全国誌に取り上げられた新商品も。熊本の老舗麹屋『木屋本店』流、商品開発の発想法

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発酵食品ブームに乗り、脚光を浴びた麹


江戸時代の末期、天保年間に創業した老舗麹屋『木屋本店』。九代目の井口裕二さんは日々麹づくりに励んでいる。麹(糀)とは、原料となる穀物(米、麦、豆など)を蒸したものに“麹菌”を付着させ、培養したもので、発酵食品に欠かせない材料。味噌をはじめとした調味料、お酒、甘酒などを作る際に使用されている。

麹の完成.JPGお米に麹菌が付着した状態。神秘的な美しさを感じる


しかしながら、「洋食文化が浸透し、食生活が多様化したことで、麹の消費量は減少傾向にありました」と井口さん。そんな中で訪れたのが、昨今の発酵食品ブーム。特に、“塩麹”は大きな話題となった。
「洋食文化が浸透してきたことで、味噌の消費量は減っているのが現状です。そのため、原料となる麹の消費量も減ってきています。しかし、それはパンを食べる人が増えて、米の消費料が減っているのと同じこと。であれば、お米と同じように、使い方の幅を広げてあげることが重要になると思います。塩麹は、麹の可能性を世の中に広く発信する良いキッカケになりました。といっても、麹は日本に昔からあった調味料なので、突然生まれたわけではなく、巡り巡って再び注目を集めたという感じです。そのブームの根幹にあるのは“健康志向の人が増えて来た”ということだと思います」。

 

消費者の動向に注目し、インパクトのある商品を開発


さらに、井口さんは、ある消費者の変化を感じていたという。それは“体験に喜びを感じる人が増えている”ということだ。
「甘酒を自分で作るという人もいるんです。もち米・麹・ぬるま湯を混ぜて作るのですが、最初は何も変化が起こらない。でも、10時間ぐらい経つと、糖度が40度ぐらいまでぐーっと上がって行くんです。作る人にとっては、その過程が面白いのだと思います。ヨーグルトを家で作る人もいますが、自分でひと手間、ふた手間かけて体験することに楽しみを見出している消費者は増えていると思います」。
事実、『木屋本店』で販売している甘酒の原料となる麹は、関東・関西・九州など幅広い地域から注文が寄せられているという。

IMG_6919.JPG甘酒の原料となる『木屋本店』の甘酒麹

麹をはじめとした発酵食品の確かなブームを実感し、攻めの姿勢を打ち出した井口さん。数々の新商品開発に着手した。
「『木屋本店』では、生麹だけを製造しています。乾燥麹に比べ、生麹は発酵するチカラが強い。だからこそ、全国にも通用する商品が展開できると考えました。まずターゲットしたのは、発酵食品ブームを牽引する若い女性です」

そうして生まれたのが『食べる甘酒 木屋美人』。甘酒をペースト状にした商品で、ジャム感覚でパンに塗ったり、フルーツにかけたり、ヨーグルトや牛乳にも好相性というユニークな商品だ。
「他社の商品にはないインパクトが必要だと思い、甘酒を“食べる”というスタイルにしました。無添加・無加糖・ノンアルコールの体に優しい商品。
お湯を注ぐと甘酒にもなり、お砂糖代わりに料理にもお使いいただけます」。
「朝はパン食」というライフスタイルの人にも訴求ができる、まさに麹の幅広い使い方のひとつ。その独自性が話題を呼び、全国版の女性誌に取り上げられ、注文が殺到。現在も品薄状態が続いているという。
さらに、「麹=和食」の概念を打ち破る商品として開発したのが、『バジル塩こうじ』。塩麹に2種類のバジルをブレンドした香り豊かな調味料で、肉・魚料理、パスタやハンバーグ、カルパッチョなどの洋食と相性抜群だ。

「型にハマらない」「いろんな人に会う」がコツ


そのようなアイデアは、どこから生まれるのだろうか。
「“こうしなきゃいけない”という型にハマると、視野が狭くなります。そうならないために、私が大切にしていることは、いろんな人とコラボレーションすること。例えば、イタリア料理店で『麹とイタリアン』という食イベントを開催しました。シェフに麹を取り入れた料理を作ってもらい、提供するというもので、前菜のカルパッチョに塩麹のソースを使ったり、お肉料理の調味料に使ったり、甘酒をジェラートにしたり。いろいろな提案をしてもらうことで、お客様にも私にも、麹の新しい可能性を見せていただきました。“麹=和食”に囚われることなく、柔軟な発想をするためにも、他業種の人に会い、話をしたりコラボレーションすることを大事にしています」と、井口さんは秘訣を教えてくれた。

最後に、アイデアマンの井口さんから面白い提案が。
「農家さんと麹屋で一緒にできるとしたら、『ビニールハウスで麹づくり』とか面白いんじゃないですかね。麹づくりは温度管理が大切なのですが、ビニールハウスだったらできそうな気がします。地域の農家さんがお米を持ち寄って、そのお米で麹をつくるとか、さらに味噌をつくるとか。“できあがったら取りに来てください”みたいな感じでね。お米から麹ができるまでは4日間、味噌にするにはさらに1日、その味噌が食べられるようになるには1ヵ月ほどの期間がかかります。甘酒ならひと晩、塩麹は1週間でできますよ。消費者や子どもたちを呼んで、ワークショップ形式にするのもいいですね!」
どんどん湧き出る、井口さんのアイデア。興味がある方は、ぜひお問い合わせをしてみて。

 

井口 裕二さん
木屋本店(熊本県山鹿市)九代目
プロフィール:山鹿市出身。山鹿を代表する老舗のひとつ『木屋本店』の九代目として、麹の製造・販売、新商品開発などに精力的に取り組む。バジルと麹を合わせた調味料『奇跡の…バジル塩こうじ』や、ジャム感覚の食べる甘酒『木屋美人』など、手がけた新商品はアイデアにあふれ、評判も上々。山鹿商工会議所青年部の副会長、観光散策ツアー『米米惣門ツアー』のガイドも務めている。

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