくつかカリフォルニアのお米農家を訪ね、彼らが取り組むお米づくりとそのやり方、農場の歴史や将来の目指すところなどをみなさんにご紹介したい。

 

北カリフォルニア有機栽培米づくりを先導する『パーク・ファーミング・オーガニックス農場』の成り立ち

『パーク・ファーミング・オーガニックス農場』は、1980年、オーナーのスコット・パーク氏が慣行農法でトマト栽培(加工用トマト)からスタートした。彼は20歳ぐらいまで、農業の経験がまったくなかったという。北カリフォルニア州のトマト生産は世界でも有数の産地であり、特に加工用のトマト生産は世界中の約80%以上のシェアを誇る。親友に誘われてトマトの加工に関わった彼は、品質の高いトマトがこれからますます需要が増えていくことに着目し、この業界の将来性に魅せられて自らが農家として生産に携わることを決意する。

慣行栽培を数年行う中で、化学肥料に頼る栽培に疑問を感じるとともに、圃場の土壌がだんだんと固く痩せていくようになり、土の本来の生産能力をダメにしてしまっているのではないか、と自問自答を繰り返した。また、思わぬ病害虫にも遭い、農薬を使えば使うほど圃場の生態系が保たれていないように感じた。そこで、1990年頃からカバークロップ(被覆植物)栽培を始めた。冬季にベッチなどのカバークロップを栽培し、夏季にはトマトやコーンなどの作物を生産するシステムに移行していったのだ。そうすると、土がだんだんと柔らかくなり、土壌水分が保たれて灌水する手間や回数が減少。これを機に1992年頃から農薬や化学肥料も使わない有機栽培に少しずつ転向していった。

パーク氏曰く、「化学肥料に頼っていたころに比べて、生産性は40%近く上がっている」という。また彼は「渡り鳥をはじめ、ザリガニなどの生き物が圃場に戻ってきた。圃場の土や周辺の生態系が多様になっていることで、作物生産が向上しているのは間違いない」と強調する。その後、およそ15年かけて26ヶ所に分かれている圃場をすべて有機栽培に転換し、現在は1,700エーカー(約690ヘクタール)のすべての圃場が有機認証されている。

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▲作業の準備をするスコット・パーク氏(左)

 

『パーク・ファーミング・オーガニックス農場』のお米づくり

パーク氏のお米づくりは、基本的に乾田直播栽培である。お米栽培を始めた当初は湛水直播方式も取り入れたが、オーガニック栽培には乾田直播方式の方が作業効率がよく、収量も上がっている。

今年のお米づくりは約250エーカー(約100ヘクタール)の作付面積で、短粒米と長粒米の2種類を栽培。短粒米の収量はおおよそ2~2.5トン/エーカー(おおよそ4.8~6トン/ヘクタール)である。今年は5月10日ごろ乾田に播種し、発芽後、約3週間してから湛水した。訪問した6月中旬には見事な水田になっていた。稲苗はおおよそ5~6葉で、かなり深水にしていた。パーク氏は「この時期は雑草管理のためにやや深水にする」とのこと。水深を測るメモリがついた棒には日付がいくつも書かれていた。

農場の倉庫にはすでに収穫用の大型コンバインが横付けされ、メンテナンスが始まっていた。10人の従業員を雇用し、それぞれが専門的知識や経験を生かして作業にあたっている。メカニック専門の方はトラクターやアタッチメントの整備に余念がない。パーク氏は彼らの資質と人柄もよく理解して、適材適所に作業を分担させるマネジメントにも優れていると思った。

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▲『パーク・ファーミング・オーガニックス農場』のお米圃場

 

パーク氏の農家としての誇りと展望

パーク氏は圃場の土を自分の子供のように気にかけ、世話している。彼の話を聞くにつれ、その思いがひしひしと伝わってくる。お米以外にトマト、コーン、小麦、豆類などをうまく転作しながら、カバークロップとの組み合わせで圃場の土をいかに生かせるか、圃場管理に余念がない。パーク氏曰く、「そのために毎日、全ての圃場を2回は見て回るんだ」とのこと。話す彼の顔が輝いて見えた。

パーク氏は、持続可能性を保つためには3つのEが大事になると語る。3つのEとはEconomy (経済), Environment(環境)と social Equity(社会的な公平性)で、これらのバランスがよくなることによって農業の持続可能性が保たれることになる。

具体的には農業経営において、やはり赤字続きでは成り立たないし、不要な圃場の開墾や化学肥料、農薬による周りの環境に影響することは改善しなければならない。そして農家も社会の一員であり、他の産業や消費者とも繋がっていることを意識しなければならない。公平に社会に認められ、評価されることが大事になってくる。従業員の報酬も労働に見合ったものでなければならい。取引される農作物もその品質に見合った市場価格であるべきだ。「これからはそういう3つのEを目標にやっていければすばらしいな」と、彼の笑顔がとても印象的だった。

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▲圃場の土を確認する パーク氏

 

文:madon
アメリカ 北カリフォルニア在住。オーガニックのお米づくりを中心にアメリカ米農家サポート、精米、お米分析などに携わる。目下、持続可能性農業について大学で学びながら奮闘中。

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