オーストラリアのお米はなぜ8割輸出が可能なのか 〜前編「稲作の現状と厳しい品質管理」〜

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最近日本国内では、オーストラリア産のお米が出回っている。質は日本のお米と大きな遜色はなく、農薬を極力抑えた米ということが人気の秘密だ。パンを主食とするオーストラリアで、いったいなぜ国外でも人気となるお米づくりが可能なのだろうか。この疑問に対し、「稲作の現状と厳しい品質管理」と「効率の良い輪作と盛んな研究開発」という前編・後編に分けてご紹介したい。

 

主食がパンのオーストラリアで稲作が始まったいきさつ

オーストラリアは1700年代にイギリス人が入植して作った国だ。そしてイギリス人の主食はパン。それなのに、オーストラリアで日本のようなお米が生産されていることを知った時は理解に苦しんだ。調べてみると、明治時代にオーストラリアに移民した日本人・高須賀譲氏が、オーストラリアに稲作技術を紹介し広まったことがわかった。(高須賀譲氏については『日本とよく似たオーストラリアのお米、豪州に稲作を伝えた日本人『高須賀穣』物語』で詳しい内容を伝えている。)こうしたいきさつがあり、オーストラリアでは現在、主に日本のお米の「血筋」を引くジャポニカ種のお米が生産されている。

 

オーストラリアのお米生産の現状 

現在オーストラリアのお米の年間生産量は、平均として120万トン。これは世界的に見て決して多くはない。実際に国連の『食料及び農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nation)』によると、2017年度のオーストラリアのお米の生産量は世界で42位に過ぎない。しかも乾燥しやすいオーストラリアでは、世界6位の面積(日本の面積の約20倍)を持ちながら、稲作を行っているのがビクトリア州とニューサウスウェールズ州の堺にあるマレー地区のみとほんの一部。また、その年の天気により生産量が激減することもある。ただこうした状況の中でも、1ヘクタール当たりの生産量は約10tと世界で一番高くなっているのだ。

生産したお米のうち80%は輸出。特に近年、世界的にお米の需要が増えていることが、オーストラリアのお米輸出の増加と結びついている。輸出先は中近東、太平洋諸国、北米、アジア諸国など全部で約60ヶ国。輸出するお米の種類ではジャポニカが80%を占めているが、そのほかインディカ、アマル―、ミリン、ランギーなど。また“コシリカリ”は日本からの特別注文として生産し輸出している。

 

国内で消費される20%のお米の行方

australia zenpen2オーストラリアで生産されるお米の内、国内で消費される20%は、日本や中国などのアジア系レストランや近年人気のある寿司ショップなどで消費されている。また、オーストラリアでは多文化主義政策をとっているため、世界各国から移住する移民が多い。そうした人達が家庭で食べるお米はもちろんのこと、多文化に影響を受けた白人系のオーストラリア人も、最近では家庭で寿司やチャーハン、パエリアなどの他民族の料理を作るようになっているのだ。こうしたことが国内でのお米の需要増加につながっていると考えられる。

 

ハイテクを駆使した効率の良い稲作農業

稲作においては高度な先端技術ハイテクを利用して、少人数による生産および貯蔵管理を行っている。例えば、種まきはセスナに種を積み、機内に装備されたコンピューターの画面を見ながらコントロールし均等に種をまく。貯蔵においてもコンピューターで適切な温度と湿度が保たれているかモニターし、お米の質を落とさないよう努めているという。この様子はオーストラリア米生産者協会(Ricegrowers Association of Australia)が公表しているビデオをご参考いただきたい。

 

オーストラリアの厳しい品質管理

オーストラリアでは稲作に限らず、どの分野でも品質の管理が厳しい。理由の一つには、オーストラリアには特有の動植物が生存しているため、そうしたものを保護する観点から環境への配慮が大事な役割を果たしていること。同時に、人権を他のどの国よりも重んじる政策を取っているため、どんなことをするにしても、まず人体や環境にとって安全であることを明確にしたうえで、使用を許すことにしていることがあげられる。

日本の農林水産省がまとめた「諸外国における残留農薬基準に関する情報(コメ)」を見てみると、オーストラリアの農薬使用に対する厳しい規定が分かる。多くの農薬に対して、日本が定める残留農薬基準値よりも厳しい値を表しているのだ。

農業においては多くの国で害虫や病害を駆除するための農薬が使用されており、オーストラリアも例外ではない。ただオーストラリアでは農薬の使用量は最低限に抑えられ、「輪作」や田んぼの管理をうまく行うことにより自然による生物的制御を行っているのが特徴だ。

 

具体的な害虫・病害・雑草対策を指示

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害虫対策に関しては、政府の機関である「第一次産業省」がそれぞれの害虫に対し具体的な方法を小冊子『田んぼガイド(Rice Field Guide)』にまとめ関係者に配布。農薬の使い過ぎを防いでいる。この小冊子では、害虫、病害、雑草の3つの分野に分け一つ一つの種類毎に駆除方法を明記しているが、具体的にどのような内容が織り込まれているかを見てみよう。

 

例えば害虫分野の「オーストラリア・カブトエビ」対策の欄では次のような管理方法を提示している。

australia zenpen4▲オーストラリア・カブトエビ(出典:by Dominik Tomaszewski, https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Triops_australiensis_2.jpg)

「カブトエビの影響は、田に水を入れた後できるだけ早く種まきをすれば、カブトエビが稲に害を与えるような大きさに成長する前に、稲の方が害を受けない段階まで成長し。最終的にカブトエビの害を受けなくなる。そのため、現在カブトエビ用の農薬は指定されていない。」

 

また、輪作による害虫・病害への効果も大きいが、輪作については後編で詳しい内容をご紹介したい。

『オーストラリアのお米はなぜ8割輸出が可能なのか』というテーマに対し、前編として稲作の現状と厳しい品質管理についてお伝えした。稲作の現状の所でお分かりになると思うが、オーストラリアのお米の生産量は世界的に見て決して多くはないが、そのほとんどを輸出できるのは、農薬の使用量を抑えた政策が功を奏し、需要が伸びているからだと言えるだろう。

 

参考サイト:

Ricegrowers Association of Australia INC

http://www.rga.org.au/

National Farmers’ Federation
https://www.nff.org.au/commodities-rice.html

Sun Rice
https://www.sunrice.com.au/

Food and Agriculture Organization of the United Nation
http://www.fao.org/faostat/en/#data/QC

Rice Field Guide
https://www.dpi.nsw.gov.au/__data/assets/pdf_file/0003/504525/Rice-field-guide-pests-diseases-weeds-southern-nsw.pdf

諸外国における残留農薬基準値に関する情報
http://www.maff.go.jp/j/export/e_shoumei/zannou_kisei.html

 

文:Setsuko Truong
オーストラリア、メルボルン在住のライター。オーストラリアにいる日本人向け新聞への執筆のほか、趣味の旅行や海外生活の体験を活かして、観光や異文化比較、ライフスタイルなどについての執筆を行っている。

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