セレクトに理由あり! 食の雑誌編集者が「取り上げたくなる商品」とは?

セレクトに理由あり! 食の雑誌編集者が「取り上げたくなる商品」とは?

 

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好きが高じて創刊。だからこそ、中途半端はナシ


 「食べ方を知る、生き方を探す」をコンセプトに、九州の安心でおいしい食べ物を紹介している季刊誌『九州の食卓』。その発行・編集人である坂田圭介さんは日々、食の情報にアンテナを張り、農家や生産者のもとへ足しげく通っている。
「今年で創刊9年目になります。始めたキッカケは、庭先での野菜作り。忙しくて趣味のアウトドアになかなか行けない状況が続いていた時に、“近場でアウトドアを”と、畑での野菜作りを始めました。すると、コレがとても面白くて。それから食への興味がいっそう強くなり、さらに自分が思う“大切な食”についての情報を伝えたいと考えるようになり、『九州の食卓』を創刊しました。好きで始めた本ですから、採算よりも内容を重視。きちんと読者の方を向いて、情報発信することをテーマにしています」。

 

生産者の「声」「思い」に耳を傾けることを大切に

 

 『九州の食卓』で取り上げる商品は、どのようにして選んでいるのだろうか。
 「いつもスタッフに言っているのは、“なるべくネットを頼るな”ということ。生産者に直接会い、話を聞くことを何よりも大事にしています。また、これまで取材させていただいた方々からの紹介も、間違いない情報源となっています」。
 ネット上にあふれている情報ではなく、生産者の声を第一に、取材対象をセレクトしてきた坂田さん。逆に言えば、生産者の顔が見えない、話が聞けない商品は、取り上げていないということだ。
 また、工場などで大量生産されるような商品ではなく、“手作り”“生産量が少量”という商品にスポットを当てているのも、同誌の特徴といえる。
「こんなに手間をかけている。こんなに思いを込めて作っている。何十年も続けている。そういった“作り手が大切にしているもの”を大事にしたいと考えています」。

IMG_7019.JPG『九州の食卓』編集部は、大津町にあるリノベーションした古民家内。ここには坂田さんが代表を務める編集プロダクション『ナインフィールド』と、『九州の食卓』アンテナショップも併設している

 

たどり着いた結論。「“おいしさ”に敵うものはない」

 

 生産者の“思い”を大切に、これまで数多くの商品を探し出し、紹介してきた坂田さん。しかしながら、その“思い”だけで商品を選ぶことはないという。「『九州の食卓』を8年続けてきて、つくづく思うのは、どんな理屈も“おいしさ”には敵わないということです」。
 坂田さんは、こんな実例を話してくれた。ある大学で、食物について学ぶ学生を前に講義をした時のこと。小ぶりの瓶で1500円ほどの醤油と、1ℓで200〜300円ぐらいの醤油の2種類を見せ、なぜ値段が違うのか、それぞれどんな作り方をしているのかを説明したという。
「学生はみんな“ふーん”という感じでした(笑)。でも、説明の後にそれぞれの醤油を小皿に入れて、匂いを嗅いで、舐めてもらったら“ぜんぜん違う!”と、みんなの表情がパッと変わりました。実体験に勝るものはありません。だからこそ、“おいしい”という実体験ができる商品だということが、何よりも大切なのです」。
 坂田さんの経験によれば、商品に関するこだわりを消費者へ説明すると、1回は“買ってみようかな”となるが、その購買意欲が2回、3回と継続していくことは少ないという。一方で、消費者が「おいしい!」と思って買った商品は、その後も購買意欲が続くことが多いそうだ。
「“味に触れる”という体験は、とても重要です。理屈より、実体験してもらう方が相手に何倍も響きます」。
 商品の良さをたくさん説明するよりも、まずは実際に食べてもらい、おいしさを実感してもらう。それが購入につながるいちばんの近道。だからこそ、試食を行ったり、イベントに出展するなどの“食べてもらう機会の創出”は、生産者にとって重要な販促活動のひとつになると言えそうだ。
「その際に、商品が特別である理由を伝えることも重要です。なぜこの値段なのか? その理由を消費者に理解してもらえれば、少し高くても納得して購入してもらえるはず。それをしっかりと伝えるためには、最初にお話しした“生産者の商品への思い”が欠かせないのです」。
 坂田さんが「取り上げたくなる商品」とは、特に背伸びをしたものでも、敷居が高いものでもなかった。「おいしくて、作り手の思いが伝わるもの」という、いたってシンプルなもの。その分かりやすさが、多くの読者からの共感を得ている秘密のように思えた。

 

坂田 圭介さん
『九州の食卓』(熊本県菊池郡大津町)発行・編集人
プロフィール:1961年生まれ。東京の出版社でマリン雑誌の編集長を務めた後、18年ぶりに地元・熊本へUターン。1999年に編集プロダクション『有限会社ナインフィールド』を設立、代表取締役となる。2009年3月に季刊誌『九州の食卓』を創刊、同誌発行・編集人を務める。趣味はボート釣り、カヌーの他、アウトドア全般。

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