農作業中は特に注意! 心がけたい熱中症対策

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世界的にも高温が続く今年の夏。先の会見で気象庁が「これまで経験したことのない、命に危険があるような暑さ」「1つの災害と認識」と伝えたことからも、異例の暑さだということが分かる。

総務省消防庁発表の平成30年7月23日〜29日の救急搬送者数は、13,721人(速報値)。昨年の同時期が5,390人だったのに比べて倍以上にもなる。この期間、農・畜・水産作業を行っている人の搬送者数だけでも190人にのぼる。

毎日のように外やハウス内での作業が当たり前の農家にとっては、特に気を付けて欲しい熱中症。改めて、対策やその症状、熱中症になってしまった後のことについて確認したい。

 

 

 全国的にも増加する、熱中症による痛ましい事故

農林水産省調べによる農作業中の熱中症による死亡事故者数を年齢別に見ると、70〜80代が全体の約8割を占め、その発生場所別に見ると「田及び普通畑」で全体の70%が発生しているという。今夏の猛暑でも、農作業中の熱中症による死亡事故が相次いでいる。

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過去のケースでは、まだ暑さが本格的になる前の初夏の時期でも、農業経験歴50年のベテランであった60代男性がビニールハウス内で心肺停止の状態で発見され、病院に搬送されるも死亡が確認された。マルチ張りを行っていたそうだ。同じくビニールハウス内で80代、90代の女性が倒れており、死亡するという事例も。

8月某日、50代男性が暑い時間を避け、夕方から畑の除草作業していた所、熱中症で倒れ、翌朝畑内で倒れた状態で亡くなられていたことも。日頃から農業に従事し暑さに慣れていても、また十分な体力がある年代でも、起こりうることがあるのだ。

 

 

適度な休息と水分補給。服装にも気をつけて

農家の方には釈迦に説法にはなるが、第一に気温が高い日中の作業は避けたい。また、作業を行う場合は、のどが乾いていなくても定期的に休憩をとり、水分を補給しながら行う。目安は20分ごとに日影で休憩し、コップ1〜2杯程度の水分を摂取して欲しい。

大量に汗をかいた時は特に、塩分の入ったスポーツドリンクや経口補水液、食塩水などがベスト。作業の効率化よりも、水分補給が最優先だ。

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直射日光を遮るつばの広い帽子や、吸汗・速乾性のある素材の服など、汗を逃がしやすい涼しい服装を選ぶことも大事。作業場所には日よけを設けるのはもちろん、ハウスなど気温が上がりやすい場所では風通しを行い、熱がこもらないように。また、一人での作業中に熱中症になると、助けてくれる人がおらず重傷化する恐れも。できるだけ二人以上で作業し、無理はせずお互いの体調を確認し合いながら作業したい。

もちろん、日々の生活の中でも、寝不足や二日酔い、暑さによる食欲低下で栄養が取れていないのもいけない。体調不良の時には、暑い中ただ外に居るだけでも熱中症になる危険が高まるのだ。

 

 

「暑さ指数」を知って、事前にできる作業計画を

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この時期、天気予報でも度々耳にする「暑さ指数」という言葉。なんとなく、数字が高ければ危険なのかな、という印象だが、指数を知っているだけでも、注意すべきことが見えてくる。

「暑さ指数(WBGT)」とは、労働環境や運動環境の指針として有効であると認められ、ISO等で国際的に規格化されている。
*「暑さ指数」の詳しい説明はコチラをクリック

 

まず、自宅や作業場所の暑さ指数を知るには、環境省が発信している『熱中症予防サイト』をチェック。
ここを開くと、【暑さ指数(WBGT)の実況と予測】が出てくるので、地方・都道府県・地点が選択すると、自宅や作業地などの今日・明日・明後日の暑さ指数を知ることができる。

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基準として、31℃以上は「危険」、28〜31℃は「厳重警戒」、25〜28は「警戒」、25℃未満は「注意」となる。普段の生活においても、28℃を超える時には、熱中症にかかりやすくなるので、気を付けておこう。

では、暑さ指数を元に、作業内容のレベルを見て行こう。

★暑さ指数:33(暑さに慣れていない人は32)

作業例:安静(作業はしない)


★暑さ指数:30(暑さに慣れていない人は29)

作業例:楽な座位、軽い手作業(書く、縫う、簿記など)、手及び腕の作業(小さいベンチツール、点検、組み立てや軽い材料の区分け)、腕と足の作業(普通の状態での乗り物の運転、足のスイッチやペダルの操作)、小さい力の道具の機械、ちょっとした歩き(速さ3.5km/h)


★暑さ指数:28(暑さに慣れていない人は26)

作業例:継続した頭と腕の作業(くぎ打ち、盛土)、腕と足の作業(トラックのオフロード操縦、トラクター及び建設車両)、腕と銅の作業(中くらいの重さの材料を継続的に持つ作業、草むしり、草掘り、果物や野菜を摘む)、軽量な荷車や手押し車を押したり引いたりする、3.5〜5.5km/hの速さで歩く


★暑さ指数:25(暑さに慣れていない人は22)

作業例:強度の腕と胴体の作業、重い材料を運ぶ、シャベルを使う、草刈り、掘る、5.5〜7.5km/hの速さで歩く、思い荷物の荷車や手押し車を押したり引いたりする


★暑さ指数:23(暑さに慣れていない人は25)

作業例:最大速度の速さでとても激しい活動、激しくシャベルを使ったり掘ったりする、階段を上る、走る、7km/hより早く歩く

*上記は、日本工業規格Z8504(人間工学—WBGT(湿球黒球温度)指数に基づく作業者の熱ストレスの評価—暑熱環境)付属書A「WBGT熱ストレス指数の基準値表」から引用
*暑さに慣れていない人とは、「作業する前の週に毎日熱にさらされていなかった人」のことを指します

 

こんな時には、こういう対処を

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自覚症状としては、めまいやズキズキとする頭痛、吐き気やたちくらみ、倦怠感などが挙げられる。具体的な治療の必要性の観点から表した熱中症の重症度別に見てみよう。

 

重症度Ⅰ度
・手足がしびれる
・めまい、立ちくらみがある
・筋肉のこむら返りがある(痛い)
・気分が悪い、ぼーっとする
 →対処法:
  ・涼しい場所へ避難
  ・冷やした水分・塩分を補給
  ・自力で水分がとれなければ病院へ
  ・ 必ず誰かがついて見守る

 

重症度Ⅱ度
 ・頭がガンガンする(頭痛)
 ・吐き気がする・吐く
 ・体がだるい(倦怠感)
 ・意識が何となくおかしい
 →対処法:
  ・涼しい場所へ避難
  ・衣服をゆるめ、体を冷やす
  ・冷やした水分・塩分を補給
  ・足を高くして休む
  ・自分で水分など摂れない時は、すぐに病院へ

 

重症度Ⅱ度
 ・意識が無い
 ・体がひきつける(けいれん)
 ・呼びかけに対して返事がおかしい
 ・まっすぐに歩けない・走れない
 ・体温が高い
 →対処法:
  ・すぐに救急隊を要請(救急車を呼ぶ)
  ・氷や水で首、脇の下、足の付け根などを冷やす

 

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今回参考にしたのは、環境省、農林水産省、厚生労働省が出している熱中症に対する対策。ぜひ、以下のサイトから確認をして、今一度熱中症対策を見直し、暑い夏を乗り切って欲しい。

●環境省 
熱中症予防サイト
暑さ指数の検索や、熱中症の基礎知識や応急処置について詳しく説明。各種ガイドラインやリーフレット(普及啓発資料)のダウンロードもできるので、印刷をして常に手元に置く、視界に入る場所に貼るなど、熱中症に対する意識を高めて。

熱中症予防声かけプロジェクト〜ひと涼みしよう〜
お年寄りや子どもへの声かけ、働いている時や運動時の注意など、さまざまなシーンに合わせた熱中症予防について、分かりやすく解説。

 

●農林水産省
農作業時の予防チェックシート
農作業に出掛ける前に確認したい項目がズラリ。毎日の習慣に。


平成28年農作業中の熱中症対策について
データ自体は2016年当時のものになるが、気温の変化や農作業中の熱中症事故についてなど、参考にしたい。


●厚生労働省 
STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(職場における熱中症対策)
平成30年5月〜9月に実施されているキャンペーン。事業所等職場に置けるる熱中症対策についてその徹底を呼びかけている。

パンフレット「熱中症を防ごう!」
職場に置ける熱中症予防対策について、作業環境管理や健康管理、応急処置等について説明。

 

参考資料:
総務省消防庁 熱中症情報 救急搬送状況(平成30年7月23日〜7月29日)
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/heatstroke/pdf/300723-sokuhouti.pdf

農林水産省 農作業中の熱中症対策について(平成30年度通知文)
http://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_kikaika/anzen/attach/pdf/index-64.pdf

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