上手な情報発信の仕方とは? 「ファンをつくる」ことを大切に、アプローチは『北風と太陽』に学ぼう!

 

 「食べ方を知る、生き方を探す」をコンセプトに、九州の安心でおいしい食べ物を紹介している『九州の食卓』。創刊以来、確かな情報と丁寧な編み方で、着実にファンを増やし続けている季刊誌だ。これまでたくさんの農家を取材してきた発行・編集人、坂田圭介さんに「農家は情報発信も行っていくべきか」という質問を投げかけてみた。
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情報発信をする前に、自分ができることを明確にしよう

「それは難しい問題ですね。ケース・バイ・ケースで答えは変わってくると思います。ただし、行き着く先が“何でも屋”になるのは避けなくてはいけません。そうなってしまうと、本来の生産・栽培という部分が疎かになってしまうからです。ネットの更新、クレーム処理、商品の発送、パッケージの考案…、しなければいけないことに追われてしまい、本来の野菜作り・米作りに十分な時間を割けなくなってしまったら、本末転倒です」と坂田さんは注意を呼びかける。

 実際には情報発信を行うだけでなく、イベントを企画し、新しいことにどんどんチャレンジしている農家もいる。そういった人をモデルケースとして模倣していくことも手ではないだろうか。しかし、坂田さんの答えは「NO」。まずは自分の適正や向き不向きを明確にすることが先決だという。
 「確かに幅広いことに取り組んで結果を出している人はいますが、それは限られた人たちです。有機農家でも、本当に成功している人は、ほんの一部。そういう人たちは自分でセールスもセルフプロデュースもできるマルチプレイヤーなのです。一方、マルチプレイヤーではない普通の人の場合は、そううまくは行きません。作る人、売る人、流通を考える人みたいに分業してやっていかないと、全てをひとりで抱え込もうとしたら大変。向き不向きもありますから」。
 餅は餅屋。情報発信ができる人、パッケージデザインができる人など、それぞれの分野に長けた人と“つながる”ことが近道であり、リスクも少ないと言えそうだ。

IMG_7022.JPG坂田さんが手がけて来た季刊誌『九州の食卓』

情報発信の際は「売る」ことより「ファン作り」を重視

 その前提を踏まえたうえで、それでも情報発信を「できる」「やりたい」と思ったのであれば、ぜひチャレンジしてみてほしい。手軽な情報発信ツールであるSNSを利用する場合のアドバイスを坂田さんに聞いてみた。
「成功例と言えるか分かりませんが、『九州の食卓』でよく取り上げさせてもらっている鹿児島県垂水市の農家さんの話をご紹介します。その人たちは基本的にフェイスブックで情報を発信されていらっしゃいますが、とにかくファン作りがうまい。消費者と生産者が直接会えることが本当は一番良いのですが、鹿児島県垂水市は遠いので、気軽に行くことはできません。そこで、農家さんはあたかもそこへ行ったかのような疑似体験ができる情報を発信しています。それは売るための情報ではなく、何でもない日常を紹介したもの。“こんな人間が、こんな思いで農業をやっています”とか“たまには釣りに行きます”とか“家族で旅行に行きました”とか。それを読んでいくと、地方都市の山の中の暮らしぶりが伝わって来て疑似体験でき、感情移入していくのです。ある種、農家さんのファンみたいになっていきます。そうなると、もはや味とか農薬とか関係ありません。“その人が作っているものを食べたい”と思うようになりますから」。


表現は否定ではなく、温かい言葉で

 さらに、表現方法のコツについても分かりやすい例え話で教えてもらった。有名なイソップ寓話『北風と太陽』だ。
「“農薬が入っているものを食べると、アレルギーを発症するよ”、“食品添加物が入っているものは食べちゃダメ”といった否定的な言葉は、いわゆる北風。びゅんびゅんと風を吹かせてコートを脱がそうとしても、人間は身を固めてしまいます。それよりも“こうした方がおいしいよ”とか“家族がもっと健康で幸せになるよ”みたいな太陽のように温かい言葉の方が、人は自然とコートを脱いでくれる。つまり受け入れてくれるということです。マイナスなこと、警鐘を鳴らすみたいなこと、あるいは何かを否定・非難して自分の価値を強調するという論法はおすすめしません。理解はできるけど、購買行動にはつながらないと思います。プラスの温かい言葉で表現することが大切なのです」。

IMG_7029.JPG古民家をリノベーションした大津町の拠点で、編集プロダクション『ナインフィールド』と『九州の食卓』アンテナショップを展開している坂田さん。文字を通して、商品を通して、九州の食に関する情報を発信し続けている

坂田 圭介さん
『九州の食卓』(熊本県菊池郡大津町)発行・編集人
プロフィール:1961年生まれ。東京の出版社でマリン雑誌の編集長を務めた後、18年ぶりに地元・熊本へUターン。1999年に編集プロダクション『有限会社ナインフィールド』を設立、代表取締役となる。2009年3月に季刊誌『九州の食卓』を創刊、同誌発行・編集人を務める。趣味はボート釣り、カヌーの他、アウトドア全般。

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