田んぼのしくみ
田んぼを見てみると、その四方を畦(あぜ)で覆われ、その横の水路を水が通っているのが分かります。田んぼには、川からの水を取り入れる水門があり、そこで水の量を調整することで、必要な時に必要な量の水を田んぼに取り入れることができます。この川からの水には、上流から運ばれて来た新しい栄養分がたくさん含まれています。田んぼの底の土は、“作土層(さくどそう)”と呼ばれる、栄養分を多く含んだやわらかい土の層があります。イネは、この部分の栄養分を使って育ちます。
作土層の下には、“鋤床層(すきどこそう)”と呼ばれる粘土を多く含んだ土の層があり、水が地下にしみ込むのを防いでいます。
鋤床層には、田んぼから地下にしみ込んだ水を排出するためのパイプがあり、田んぼから水を出す時に、そのパイプを通して排水します。
鋤床層、さらにその下にある層などを通り地下へとしみ込んだ水は、その途中でろ過され、きれいでミネラルも豊富な地下水となり、地下水帯に蓄えられます。水田があるということは、自然に地下水が涵養され、地下水の量を一定に保つという働きもしているのです。
生育とともに変わる水田の水の量
イネは、生長段階によって、必要な水の量が違います。田植えしたばかりの時、生長段階の時など、河川や用水路から取り入れる水の量を管理する必要があります。
深水・・・田植え直後。苗がしっかりと根を張るために、多くの水が必要。水の深さを約5cmに。雑草が生えるのを防ぐ目的もある。
浅水・・・田植え後6〜7日。水を少なくすることで水温が上がり、イネの生長が活発に。水の深さは2〜3cm。
中干し・・・田植え後4〜5週間。根を強くするために、水を抜いて土を乾かす。土の中に溜まった余分な窒素を抜く働きも。
間断潅水・・・田植え後5週目以降。イネの分けつ(枝分かれ)を抑えるため、数日置きに水を入れたり抜いたりを繰り返す。
深水・・・田植え後3ヶ月以降。冷夏の場合、穂を寒さから守るために水を深くする。
落水・・・収穫前。イネが熟すと水が不要になるため、収穫前に水を抜き、土を乾かす。
田んぼの機能
田んぼはお米を育てたり、地下水を蓄えたりする以外にも、たくさんの働きがあります。
・洪水や土砂崩れを防ぐ
梅雨や台風の時期など雨量が多いときは、水田に水を一時的に溜めて少しずつ河川に出すことができます。これにより、一度にたくさんの水が川に流れて洪水になることを防ぎます。また、河川の水量をコントロールすることで、土砂崩れや土壌の流出も防ぎます。・気温を調節する
田んぼに水が張っている夏には、田の水が蒸発する時に周囲を冷やし、天然の冷房の働きをするのです。晴れた夏の日に田んぼに居ると、涼しい風を感じるのはそのためです。・たくさんの生き物が育つ
水田には独特の生態系があり、春はカエル、夏はホタルなど、季節に応じて多様な生物を見ることができます。今では稀少となったメダカやゲンゴロウ、ドジョウなどは、きれいで栄養たっぷりの水田がすみかとなっています。田んぼがある景色は、とてものどかで穏やかな気持ちにさせてくれます。それはきっと、祖先が2000年以上もの間、米づくりとともにこの景観を守り続けてくれたDNAが、私たちにも流れているからだと思います。
日本の食、風景を後世に残し続けていくためにも、私たちが普段からお米を食べ、自然環境を守っていくことがとても大切なことです。
◆参考文献・サイト
・丸山清明監修『お米の大研究』PHP
・橋本直樹『食卓の日本史』勉誠出版
・みやざきの環境「水田のはたらき」
https://eco.pref.miyazaki.lg.jp/gakushu/contents/gakupro/gakusyu/tei/how/saibai01_1.html