もち米、玄米、古代米etc.…ちょっと変わったお米で醸す日本酒色々

日本酒(清酒)とは、「米、米麹、水を原料として発酵させて、こしたもの」と酒税法で定義されている。逆に言うとこの条件さえ満たせば、日本酒を造る上でお米の種類自体が問われることはない。そこで今回は、酒米や食用米以外のお米を原料にした、ちょっと一風変わった日本酒について取り上げてみよう。

 

三段仕込みの後にもち米を加えて「もち米四段仕込み」に

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食用米に次いで私たちの生活に馴染みのあるお米と言えば、もち米である。もち米は餅作りだけでなく、赤飯、おこわ、中華ちまき、あるいは白玉粉や道明寺粉などに加工され和菓子の原料にも使われている。

日本酒業界でも戦時中から戦後にかけては食用米が不足していたため、もち米で酒を造る蔵元は多かった。ただ、もち米は蒸すと米粒同士がくっつく特性があって何かと扱いづらいため、やがて優れた酒米が登場するに伴い、もち米を使う蔵元は減少の一途をたどった。そのような中で福島の『花泉』は、普通酒を含む全銘柄で「もち米四段仕込み」を行っている。大半の日本酒はお米と麹米、水を3回に分けて仕込む三段仕込みで造られるが、さらに掛米として蒸したもち米を加え4回目の仕込みを行うというやり方だ。このひと手間によって、もち米由来の優しい旨味とコクが生まれるという。同じく長野の『旭の出乃勢正宗』、新潟の『姫の井』なども四段仕込みでもち米を使用している。

また岩手の月の輪酒造では、麹米、掛米共にもち米を使った純米酒『もちっ娘』を商品化している。蔵のある紫波町が全国一のもち米の産地であり、「地元の名産品を酒造りに活かしたい」との想いから誕生したとのことだ。

 

ワインのようなフルーティーな味わいを生む古代米の日本酒

ところで皆さんは古代米についてご存知だろうか。古代の稲の品種が持っていた特色を色濃く残した稲で、“赤米”、“緑米”“黒米”、“香り米”などの玄米に色や香りを持つ米が、品種改良の対象にもならずに今も一部地域で栽培され続けている。

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そんな古代米を使った、一風変わった日本酒造りに挑む蔵元が近頃増えている。例えば京都の『伊根満開』は、甘酸っぱさと米の風味が特徴のフルーティーな赤い日本酒で、原料には酒造好適米の“五百万石”と赤米の“紫こまち”を使用。国内外のミシュラン2つ星クラスのレストランでも提供されている。他にも奈良の『阿騎野物語』、茨城の『朝紫』、秋田の『X3 Rose』、栃木の『朱』、熊本の『緋穂』など、赤米を使った日本酒は各地で醸造されている。

また、新潟の『SHISUI』、青森の『縄文のささやき 紫三人娘』、岡山の『黒米の酒 紫乃皇帝』などは黒米(紫黒米)を原料としている。さらに栃木の西堀酒造では一切酒米を使わず、古代米(赤米+緑米)だけで醸した『愛・米・魅(I MY ME)金の純米酒』を2017年に商品化した。古代米は白米よりも多くのビタミンやミネラルを含み、玄米種皮にはアントシアニン系のポリフェノールが多く含まれるため、健康酒としても期待できそうだ。

 

健康成分の豊富な玄米が日本酒市場で光を放つ日は来るのか

最後は、玄米を使った日本酒である。もみ殻が邪魔をする影響で麹菌の繁殖が困難な玄米は、日本酒の原料としてはとても使いづらい。ただそのような悪条件を物ともせず、熊本の亀萬酒造、福岡の萬年亀酒造では、もみ殻を除いただけで精白していない精米歩合100%の玄米を原料として使用。濃厚でコクのある純米酒を醸して世に出している。また、和歌山では『九九.九』という名の、精米歩合99.9%のほぼ玄米酒と呼べる酒が2018年に誕生したばかりだ。

ビタミンB1、B2、Eが豊富でリノール酸や食物繊維が多い玄米は、健康志向が深まる昨今で何かと話題に上る食材の一つである。嗜好品である日本酒の世界でも、果たして今後玄米酒が脚光を浴びる日が来るのか、密かに注目していきたい。

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清酒からにごり酒まで多彩な味、香り、表情を持つ日本酒だが、もち米や古代米、玄米まで視野に入れると、その懐の深さに改めて驚かされる。2016年の春には、ミャンマー産インディカ米での清酒造りに京都の酒蔵が初めてチャレンジし、全国紙で取り上げられた。酒を切り口にしてお米の未来に思いを馳せると、これからの意外な可能性の広がりに興味は尽きない。

 

参考サイト:

農林水産省

http://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0206/03.html

KURAND
https://kurand.jp/22047/

たのしいお酒.jp
https://tanoshiiosake.jp/3851

花泉酒造合名会社
http://hanaizumi.ne.jp/work

『姫の井』といえば「もち米四段仕込み」 一徹に寒造りにこだわる女性蔵元
https://sirabee.com/2018/02/04/20161476969/?FROM_WEBVIEW

赤い日本酒「伊根満開」は冷酒よりも熱燗で飲むのがおすすめ!|メシ通
https://www.hotpepper.jp/mesitsu/entry/takayuki-okamoto/18-00196

株式会社さサンフォン
https://sanfon.jp/item/千代の松-赤米酒-阿騎野物語/

日光 吉田屋酒店
http://yoshidaya.ocnk.net/product/112

木内酒造合資会社
https://kodawari.cc/ec_shop/goods.php?no=56

金紋秋田酒造
http://www.kinmon-kosyu.com/shopdetail/000000000124/

西堀酒造
https://nishiborisyuzo.com/products-lp/

塩川酒造
http://www.niigata-sake.or.jp/interview/k41.html

眞照堂
http://www.shinshodo.jp/original/murasaki.html

室町酒造株式会社
http://sakuramuromachi.co.jp/product/古代米-黒米の酒-紫乃皇帝/

萬年亀 玄米日本酒 琥珀のつぶやき(まんねんがめ)【福岡県】|47NEWS
https://www.47news.jp/1085133.html

ほぼほぼ玄米酒!精米歩合なんと99.9%の米の旨味を最大限活かした日本酒「九九.九」登場|Japaaan
https://mag.japaaan.com/archives/79172

ミャンマー米で日本酒完成 将来は現地の普及目指す 京都の酒店と蔵元|産経WEST
https://www.sankei.com/west/news/160822/wst1608220053-n1.html

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