生産者と消費者をつなぎ、商品の魅力を発信する「デザイン」の効能

 

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デザインは生産者や商品の良さを伝えるツールになる

 

 アートディレクターとして、これまでさまざまなデザインを手掛けてきた堀内さんにとって、商品パッケージやショップカード、ウェブサイトは『販売している人や商品の良さを伝えるツール』だという。そんな視点で見てみると、商品自体は良くてもパッケージデザインで損をしていると感じる例も多いそうだ。
 そこで、堀内さん自身が『農家がデザイナーと組んで進めた、一番良い成功事例』として聞かせてくれたのがこんな話だ。
 堀内さんがブランディングやウェブサイトの構築を請け負っているクライアントの1つに、4人で経営する有機農家『ナチュラリズムファーム』がある。以前、堀内さんが主催するマルシェなどで販売をしてもらったところ、お客さんからの反応は上々だったそう。しかし、当時、彼らのショップカードやウェブサイトはなく、「彼らは良いものを作っているのに、お客さんが次に商品を購入したいと思っても買う方法がなかった」という。
 そこで、ウェブサイトを立ち上げ、オンラインで購入できるシステムを構築。生産者と消費者をつなぐ役目を担ったことで、「今では神戸のオーガニックの農家としては、検索するとトップに表示されるようになりましたし、メディアやレストランからの問い合わせも多く寄せられています」。さらに、毎週土曜に開催される神戸市が仕掛けるファーマーズマーケット『EAT LOCAL KOBE』では、最も注目を集める農家のひとつになっているという。クリエイティブやデザインに力を入れることにより、他商品との差別化ができ、新たなマーケットが開拓できたビジネスモデルと言えそうだ。
 間もなく彼らとともにCSA(コミュニティー・サポーテッド・アグリカルチャー)をスタートする。ここではお客さんが農家に2万円を前払いし、スケジュールに合わせて隔週で協賛のカフェに野菜を取りに行くシステムだ。計画的に生産、納品できるため、「農産物のロスが減る上、前もって資金調達できるのが農家にとって大きなメリットになります。野菜を受け取りに来たお客さんがカフェで食事をすれば、カフェの売り上げにも貢献でき好循環を見込めますよね」。CSAは今アメリカで急速に広がりを見せているが、今後日本でも注目を集めそうだ。

rice horiuhi2神戸市のオーガニックファーマー「ナチュラリズムファーム」が出店するマルシェの様子。実はこれ、軽トラの荷台に設営されたもの。そのアイデアやディスプレーも学ぶ点が多い


B to Cで商品のストーリーを伝え、ヒントを拾う


 従来、農業や製造業に従事する人たちはB to Bが一般的で、末端にいる消費者の声を直接聞く機会はほとんどなかった。しかし、神戸の例のように最近ではマルシェやイベントなどでB to Cを体験する場面も増えている。マルシェの企画も行う堀内さんは、お客さんの「おいしい」の声を直接聞いて意欲が高まった農家さんを多く見てきたそうだ。消費者との対話をきっかけにアイデアが生まれたり、ヒントをもらったりすることもあり、商品のクオリティー向上にも結びついているとか。
 ものを購入するときにはさまざま視点があり、その商品が作られる背景を知らなければ、できるだけリーズナブルなものを買いたいという消費者も多いだろう。本来、どこの誰が、どんな風に作っているかは大切な要素。接客の中で商品の裏側にあるストーリーを伝えていくと、商品と生産者への興味が深まる消費者も増えていくはずだ。
 農家の方で、パッケージやロゴなどをデザイナーに依頼してみたいという方もいるかもしれない。そんな時に気をつけるべき点を聞いてみたところ「ノープランで丸投げするのは失敗のもと」とのこと。デザイナーの特徴や作風、実績をあらかじめ調べて、「どこの誰にどんな内容でオーダーしたい」とクリアにしておきたい。より良いものを作るためにも、依頼者とデザイナーでイメージを共有できるように具体的に要望を伝えることが重要だ。
 昨年、堀内さんは熊本の米農家を取材する機会があったそうだ。「その時に食べた米が、人生で食べたなかで一番おいしかった」と笑って話す。その良さを伝え、拡散して、つないでいく。堀内さんは、その仕組み作りこそが自らの担う役割だと考えている。


rice horiuhi3「ナチュラリズムファーム」のお米のパッケージ。「デザインが変わるだけで、農家さんもディスプレイに気を配ったり、見せ方を変えたり、意識が変わってきました」と堀内さん。

堀内 康広さん
TRUNK DESIGN(兵庫県神戸市)アートディレクター
プロフィール:1981年生まれ。2009年、兵庫県神戸市に『トランクデザイン』のオフィス&ショップをオープン。地場産業のプロデュースやブランディング、百貨店広告などのディレクションやデザインを手がける。12 年には兵庫県のモノづくりを紹介する『Hyogo craft』を立ち上げ、兵庫県の間伐材を使用したオリジナルプロダクト『森の器』、播州織の職人とつくるアパレルブランド『IRODORI』、『megulu』を展開。

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