こだわりの酒造りはお米作りから。減反廃止で活気づく契約栽培・自社栽培の動き①

お米の作付けは、1970年代からの減反政策により長期的に減少してきたが、近年の国際的な日本酒人気の高まりによって酒米の需要が増加。それを受けて農林水産省は、2018年産からの減反政策廃止の前に、2014年産からいち早く酒米を減反の枠外とした。そしてこれを機に日本酒の造り手と米作農家との間で、酒米をめぐる新たな関係が生まれ始めている。

 

和食人気を背景に過去最高を更新し続ける日本酒の輸出

農林水産省は2013年に、日本酒を含むコメ・コメ加工品の輸出額を2020年までに600億円にする目標を掲げた。当時の輸出額は150億円なので実に4倍増となる。

こうした強気の目標を支えているのが、ここ数年の海外における日本酒人気である。2013年に和食が無形文化財に登録されたのが追風となり、和食人気と歩調を合わせる形で日本酒の需要も米国やアジア主要国で急上昇。同年に105億円だった日本酒の輸出額は、2017年には約1.8倍(187億円)となり、8年連続で過去最高を更新中だ。

日本酒の中で特に伸びているのが、吟醸酒や純米酒などの特定名称酒である。そして蔵の個性を色濃く出せる特定名称酒の市場拡大は、味と品質で差別化しブランド価値を高めたい蔵元にとって、大きな飛躍のチャンスとなっている。

sakamaisaibai1 1出典:「日本酒をめぐる状況」(農林水産省 政策統括官)
http://www.maff.go.jp/j/seisaku_tokatu/kikaku/pdf/07shiryo_04.pdf

 


お米の作り手とお酒の造り手を結ぶ新たな二つの動き

日本酒の味と品質を左右する要素は数々あるが、酒米がその中で最も重要な要素の一つであることは言うまでもない。ただ、これまで酒米の仕入れは地域のJAと各都道府県の酒造組合を通すのが一般的であり、蔵元にとっては毎年安定的に仕入れができるというメリットがある反面、お米の質や種類、農法などにこだわりたくても融通がきかないというデメリットもあった。

しかし酒米の需要が拡大し、いち早く減反の枠外となったことから、酒米作りの現場に新たな動きが出始めている。その一つが、酒米の複数年契約の拡大である。従来はJA側が単年ごとに需要を見込んで酒米を作付け・供給していたが、年度によって不足と供給過剰を繰り返すなどの問題があった。しかし、複数年契約を導入すれば長期スパンで蔵元の要望に応えられる上、お米の作り手側も安心して酒米を継続的に生産できるため、経営の安定にもつながる。

取り組みはまだ始まったばかりであるが、JA側では全国の酒造組合などに向けて、複数年契約の提案と段階的な拡大を働きかけていくという。

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農家と蔵元とのコラボが地域ブランド向上にもつながる

もう一つの動きが、地域の農家と蔵元による契約栽培の増加である。直接仕入れの契約を結ぶことにより、蔵元側は使いたい酒米の銘柄を細かく指定できるのに加え、「栽培地限定」「有機栽培」など特別な付加価値を持たせた酒を造りやすくなる。酒造現場の杜氏や蔵人にとっても、収穫前から酒米の性質や作柄を深く理解することで、精米・洗米・蒸米など各工程における微妙な判断に生かすことができる。

一方農家の側にとっても、収穫分の全量買い取りが保証されるため計画が立てやすい上、栽培方法や品種を他の稲田と差別化し自らの存在価値を高めることも可能だ。

何より、酒米の品種へのこだわり、栽培方法へのこだわり、仕込みと造りへのこだわり、完成した酒に対する市場の反響などを農家と蔵元が共有できることは、双方の結びつきとモチベーションの強化、一層の品質向上に大いに役立つだろう。さらに長い目で見ると、地元の農家と蔵元のコラボによって「良い酒米と美味しい日本酒を生む土地」という評価が高まれば、地域全体のブランド力向上にもつながっていくだろう。

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日本酒の輸出拡大を背景にした蔵元による酒米の契約栽培、さらにはもう一歩進んだ自社栽培への動きについては、歴史的な背景や各地の蔵元による具体的な取り組みなどにも触れつつ、次回以降でもう少し深掘りをしてみたい。

 

参考資料・サイト:
「日本酒をめぐる状況」(農林水産省 政策統括官)
http://www.maff.go.jp/j/seisaku_tokatu/kikaku/pdf/07shiryo_04.pdf
食品産業新聞社ニュースWEB
https://www.ssnp.co.jp/news/liquor/2018/02/2018-0201-1110-14.html
日本酒研究室
http://sake-labo.com/c02-01-011.html
醸界タイムスWEB版
http://www.jyokai.com/?p=6929
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25871210Y8A110C1QM8000/?n_cid=SPTMG002

 

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