原点は土づくり、『良土農継』を地域のスローガンに

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石川県の農事組合法人Oneは、宮野さん兄弟を中心に30代から40代の若いメンバー8名で農業に従事している。訪問すると事務所の看板や働く人の活気からも若々しい空気が伝わってくる。若い生産者が何を目指しているのか、代表の宮野一(みやのはじめ)さんと管理・営業を担当する坂井大輔(さかいだいすけ)さんから話を聞いた。

 

法人化で土づくりを栽培の基本に

実家の米農家を継いでいた兄・宮野一さんと独立しレンコン栽培をしていた弟・宮野義隆(みやのよしたか)さんが共に農事組合法人Oneを2013年に設立した。Oneでは、水稲37ha、レンコン4.5ha、ニンニク、ジャガイモを栽培している。

水稲を担当するのは、一さんを含めた2名。品種は多様で加工用餅米、ゆめみづほ、つきあかり、ゆめごこち、コシヒカリ、山田錦を栽培している。米の販売先の8割が米屋への卸販売で、個人や飲食店への販売は一部だ。一方、14年前から義隆さんがはじめたレンコンは、飲食店や各地方スーパーなどへの販売が多く、販売金額では米と並んでいる。

Oneでは、稲作と野菜の栽培を行っているが、最も大切にしているのが土づくりだ。もともとは、慣行の化学肥料を用いての米作りをしていたが、土壌診断をしてみると化学肥料だけでは、土が痩せてしまっていることに気がついた。そこで、永続的な農業を目指し、肥料の半分を有機質肥料に切り替えた。地元で堆肥の生産販売をしている河北潟ゆうきの里牛糞堆肥と、同県能登地方より酵素発酵させた鶏糞を仕入れ、肥料として使っている。化学肥料のみの時に比べて収量は下がったが、食味値が良くなったという。食味値とは、100点満点で表され、数値が高いほど美味しい米で、70点以上が美味しい米の目安となっている。有機質肥料を用いるようになって、Oneのお米は85点と高い評価を得ている。「これからの課題は、化学肥料を使った時と同じくらいの収量を獲ることです。苗8作と言われるように良苗の生産に力を注いでいるところです」と一さんはいう。育苗期に中赤外線のシートや潅水時に根に酸素を供給する『ロッキィ』などといった新しい技術や資材をOneは積極的に取り入れ、検討している。

販売面では、ブランディングに力を入れている。外注のデザイナーと思いや背景を共有し、Oneが大切にしている土づくりの良さが伝わるようなロゴや米袋などの包装資材やポスターを作製している。このブランディングは、外へのPRはもちろんであるが、組織のメンバーや地域に向けたメッセージも込められている。「Oneの掲げる『良土農継』を地域のスローガンにしたいんです。日々の取り組みを通して、農業の魅力を伝えていきたいです」と一さんは語る。

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個人から会社へ、2つの投資

個人経営から会社経営に変化していく過程で、経営管理に大きく影響を与える投資を2016年に行う。石川県で2014年から県内の農業法人にシステムを提供していた『豊作計画』という農業管理システムを導入と新たなスタッフの雇用だ。

豊作計画は、トヨタ自動車が開発した農業の管理システムである。トヨタは、現場で無駄をいち早く発見し解消することで効率性と安全性を高める『カイゼン』を生み出した企業として、世界的に知られている。トヨタが自動車産業で培ってきたノウハウを農業に応用し、生産性の向上や収益や管理の無駄をなくすことを目的としている。豊作計画では、管理システムの利用に留まらず、実際に専門のコンサルタントがカイゼンの指導を行う。その指導により道具の整理や作業の動線などが見直されていく。

そして、この豊作計画の導入に合わせ雇用されたのが坂井さんだ。坂井さんは、地元の住宅メーカーで設計士として13年間勤務し実家は近所で稲作を営む兼業農家だ。「坂井の実家の田んぼも自分たちがやるから坂井は現場に出なくてもいい。と言っているくらい頼りにしているんです」と一さんからの信頼は厚い。豊作計画に基づいた組織運営の指針があることと管理者として坂井さんがいることが組織全体に安定をもたらしているようだ。今後について、坂井さんは「東京オリンピックで選手に食べてもらえるような品質管理を目指したい。グローバルGAPも意識しますが、自社の基準がそれを上回っているのが理想です」と堂々と話す。

Oneが掲げる『良土農継』。良い土をつくり、農を次世代へ継ぐ。Oneのメンバーが新しいものを柔軟に取り入れ、これからどのように広がり、農を継いで行くのだろうか。Oneの活躍が地域の農業をどのように輝かせるのか楽しみである。

文:諸橋 賢一

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