お米を磨けば磨くほど酒は美味しくなるのか?酒造りと精米歩合の複雑な関係


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日本人がふだん食べている白米は精米歩合が90%前後。つまり玄米を100%とすると、その10%程を磨く(削る)ことになる。それに対し日本酒造りにおける精米歩合は、普通酒でさえ約70%前後、吟醸酒と特別純米酒では60%以下、大吟醸酒ともなると50%以下までお米を磨いている。大吟醸酒が高価なのは、『山田錦』などの高価な酒造好適米を原料として用いる上に、その半分以上を磨き落とすという贅沢な造り方をしているからでもある。

では、なぜそこまでお米を磨かなければいけないのか? 逆に言うと、お米を磨かなければ美味しい酒は造れないのだろうか? 今回は酒造りにおける精米の歴史も簡単に織り交ぜながら、精米と酒の味の相関関係について考察してみたい。

 

江戸中期に導入された水車精米を機に酒の質は格段に向上

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精米自体の歴史は古く、弥生時代からすでに行われていたと伝えられている。ただその方法は長年にわたり、木の臼と杵を使った原始的な力仕事であった。やがて江戸初期に石臼での精米が始まって効率が上がり、その後2代将軍徳川秀忠の時代に足踏み式の唐臼が中国から輸入され、1日23kg程度まで精米できるようになった。そして明和期(1764〜1772年)に入り、灘の酒蔵『櫻正宗』6代目当主の山邑太左衛門が、六甲の急流を利用した水車精米を初めて導入。精米量は1カ所辺り1日2,400kgまで跳ね上がり、精米歩合も80%まで向上した。日本酒の質が格段に上がると共に、酒処・灘の名声が大いに高まったのは、この水車を使った高白度精米が大きな要因であった。

その後明治29年(1896)に、精米機のトップメーカー(株)サタケの創業者・佐竹利市が日本初の動力式精米機を開発。そして昭和5年(1930)頃になって精白割合の高い縦型精米機が完成し、現在に至っている。

 

お米を磨くほど香り高く雑味のないスッキリ系の酒に

酒造りにおける精米工程の最大の目的は、主に味を調節することにある。お米の胚芽や米粒の外表面に近い層には、タンパク質・脂肪・無機質・ビタミンなどが多く含まれている。タンパク質は発酵過程で麹の酵素によりアミノ酸に分解され、酒に旨味を与えてくれるが、多すぎると酒の味がくどくなってしまう。また、華やかな吟醸香を生み出すためには、発酵段階で酵母への栄養分を少なくして飢餓状態を作り出さなければならない。そこで、雑味がなくスッキリとした香り高い酒を醸したい場合には、こうした余分な成分を取り除くため、お米の外側をできるだけ多く磨き落とす必要があるのだ。

 

精米歩合90%から1%まで。みんな違ってみんないい

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では、お米を磨けば磨くほど「美味しい」酒になるのか? 酒はあくまで嗜好品であり、絶対的な美味しさの基準などない。酒に対する価値観も好みも多様化している今日、お米の旨味を活かした濃醇な酒にするため、あえて精米歩合を高める酒蔵も増えている。酒造技術が格段に向上したことで、「低精米=雑味が多い、重い」と一概には言えない時代になっているのだ。

例えば、精米歩合80%の純米酒『いずみ橋 恵』(泉橋酒造/神奈川)や、85%の特別純米無濾過生原酒『舞美人』(美川酒造場/福井)、そしてご飯と同じ90%の純米酒『妙の華CHALLENGE90』(森喜酒造場/三重)などは、「香りが穏やかでお米の味がしっかり味わえるため、食事と共に楽しむのに最適」と、都内一流百貨店のバイヤーなどから高く評価されている。そして2017年以降、「低精米酒(低精白酒)」というワードがメディアに登場する機会も増え、ネット通販でも売れ行きが伸びているという。

その反面、2017年秋には楯の川酒造(山形)から精米歩合1%という究極の純米大吟醸酒『光明(こうみょう)』が登場し、4合瓶10万円の価格と相まって日本酒ファンの話題を集めた。他にも、精米歩合7%の純米大吟醸『残響Super7』(新澤酒造店/宮城)、8%の純米大吟醸『超精米』(来福酒造/茨城)など、1桁までお米を磨いた高精米酒がいくつも造られている。

 

精米という視点から今日の日本酒の世界を眺めると、精米歩合1%から90%まで百花繚乱、歴史上これほど多“酒”多様な味わいを楽しめる時代はない。これぞまさしく、「みんなちがって、みんないい」。技術が進化した現代に生まれた幸せを噛み締めつつ、精米歩合をものさしにして酒を飲み比べるのも一興だろう。

 

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