お米づくりと温室効果ガス -水田のメタンガス排出について-

近年、世界中において地球温暖化が叫ばれ、日本でも2018年の夏の気温の上昇は尋常ではなかった。地球温暖化の原因はいくつかあるのだが、特に温室効果ガスの影響が大きいと懸念されている。この温室効果ガスには主に二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンなどがあるが、お米づくりにおけるメタンガスの排出が影響しているとも言われている。今回は温暖化と温室効果ガスの関係、お米づくりにおけるメタンガスが発生する仕組みと改善策を考えてみたい。

 

地球温暖化と温室効果ガス

まず、地球温暖化とはいったい何なのか? 言葉はよく聞くが、そもそも温室効果とはどういうことなのか? 

太陽からの光と熱は、地球のまわりの大気や表面に到達した時、その大部分が地球のまわりの大気に吸収される。一部の地表から反射した光と熱は、赤外線として大気に蓄積し再び宇宙に放出されるのだが、全てが宇宙に放出されず、再度、反射して熱として地球に戻ってくる。これが温室効果である。

この温室効果がなければ地球の表面は-19℃となってしまい、生き物は棲めない。それゆえ温室効果は私たちが生きていく上で必須の現象であるが、近年の人間活動によって大気中に余計なガスを出してしまい、これがこの温室効果をより高めてしまっている。その結果、地球全体が暖かくなり、温暖化という現象を引き起こしているのである。

この“余計なガス”こそが、いわゆる温室効果ガスとして冒頭に挙げたもので、温暖化を急速に進めているのである。気象庁が分かりやすく図で説明しているので、それを見てもらいたい。

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気象庁 https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/chishiki_ondanka/pdf/p03.pdf より引用

人間が出す温室効果ガスの割合としては、二酸化炭素がおおよそ76%、メタンガスがおおよそ16%、一酸化二窒素とフロンを合わせておおよそ8%であり、二酸化炭素が大部分を占めるが、この排出される全メタンガスの内、お米づくりにおける水田由来のものは約11%にのぼると言われている。

温室効果ガス排出の全体からみれば微々たるものであるが、メタンガスは二酸化炭素に比べて分解しにくく、大気中に長く留まる性質があり、その結果二酸化炭素に比べて温暖化に20倍以上の影響があると言われている。IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change, 気候変動に関する政府間パネル)によれば、二酸化炭素の排出削減とともに、メタンガスの排出削減も急務であると位置づけている。

 

 

お米づくりにおけるメタンガスとその発生のしくみ

さて、お米づくりにおけるメタンガスの発生はどのうような仕組みで起こっているのか? メタンガスを発生する「メタン生成古細菌」は嫌気性の微生物で、広く地球上に分布している。特に水田のように水で湛水された土壌中には酸素が少なく、絶好の棲息場所になる。この「メタン生成古細菌」は、有機物の分解にともなってできる炭酸水素イオン(HCO3-)や酢酸イオン(CH3COO-)に水素(H2)を供与してメタン(CH4)を生成するのだ。

生成されたメタンガスは、水田土壌から直接大気に排出される分に加えて、稲の通気組織からも放出されると考えられている。従って、湛水期間が長い場合や稲わらなどの有機物残渣が多量に分解するほど、メタンガスが多く発生すると推察されている。

onshitsukouka2 農業温暖化ネット https://www.ondanka-net.jp/index.php?category=measure&view=detail&article_id=437 より引用

 

お米づくりにおけるメタンガス排出の改善策

お米づくりに携わる方々にとっては、このようなメタンガス排出を指摘されても寝耳に水のようなことで、どのように対処していくべきか思案される方もおられるであろう。食料自給が優先か、それとも環境問題を重視するのか。一長一短のところではあるが、お米生産においてこの問題に少しでも取り組むことで、環境にもやさしいお米づくりとしてアピールできることに繋がるかもしれない。

では、どのようにしてこのメタンガスの排出を削減できるのか? 近年、様々な研究と試験が行われているが、要点から言うと、水管理と稲わら残渣の管理が重要になる。落水したり、浅水にしたりして、水田土壌を好気的状態、すなわち酸素が多い状況を保つことで、メタンガスの発生を抑えることに繋がるのだ。また収穫後の稲わら残渣を早期に鋤き込むことで、冬の間に好気的に分解し、作付中の湛水における嫌気的な分解を抑え、メタンガスの排出を削減できる。

カリフォルニアの有機米栽培農家の取り組みとして、収穫後の稲わらの分解を早めるために、「ハンマーモーワー」のアタッチメントで刈り取り後に稲株ごと細断して、その後浅く耕し、分解を促進している。

また一部の慣行栽培農家は稲わらに火をつけて水田全体を焼いているところもあるが、メタン菌の活性は抑えられるが、これは結局二酸化炭素を排出するし、圃場の炭素分の比率を高くしてしまい、温暖化対策という点で環境にいいとは言えないかもしれない。

onshitsukouka3稲わら細断のためのハンマーモーワー

 

要は何を目的にするのか。そしてどのように現在の環境問題に貢献できるのか。そういった一人ひとりの意識と取組み方が、これからのお米づくりにも問われていると思うのである。

onshitsukouka4収穫後の稲わら細断の様子

 

文:madon
アメリカ 北カリフォルニア在住。オーガニックのお米づくりを中心にアメリカ米農家サポート、精米、お米分析などに携わる。目下、持続可能性農業について大学で学びながら奮闘中。

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