お米づくりの1年

 “米”という字を分解すると、“八”“十”“八”に分けられます。そこから、米づくりには“八十八”の手間がかかると言われてきました。春の苗植えから秋の収穫まで、場所や品種などによって実際には88以上の手間がかかる米づくり。機械化が進む現代においては作業が効率化され、手間も減ってはいるものの、1年を通して大変な労力が必要なのです。

 

土づくりから始まる米づくり


春に田植えをし、秋に実った稲穂を収穫する。米づくりは決してこの部分だけではありません。収穫の後から、次の年に向けての米づくりがスタートします。


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<11月〜3月> 冬の間の土づくり


米はもちろん、野菜などの農産物の美味しさを左右するのは、健康で栄養たっぷりな“土”が重要だといわれています。イネの収穫が終わると、残された田の土の栄養分の多くは失われています。そのため、冬の間に土の成分を調べたり、田の土に肥料やわらを混ぜ込んだりと、足りない養分を補います。春になると、可愛らしい紫色のレンゲソウが咲く田んぼを見かけることがあります。秋に種をまき春に花を咲かせるレンゲソウには、イネの生長に役立つ窒素が含まれているので、土にすき込むことで自然と良い肥料になるのです。

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<3月〜5月> 苗づくり


選り分けた種もみを発芽させ苗を育てます。より良く育つイネにするには、ずっしり実の詰まったもみを選ぶことが重要。選り分ける方法に、“塩水選”というやり方があります。塩水に種もみを入れて、沈むもみ(実が詰まって重い)を選ぶのです。選んだもみを育苗箱という専用の箱に入れ水に浸し、ビニールハウスの中に並べます。この時、気温は20〜30℃をキープするよう気を付けながら、田んぼに植えられる大きさになるまで大事に育てます。


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<3〜5月> 田植え前の土づくり

冬の間の土づくりに引き続き、栄養分をたくさん蓄えた田んぼを耕して水を張り、田植えができるような状態にするため、土の表面をたいらにします。この作業を“代かき”といいます。代かきをすることによって、肥料や土の養分を満遍なく混ぜることができます。


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<4〜5月> 田植え

苗の本葉が2.5枚、長さが12cmくらいまで揃ったら、いよいよ田植えの時期です。苗をビニールハウスから田んぼへ運び、田植機にセット。1日におよそ2ha分も植えることができ、田んぼがすぐに苗で埋まって行きます。昭和45年頃までは、苗を1株ずつ手で植えていました。今はほとんど見かけることはありませんが、機械が入らない田んぼの隅や、小さな田んぼでは手植えをしています。田んぼに植えられた苗は、約1週間で土の中にしっかりと音を張ります。気温が上がるにつれて葉の数も増えていき、どんどん生長します。



<5〜9月>イネの管理

田んぼの水は、苗を支え、雨風や寒さから守ります。そのためにも水の量を増やしたり減らしたりと、水の管理はとても重要です。また、雑草が生えることもあります。雑草が増えて生長すると、養分が吸い取られたり、日当りが悪くなるので、こまめに抜いたり、除草剤を使ったりします。この時期、さまざまな病気や害虫にも気をつけなければいけません。このような病害虫を退治するため、農薬や殺虫剤などが使用されますが、使いすぎないよう注意が必要です。日本の農薬使用基準は世界でもとても厳しく、使う量や濃度、回数が細かく設定されています。近年では、合鴨のひなを田んぼに放し飼いし、害虫や雑草を食べてくれる“アイガモ農法”なども行なわれています。このような農薬や化学肥料を減らす取組みも進んでいます。


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<9〜10月>
収穫

イネの実が熟したら、田んぼの水を抜き、土が十分に乾いた状態で収穫を行ないます。収穫の時期がずれると、味や品質が落ちるため、イネの実りを見極め計画的に刈り取りことが大切です。昔はイネの刈り取りも村総出で行なう一大作業でしたが、現在はコンバインが主流。刈り取りと同時に、イネの脱穀、脱穀したもみとわらを分ける選別までの作業を、自動的にコンバインで行なうことができるのです。

刈り取った直後のもみには水分が蓄えられているため、すぐに乾燥させないとカビが生えてしまいます。日光に当てて乾燥させる天日干しの場合は、約20日をかけて乾かします。乾燥機の場合は、ゆっくり熱風を当てて乾かします。

乾燥させたもみは、必要な分だけもみがらを取って玄米にし、出荷します。その後、販売店などを通じて、私たち消費者の手に渡ります。その頃米農家は、来年の苗の種にするもみを選んだり、冬場の土づくりを行い、また新しい米づくりの1年がスタートするのです。



◆参考文献・サイト
・丸山清明監修『お米の大研究』PHP
・TJ MOOK『お米の教科書』宝島社
・JA秋田中央会「お米ができるまで」
 http://www.ja-akita.or.jp/chibikkohiroba/okome

味や食感が変わる「分つき米」

お米は収穫された時点で“もみがら”というからに覆われていて、もみすりをしてもみがらを取り、“玄米”にします。その後、玄米のぬか層と胚芽を取って“精米”することで白くし、普段見慣れた白ごはんとなります。この精米の段階で、つき加減(精米の加減)を調節して、ぬか層と胚芽を少しずつ取り除いて精米。玄米と白米の間のお米を「分つき米」といいます。何分づきかによって、味や食感に大きく違いがあります。

 

数字が小さいほど玄米に近い


 分づきには精米の加減によって、一分つき、三分つき、五分つき、七分つきなどがあり、数字が大きいほど白米に近くなります。ぬか層や胚芽にカルシウムやミネラル、食物繊維やビタミンなど豊富な栄養素が含まれているので、精米加減が低いほど、栄養価は高くなります。


・玄米…もみがらを取り除いた状態。栄養価は高いが、クセがある。消化に時間が係るので胃腸の弱い人には注意。

・三分つき…玄米に近く炊き上がると茶色くなる。玄米に比べると食べやすい。

・五分つき…玄米と白米の中間。玄米よりやや白っぽく、風味があって食べやすい。栄養や食物繊維も豊富。

・七分つき炊き上がりは白っぽく、食感は白米に近い。初めての分づき米にはおすすめ。

・白米…普段食べ慣れている白ごはん。ふんわりやわから食べやすい。玄米に比べ、食物繊維やミネラルは少ない。



劣化が早いのも「分つき米」


ぬか層が残る分、栄養豊富な分つき米。ぬか層には油分もあるため、精米した瞬間から酸化をしはじめっます。美味しく食べるには精米してから早めに食べるのがおすすめです。貯蔵には玄米が一番向いていて、次が白米、最後が分つき米です。1週間以内に食べきれる量を目安に精米しましょう。


精米機の中には、精米度を調節して分づき米にできるものもあります。最近では、家庭用の精米機を持ち、好みの分づきで精米したてのごはんを楽しむご家庭も増えています。初めての方は七分づきからスタートするなど、自分の体質や好みに合わせて分づき米を試してみるのも、新しいお米の味わい方としてお勧めです。


◆参考文献・サイト
・丸山清明監修『お米の大研究』PHP
・TJ MOOK『お米の教科書』宝島社
・大桃美代子『日本一おいしいお米の食べ方』中経出版
・ISEKI「ピカピカ白米 米LIFE」
 https://www.iseki.co.jp/seimai/what/
・全国有機農法連絡会「精米について」
 http://www.zyr.co.jp/okome/okomeno.html

お米は最高の万能栄養食

毎日のように何気なく食べているお米ですが、私たちはお米からたくさんの栄養をもらっています。お米の主な成分はでんぷんを中心とする炭水化物で、これは私たちのエネルギーのもとになるものです。お米を1日300g(約お茶碗2杯分)を食べると、約1,070キロカロリーのエネルギーが取れます。これは、1日に必要なエネルギーの約45%です。
さらにお米は、アミノ酸、脂質、ビタミンなどの栄養素もバランスよく含んでいるので、お米それだけで万能の栄養食といえるのです。



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玄米の高い栄養価


これまで精白米の栄養成分についてお伝えしましたが、味や食感が変わる「分づき米」のページで紹介しているように、玄米の状態が、一番栄養価が高く、その後精米の加減によって、食べやすくなるとともに玄米に比べると栄養価は低くなっていきます。


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白米と玄米を比べてみると、エネルギーや炭水化物の数値はさほど違いがないものの、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富なことが分かります。人間が健康を保つために必要とされる栄養素をほとんど摂取できるため、“完全栄養食”ともいわれています。これは、玄米のごはんをお茶碗一杯食べると、白米のごはん1日分食べたことと同じ程度の栄養価を得られることになるのです。

また、発芽する前の玄米にはフィチン酸という物質が多く含まれています。フィチン酸には排泄作用があり、体内の毒素を出す働きをするため、病気を治すともいわれています。ちなみにこのフィチン酸、一旦発芽してしまうとその役目を終え消えてしまいます。

 

玄米より栄養価が高い!? 「発芽玄米」


その名前の通り、発芽した玄米を「発芽玄米」といいます。スーパーのお米売り場でもよく目にする言葉ですが、近年健康食としてとても注目を集めています。

玄米は芽を出すとき、胚乳の部分を軟らかく、甘く変化させます。胚乳は、普段私たちが食べている白米の部分です。この部分が軟らかく甘くなるということは、ごはんのおいしさが増すということです。

また、発芽玄米は栄養素も豊富。中でもGABAと呼ばれる「ガンマ−アミノ酪酸」という栄養成分は、白米の約10倍、玄米の約3倍も含まれているのです。GABAには、中性脂肪を抑えたり、血圧を下げたり、精神を落ち着かせたりとさまざまな効能があるといわれています。最近では、アルツハイマー病の予防や治療が期待されると注目されています。

このほか、ビタミンやカルシウム、糖質、食物繊維などが豊富に含まれ、その栄養価は玄米よりも高いです。玄米よりも食べやすいともいわれますが、初めての方にはその独特の食味に抵抗があるかもしれません。ぜひ一度チャレンジしてみませんか。


◆参考文献・資料・サイト
・丸山清明監修『お米の大研究』PHP
・TJ MOOK『お米の教科書』宝島社
・大桃美代子『日本一おいしいお米の食べ方』中経出版
・文部科学省《日本食品標準成分表2015年版(七訂)》
・科学技術庁資源調査会《五訂日本食品標準成分表》

ダイエットにも効果的!? お米のおいしいヒミツ

「ごはんを食べると太る」……いつ、誰が言いはじめたのか、世の中のダイエッターから敬遠されるようになってきたお米。確かに、お茶碗一杯(150g)のお米の成分を見てみると、その60%が水分、約37%が炭水化物といわれています。“炭水化物”と聞くだけで「多く摂取しすぎると太ってしまう」と心配する人も多いかもしれません。

 


ごはんを食べると太る?


炭水化物には、血液中の糖分の量(血糖値)を増やす働きがあるため、摂取すると血糖値が上がります。この急激な血糖値の上昇は肥満につながるのですが、お米の炭水化物のほとんどはでんぷん。体の中に取り込まれたでんぷんは、口の中で細かく噛み砕かれるとき、唾液の成分によってブドウ糖という糖分に変化します。これには時間もかかるため、甘いお菓子を食べた時ほどの急激な血糖値の変化は起こりません。

また、小麦などの米からできているパンや麺類と違い、粒のままで摂取するため、ゆっくりと消化され吸収されていきます。このことから、腹もちがよく、おなかが空きにくいので間食が減ったり、体に脂肪を溜めるホルモンの分泌がゆるやかで、それに起因する体脂肪の蓄積が抑えられたりと、メリットもあるのです。

さらに、ブドウ糖は、脳の唯一のエネルギー源。一日のはじまりの朝食時にお米を食べると、脳が活性化され頭がシャキッとする、といわれています。朝に食べたごはんは、健康な成人男女で、約3時間で消化されます。昼食から逆算すると、9時までに朝ごはんを食べれば、良いタイミングでまたブドウ糖をチャージできるのです。

体にも良いお米を食べれば、太る心配もない上に、規則正しい食生活も実現できます。逆にごはんを食べないと、エネルギー不足で脳も体も元気に働かなくなってしまいます。“食べ過ぎ”には注意が必要ですが、自分のライフスタイルや体調に合わせて、しっかりとお米を食べていきましょう。

 

どんなおかずとも相性抜群


前述した通り、ごはんは水分を多く含んでいます。そして、お米は水で炊きます。これがダイエットにも良いといわれています。油やバターを使わず、0キロカロリーの水だけで主食が食べられるのです。また、水を十分に含んでいるので、のどごしがよく、味にクセがなくて適度なうま味があるので、どんなおかずと組合わせても美味しく食べることができます。

和食では、主食のごはんに対し、主菜と副菜をいくつか組合わせた食事が基本とされてきました。味噌汁に魚や肉、野菜のおひたしや煮物、漬物など、昔から取られて来た“一汁三菜”の食事のスタイル。少し意識するだけで、自然と栄養バランスがよい健康食となり、ダイエットには抜群の食事となるのです。

◆参考文献・サイト
・丸山清明監修『お米の大研究』PHP
・大桃美代子『日本一おいしいお米の食べ方』中経出版

稲穂からごはんへ

秋に収穫されたお米は、“もみがら”という殻に覆われています。この状態を“もみ”と呼びます。お米はこのままでは食べられないので、もみすりをしてもみがらを取り除きます。この状態を“玄米”といいます。玄米は、ぬか層に多くの栄養が含まれているため、健康によいとされています。その玄米のぬか層と胚芽を取って白くすることを精米といい、白米にする作業です。白米に水を加えて熱すると、普段見慣れた白ごはんとなります。

 


お米を大解剖!


収穫したお米を半分に割ると、図のような構造になっています。
 
○もみがら
 胚乳や胚芽を守る殻。取り除いた後は肥料になる。

○ぬか層

 もみがらと同じように胚乳などを守る働きをする薄い皮。ビタミンなど多くの栄養素を含む。

○胚乳

 イネが育つための栄養となる部分。でんぷんを多く含む。私たちが普段白米として食べているところ。

○胚芽

 成長したときに芽と根になる部分。タンパク質やビタミン、ミネラルを多く含む。精米するとぬか層と一緒に取れる。

 

 

栄養素が異なる精米


もみすりをした後のお米は、普段私たちの食卓で目にする白米のように“精米”されたり、玄米などのようにぬかや胚芽に栄養素を残すようにつく(精米する)“分づき米加工”をしたり、栄養のある胚芽を残した胚芽米など“特殊加工”によって精米をして、好みで食べることができます。
 

◆参考文献・サイト
・丸山清明監修『お米の大研究』PHP
・TJ MOOK『お米の教科書』宝島社
・KOMERI.COM「How To 情報 お米の豆知識」
 http://www.komeri.com/howto/html/03890.html

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