そうだったのか!?カリフォルニアのお米の品種 -日本のお米の品種との関わり-

 

アメリカ、カリフォルニアで栽培されているお米の品種にはどんなものがあるのか? 興味がある方もたくさんおられるのではないだろうか。今回は日本のお米の品種の系統も交えてご紹介したい。

 

カリフォルニアでの水稲品種の歴史

カリフォルニアでお米の栽培が始まったのは1909年ごろ。長粒米や短粒米など様々な品種が試験的に栽培されたようだ。中でも日本からの移民によって持ち込まれた“神力”(しんりき)や“渡船”(わたりぶね)(もともとは九州地方の酒米品種)が良好だったようだ。その後“渡船”から育種された“Caloro”が1921年ごろから普及し、1948年ごろにはこの“Caloro”を親として収量の高い中粒米品種“Calrose”(中生、長稈)が育成された。この“Calrose”は現在、カリフォルニアでの主要な中粒米品種の原点である。

その他、1950年ごろ,“Calrose“と“Smooth“(詳細起源は不明)という品種から“CS-M3”という中粒米品種が育成され、この“CS-M3”を親として“Kokuhorose”(国宝ローズ)なる独自の品種も生まれている。この“Kokuhorose”は日本から移民した国府田敬三郎(こうだ けいざぶろう)氏によって大量生産され、現在も彼の子孫による農場(国府田ファーム)で栽培されている。

また近年、日本の“コシヒカリ”から“Calhikari”と命名された短粒米品種も育成され、従来の“アキタコマチ”もそのまま導入されて栽培されてきた。ただ、“アキタコマチ”は残念なことに2017年をもって種苗市場から姿を消すことになった。これは強稈、短稈、早生、高収量を目的に品種改良が進み、それを望む農家の需要が増したことに起因する。収量が少なく、栽培しにくい“アキタコマチ”のような品種は敬遠された結果である。

カリフォルニアにおけるこのような水稲品種の育種は1912年ごろから組織化され、のちにCalifornia Cooperative Rice Research Foundation,Inc が設立。Rice Experiment Station と名づけられた研究施設をもつ。この研究施設はカリフォルニア州、Richvale(リッチベール)市に1500エーカー(約600ヘクタール)以上もの敷地を有している。毎年、所狭しとお米の試験栽培がなされており、アメリカの水稲栽培の発展に貢献し、現在も盛んに研究が行われている。

 

soudattanoka1Rice Experiment Station の試験圃場

 

カリフォルニアで育成されたお米の品種と分類

カリフォルニアのお米の品種名は比較的わかりやすい。長粒米はLongのL、中粒米はMediumのM、短粒米はShortのSがそれぞれ頭文字につく。また、一般に香り米と言われる長粒米品種にはAromaticのAで表記される。その他にも特殊なもの、“コシヒカリ”の改良品種は“Calhikari”、もち米の品種は“Calmochi”、アミロース成分の少ない改良品種は“Calamylow”という。いずれも短粒米品種である。またインド産の長粒米であるバスマティの改良品種は“Calmati“と呼ばれている。これまでに育成された品種はおおよそ40種類にもおよぶ。以下にそれぞれ代表的なものの分類と品種名を簡単にまとめてみた。


【短粒米品種】
“S-101”…… 開発年度:1988、品種特性: 早生、 “トヨヒカリ”を親にもつ。
“S-102”…… 開発年度:1994、品種特性: 極早生、“タツミモチ”を親にもつ。
“Calmochi-101”…… 開発年度:1987、品種特性:極早生、 “タツミモチ”を親にもつ。
“Calhikari-201”…… 開発年度:1999、品種特性:早生、“S-101”と“コシヒカリ”を親にもつ。

【中粒米品種】 
“Kokuhorose”…… 開発年度:1962、品種特性:晩生、“CS-M3”を親にもつ。
“Calrose 76”…… 開発年度:1977、品種特性:中生、“CS-M3”と“Calrose”を親にもつ。
“M-205”…… 開発年度:2002、品種特性:早生、“Calrose”を親にもつ。
“M-105”…… 開発年度:2013、品種特性:極早生、“Calrose 76”を親にもつ。

【長粒米品種】
“L-201”…… 開発年度:1979、品種特性:早生、“IR-8”を親にもつ。
“A-201”…… 開発年度:1996、品種特性:早生、“L-202”を親にもつ。
“Calmati-202”…… 開発年度:1999 早生 “A-201”を親にもつ。

soudattanoka2左から、短粒米のサンプル“S-102”、中粒米のサンプル“M-105”、長粒米のサンプル“A-201”


カリフォルニア産米の日本への輸出動向

カリフォルニア産のお米作付の約90%は、“Calrose”系の中粒米品種である。短粒米品種はほんの8%に過ぎない。この中粒米品種の市場を開拓すべく、日本を視野に入れた生産も試みられたようだ。しかし、1995年、WTO(世界貿易機関)協定、ウルグアイ ラウンド交渉の結果、日本向けに中粒米、短粒米の生産(年間約30万トン)を開始したが、2000年を機に日本での需要が伸び悩み、アメリカのTPP離脱によって先行きは不透明な状態である。

ご存じのように、日本人は国産のおいしい銘柄のお米を好む。カリフォルニア産の短粒米(コシヒカリ系)は主に日本政府の備蓄米や第三国への援助米となる場合が多いようである。また中粒米は一部では料理用に使われるようだが、通常は食品加工や飼料、ペットフードなどの原料になるのが大半らしい。しかし近年、日本食ブームによるアメリカ国内の需要も増えつつある。世界中でこの日本食ブームが盛り上がり、お米の需要が高まれば、安価なコストのカリフォルニア産米の流通が広がるかもしれない。日本のお米生産に携わる方々には是非とも頑張ってもらいたい、と思うのは筆者だけではないだろう。

 

文:madon
アメリカ 北カリフォルニア在住。オーガニックのお米づくりを中心にアメリカ米農家サポート、精米、お米分析などに携わる。目下、持続可能性農業について大学で学びながら奮闘中。

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