光合成細菌で世界を幸せに!大学発ベンチャー『Ciamo(しあも)』の取り組み

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皆さんは、光合成細菌をご存知でしょうか?田んぼの中にも存在する光合成細菌は、稲作農家のとっては身近な存在かも知れません。光合成細菌を利用して新たなビジネスを展開する株式会社Ciamoの古賀碧さんに事業や光合成細菌のことについて教えていただきました。
Ciamoのオフィスがあるのは、なんと、崇城大学(熊本県熊本市)の学内。Ciamoは、大学発のベンチャー起業としても注目を集めています。

 

故郷への想いと光合成細菌

古賀さんは、崇城大学大学院修士課程2年生です。大学へ通うために故郷を離れることになった古賀さんは、住んでいた頃にも増して故郷への思いが強くなったと言います。古賀さんが育った熊本県の球磨人吉地方は、球磨焼酎の名前で知られる米焼酎の産地。「ずっと焼酎の蔵元で働きたかったんです」と語る古賀さんは、小さな頃から近所にあった酒蔵へ遊びに通っていたそうです。古賀さんが大学2年生の時に崇城大学で起業部(SOJO Ventures)が創設されると、「故郷のために何かしたい」と入部。起業部で古賀さんは、球磨焼酎の新たな商品開発とブランディングを手掛けました。この活動を通して、焼酎粕の廃棄が課題となっていることを古賀さんは知りました。製品の約2倍の量が排出されると言われる焼酎粕は、腐敗しやすいため長期保存が難しく、ほとんどが海へ放棄されていました。しかし、環境汚染の懸念があることから、現在は全量陸上処理する努力がなされています。古賀さんは、大学で研究していた光合成細菌に着目し、焼酎粕の培地で光合成細菌が増やす研究を始めました。培養に成功すると、古賀さんは、研究だけに留まらず、焼酎粕を活用した光合成細菌の普及を図るため事業化。2018年4月23日に株式会社Ciamoを創業しました。

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光合成細菌は水田で使うのがおススメ

光合成細菌は、水田やドブ、池などの有機物と水が溜まるところに多く存在するといいます。光合成は、太陽の光エネルギーを利用して炭水化物を作る反応です。植物が二酸化炭素を使う代わりに、光合成細菌は硫化水素やアンモニア、メタンを使います。酸素の少ない状態で有機物が菌によって分解されると硫化水素が発生します。田んぼで起こる『ガス沸き』現象は、硫化水素が発生したことが原因です。硫化水素はイネの根に害を及ぼしますが、光合成細菌の多い土壌では、細菌が硫化水素を利用するため、イネへの害が出にくくなります。また、光合成細菌は窒素固定を行い、菌体自体にビタミン、アミノ酸を含むため、土壌の肥料分を補うことも期待できます。光合成細菌は、水田の土壌を改善に多面的に利用できる優れた菌なのです。
古賀さんに使い方について尋ねると、「光合成細菌は、完全な湛水状態でなくても、湿ったような条件のところなら棲みつくことができます。水稲では水口処理、野菜や果樹では葉面散布が効果的です。乾燥した畑でより効果を発揮させたい場合は、湛水期間中に光合成細菌を増殖させておくと良いです。水田では、光合成細菌が増殖しやすいため、菌の特性を最大限活かすことが出来ます」と教えてくれました。

【水稲での光合成細菌の使い方と効果】
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参考:「小林達治先生に聞く 光合成細菌は好気性菌との共生で力を発揮する」『現代農業』2008年8月号,P72,農文協

 

フラスコから世界へ

「焼酎粕で培養すれば、これまで高価だった光合成細菌を安価で提供できて、手軽に光合成細菌を使ってもらえます。焼酎粕がたくさん利用されれば、焼酎の蔵元にも貢献出来ます。光合成細菌を葉面散布で植物に与えると植物自体の免疫力が向上することが分かってきています。光合成細菌を栽培に利用することで、肥料や農薬の使用を減らすことが可能です。そうすれば、食の安心安全にもつながると思っています」と、古賀さんは今後の事業に期待を寄せます。
「現場の農家から教えられることも多い」という古賀さんは、現場へ出向いて生産者の話を積極的に聞いているそう。「土地には、その土地の水にあう菌がいるはすだ」と教えられたのも生産者から。以後、各地の土壌を採取し、地域専用の光合成細菌を保持して提供しています。
光合成細菌が活躍出来る場面は、農業以外にも広く、古賀さんは、クルマエビの養殖での研究に力を入れています。現在の研究のテーマは、光合成細菌を与えることで起こるクルマエビの免疫力の向上について、遺伝子解析を用いて検証することです。成功すれば、海老の輸出量の多いインド、ベトナム、インドネシアを中心とした海外へも事業は展開されていくそうです。「ひとつのフラスコの中で起きていることが、新たな発見や新たな幸せの芽吹きにつながっていきます。この幸せの赤い糸で結ばれたようなつながりで、世界をもっと幸せにしたいです。これは社名であるCiamo(しあわをもっと→しあも)やロゴの由来にもなっているんです」と、古賀さん。故郷への想いから始った取り組みは、まるで菌が醸すようにワクワクと世界へ拡がっていきます。

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(おまけ)光合成細菌を培養してみました!

STEP1 こちらが光合成細菌の培養キット。赤い色が光合成細菌。茶色のものは、光合成細菌のエサとなる焼酎粕で作った培養液です。これに空のペットボトル(2L)と水を用意します
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STEP2 これらをペットボトルに下記の順番で入れて混ぜます
①エサ(茶色)→②水を半分くらい→③光合成細菌(赤色)→④水を少し隙間が残るくらいまで足す→⑤良く振る

STEP3 日光が当たるところに安置して、約1週間(1日1回振り、ガスを抜く)で赤色になれば培養成功です
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STEP4 これを種菌として、培養液1Lを加え、100Lへ培養して使用します

 

◆問合せ
株式会社Ciamoホームページ http://ciamo.co.jp/

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文:諸橋賢一

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