【全国のごはんのおとも】鹿児島県いちき串木野市の高校生が作る「ちりめんみそ」


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“ちりめん味噌”とは、ちりめんじゃこ(しらす干し)と味噌を合わせたいわゆる“おかず味噌”の一種。ちりめんじゃこのうま味と味噌のコクを融合させた独特のおいしさが魅力で、しらすが水揚げされる土地では製品として販売されているほか、家庭料理として作られることも多い。

その中でも今回は、鹿児島県いちき串木野市にある鹿児島県立市来農芸高等学校で作られている「ちりめんみそ」を中心に紹介したい。

 

鹿児島の旨いおかず味噌は豚味噌だけではなかった

鹿児島県には豚肉を使った郷土料理が多くあり、そのひとつが豚味噌だ。鹿児島ならではのおかず味噌というと、多くの人が思い浮かべるのは特産の麦味噌と豚肉で作るこの豚味噌だろう。しかし、今回紹介する「ちりめんみそ」も、鹿児島のおかず味噌として忘れてはいけない逸品なのである。

鹿児島県のいちき串木野市はマグロで有名だが、実はしらす漁も盛んで上質のしらすが水揚げされる。しらす漁のシーズンになると、地元では生しらすも出回り、季節の味として親しまれているとのこと。しらすを加工したちりめんじゃこも味が良いことで知られ、いちき串木野の特産品としてふるさと納税の返礼品にも使われているほどだ。このいちき串木野産のちりめんじゃこをふんだんに使って作られているのが、鹿児島県立市来農芸高校加工部製の「ちりみんみそ」だ。

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市来農芸高校では学びの一環として、農産物や畜産物などを使った加工品を製造しており、「ちりめんみそ」もそのひとつ。
学校内で開かれている「農芸市場」や、市内の農産物直売所などで販売されていて、人気のある商品だという。実は筆者も、市内の農産物直売所で市来農芸高校製の豚味噌を買おうとしたところ、スタッフに「こちらもおいしくて人気ありますよ」と「ちりめんみそ」をすすめられた。

 

市来農芸高校加工部謹製「ちりめんみそ」とは

校章を配したラベルが印象的な「ちりめんみそ」は、1缶180gで250円。ラベルには「本品はいちき串木野市産の新鮮なチリメンジャコと自家製の麦みそを原料としています。栄養豊富な健康食品です。なお、保存料・着色料を使用しておりませんので、開封後は要冷蔵にてお早めにお召し上がりください。」(引用)との表記が。

原材料は、麦みそ、ちりめん、三温糖、玉ねぎ、人参、生姜(粉末)、にんにく(粉末)、ごま、七味。なかなかいろいろな材料が使われているのだが、実際に口に含むとそのバランスがとても良いことに驚かされる。市来農芸高校製の麦味噌は香り高く、三温糖を使っているので甘さに深みがある。むろん、ちりめんじゃこの風味もしっかり生きている。

いちき串木野では家庭でもちりめん味噌を作るので、生徒たちにもそれぞれ自分にとってのスタンダードちりめん味噌があるはず。そのような環境下で定番商品としての「ちりめんみそ」を製造するにあたっては、原料選びや配合量、味つけなどでさまざまな試行錯誤があったものと思われる。これは、そんな高校生たちの活動に思いをはせながら味わうのも楽しいごはんのおともだ。



ごはんと相性抜群の「ちりめんみそ」だから、こんな味わい方もおすすめ

ちりめん味噌は、生野菜に添えたり、炒め物の味付けにといった使い方もできるが、“おかず味噌”との言葉通り、なんといっても温かいごはんによく合う。市来農芸高校製の「ちりめんみそ」の場合、原材料に植物油が書かれていないので、使われていないか使っていても少量ではないかと推察される。そのためお茶漬けに添えても油浮きせず、さっぱりと楽しめるのも特徴。これは豚味噌との大きな違いかもしれない。

逆に、炊きたてごはんに添える時には、ごま油やエキストラヴァージンオリーブオイル、亜麻仁油、ラー油など好みの油を少量足すのもおすすめ。艶やかさが増し、のびがよくなる。油との相性の良さを生かしてチャーハンに加えてもおいしい。

そしてこの「ちりめんみそ」でぜひ試して欲しいのが海苔巻きのおにぎり。海苔と抜群に合うのだ。
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具は「ちりめんみそ」だけでもいいが、薬味野菜をプラスすると食感と風味がぐんとアップする。特に三つ葉やセロリ、クレソンなど香りに個性のある野菜がおすすめ。写真では野三つ葉のみじん切りを加えてみた。

また、「ちりめんみそ」はペースト状なので、流行の「おにぎらず」の具としても使いやすい。海苔の上にごはんを広げて「ちりめんみそ」を塗り、その上に野菜や卵焼きなどをおいて「おにぎらず」にすると、ごはんと他の具がなじみやすく、食べる時にも具がこぼれにくい。

 

ちりめん味噌は自作も可能。好みの味で作るのも楽しい

市来農芸高校製の「ちりめんみそ」はおいしく、添加物も使っていないので安心・安全なのだが、唯一といってよい難点は鹿児島県外の人間にとって手に入れにくいこと。鹿児島を訪れた時に購入するか、ふるさと納税の返礼品に選ぶなどしか方法がない。

そんなわけで、ちりめん味噌の自作もおすすめだ。家庭にある材料ですぐに作れるので、ぜひ試してみて欲しい。材料や分量、作り方もアバウトで大丈夫。好みの味に調整できるのも自家製の楽しみといえるだろう。


■ちりめんみそ
<材料>
ちりめんじゃこ(中くらいの大きさのもの) 大さじ4
麦味噌 大さじ5
油(サラダオイル、菜種油、ごま油など) 大さじ1
酒(なくてもよい) 大さじ1
みりん 大さじ1~2
砂糖(三温糖など) 大さじ2~3
蜂蜜(なくてもよい) 適宜 
生姜みじん切り 適宜
*みりん、砂糖、はちみつの量は麦味噌の塩辛さによって加減を。
*好みで青唐辛子やみょうが、ねぎのみじん切りなどを加えてもよい。

<作り方>
①テフロン加工のフライパンに油をしき、弱火~中火でちりめんじゃこを焦がさないように注意しながら軽く炒める。*香りがたち、ぱりっとするまで炒めてもよい。
②①に生姜を加え火が通ったら、麦味噌、酒、みりん、砂糖、蜂蜜を加えて弱火で艶が出るまでよく練る。*砂糖、蜂蜜は味をみながら少しずつ加えていくこと。
chirimen4▲基本の材料はちりめんじゃこ、麦味噌、砂糖のみ。それ以外は好みでアレンジを。

chirimen5炒めたちりめんじゃこと生姜に麦味噌などの調味料を加えたところ。これからしっかり練っていく。

 

鹿児島のちりめん味噌は、素朴な見た目ながら滋味あふれる郷土の味。いちき串木野では、地元産ちりめんじゃこと麦味噌を使って市来農芸高校でも製品化されているなど、若い世代にもなじみ深い一品だ。そんなちりめん味噌は、これからも米食文化を彩るごはんのおともとして永く愛されていくに違いない。

 

参照サイト:
いちき串木野 総合観光ガイド http://ichiki-kushikino.com/souvenir.html
鹿児島県立市来農芸高等学校 http://ichiki.edu.pref.kagoshima.jp/

 

文:松本葉子
食と旅を専門とするフリーランスライター。全国の飲食店のほか、農家、牧場、漁協など生産現場での取材を元にした記事を雑誌、webなどで執筆。自身の料理スキルを生かした記事執筆や食品企業へのレシピ提供も行う。

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