北カリフォルニアお米栽培事情2018夏 -今年のお米づくりにおける課題-

今年の北カリフォルニアのお米づくりにおいては、“Weedy Rice”なる雑草米が再び繁茂するのではないかと懸念されている。また除草剤の効かない新たな雑草も見つかり、お米農家にとっては不安材料が頻発する年となっている。今回はこの問題について皆さんにご紹介し、改善策を考えてみたい。

 

Weedy Rice(赤米)とは?

“Weedy Rice” (別名:Red Rice赤米)とは、栽培米と同じ植物種(Oryza)でありながら、栽培米とは異なる成長を示し、籾米が赤褐色を呈し稔性が低く、収穫後の選別も困難で、全体の収量を減少させ、品質、等級を低下させる非常にやっかいな雑草米である。防除においても除草剤が効かず、栽培米との区別も困難で、早期に駆除することも難しい。

この雑草米がはびこる原因として、栽培米と野生イネの交配、雑草化したとの説があるが詳しいことは分かっていない。日本でもこの雑草米の問題は30年以上前からあるが、日本の場合は田植えによる移植栽培によって選別されるためにそれほど大きな問題にはなっていない。しかし、北カルフォルニアにおいては直播栽培によって混入した雑草米の種が圃場に残留し、周辺環境に適応しながら栽培米に混入するケースが増えている。2016年の調べでは、おおよそ10,000エーカー(約4,000ヘクタール)もの圃場にこの雑草米が拡大しているとのことである。

kitacalifo1▲Weedy Rice(赤米)
California Weedy Rice ; http://caweedyrice.com/#publications から引用

 

さらに今年はこの雑草米の拡大が懸念され、カリフォルニア大学のお米専門チームは農家を対象にして各地で研修会を開き、種籾の検査、栽培過程での発見の仕方、取り除き方を教え、発見したり、疑わしい場合は詳細な報告を義務化するなどしている。

 

 Weedy Rice(赤米)のタイプ

このWeedy Rice、雑草米にもいくつかの種類がある。芒 (のぎ)があるものと無いもの。籾の色が赤褐色のものと通常の栽培米と同色程度のもの。また葉色はやや薄い緑色で、イネの節間部分に葉耳と葉舌があるのが雑草米の特徴である。

kitacalifo2▲有芒の雑草米
California Weedy Rice ; http://caweedyrice.com/#publications から引用

kitacalifo3▲雑草米の葉舌(ligule)と葉耳(auricle)
California Weedy Rice ; http://caweedyrice.com/#publications から引用

 

Weedy Rice(赤米)の防除

この雑草米の防除は、とにかく取り除くことが先決である。また取り除いた稲を圃場周辺に放置しないことが大切だ。雑草米の籾は簡単に脱粒するため、籾をまき散らさないように慎重にしなければならい。カリフォルニアの気候では圃場に残った雑草米の籾種は3年ほどは発芽の危険性が残るそうである。

2018年の作付にあたって、今年は特に種籾の検査、認証が厳しくなった、と、あるベテラン農家から聞かされた。この種籾の認証書類がない収穫米は後の乾燥、精米過程でもそれぞれの加工処理業者から断られる可能性がある。

また収穫用のコンバインなどを共同で使っている場合は清掃の検査があるそうで、この清掃検査にパスしなければ次の作業に使用できない。ベテラン農家は「またコストがかかる」と愚痴をもらしていた。

北カリフォルニアのお米栽培に貢献している研究機関である『Rice Experiment Stationの職員のひとりは、この雑草米の問題を改善するために、日本のように移植栽培、いわゆる田植えの必要性も感じていた。仮に一部でも試験的に田植えを導入する場合は、日本の田植え技術が脚光を浴びるかもしれない。カリフォルニアの広大な水田圃場に田植え機が走るのを想像し、なんだかうれしくもあり、心細くもあり、複雑な気持ちになった。

 

北カリフォルニア水田圃場の新種の雑草

また今年、カリフォルニアのお米栽培圃場において、新種の雑草が見つかったそうである。カリフォルニア大学のお米担当の専門家によれば、農家から数種の除草剤を施用したにもかかわらず、駆除できない雑草が繁茂しているとのことで、調査した結果、今までにない除草剤耐性をもつ雑草だと判明した。

イヌビエともタイヌビエとも思えるような雑草だが、形態からどちらとも言えないという。除草剤の効かないこのような雑草が見つかったことで、農家はもとより、専門家のあいだでひとつの脅威となっている。

以前にも書いたが、大自然は本当に皮肉で、かつ、たくましく我々にその多様性を教えてくれている。除草剤に頼らない農業のあり方、お米づくりを真剣に考えていくべき時がきているのではないか、と、思うのだ。

kitacalifo4▲新種の雑草
University of California Agriculture & Natural Resources, Rice Note July,2018; 
http://cesutter.ucanr.edu/newsletters/Rice_Notes75693.pdfより引用

 

文:madon
アメリカ 北カリフォルニア在住。オーガニックのお米づくりを中心にアメリカ米農家サポート、精米、お米分析などに携わる。目下、持続可能性農業について大学で学びながら奮闘中。

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