土壌分析で計測される『EC』。水田とECの関係を知ろう

本サイトではこれまで、基本的な土壌分析で得られる項目をいくつか紹介してきた。pHのように比較的身近な数値もあれば、CECなど普段の生活では耳にしない項目もある。いずれの値も、その意味するところを知らなければ、実際のお米や野菜作りに生かすことができず、宝の持ち腐れだ。今回は土壌分析の測定項目の一つであるECについてご紹介し、稲作との関係をみていきたい。

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ECとは電気の流れやすさである

 

ECは、『Electrical Conductivity』の頭文字をとった言葉だ。『Electrical=電気の』『Conductivity=伝導性』という意味であり、『電気伝導度』と日本語で記載されることもある。電気の流れやすさが土壌の何を表すのだろうか?それを理解するためには、まず『電気が流れる』という現象について考える必要がある。

突然だが、水は電気を通さない。より正確に言えば、『純水はほとんど電気を通さない』。電気が液体の中を流れるには、その液体中に陽イオンや陰イオンのような、電気を伝える物質が存在している必要がある。水(H2O)も電離して水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)になるが、その量はごく僅かであるため、純粋な水の電気伝導性は非常に小さいのだ。水道水が電気を通すのは、塩素やミネラルなどのイオンが相応の量存在しているからである。イオンが多く含まれる水ほど、電気が流れやすい。すなわち、水溶液のEC(電気伝導度)を計測すれば、『その液体中にイオンなどの電気を伝える物質がどれくらい存在しているか』の目安を知ることができるのだ。

ちなみに、一般的に使用されるECの単位はmS/cmやμS/cmで、Sは『ジーメンス』とよむ。ジーメンス(S)は、中学校でも習う電気の抵抗を表す値(Ω)の逆数であり、『S=1/Ω』の関係がある。抵抗(Ω)が小さいほどジーメンス(S)が大きくなることがよくわかるだろう。

 

土壌分析でECが意味するところ

 

では、土壌分析におけるECの役割を見てみよう。ECは、土壌中にイオンの形で存在する様々な水溶性塩類の量と正の相関があることがわかっている。『土壌中に水溶性塩類が多ければECも大きい』という理屈は、前述の伝導度の話からお分かりいただけるだろう。作物の養分となる栄養塩類が多く存在する土壌では高いECの値が測定されるが、降雨や作物による栄養塩類の減少・吸収によりECは徐々に低下する。ECの値を逐次計測しておけば、追肥のタイミングをはかることができるのだ。ただし、過剰な肥料はかえって作物の成長を妨げたり、栄養塩類が流出して環境汚染を引き起こすことがある。それぞれの土壌や作物にとっての適切なECを知り、その範囲内で施肥をすることが大切だ。とくにハウス栽培では降雨の影響を受けないことからECが高くなりやすく、こまめなECの測定がカギになる。pHを手軽に測るpHメーターによく似たECメーターも比較的安価で販売されているので、畑作をしている人は手に入れてみると良いだろう。

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実はこのEC、稲作(水田)においては通常ほとんど問題にされない。露天での畑作やハウス栽培と違い、水稲栽培では多くの期間イネが冠水している。このためEC変動の大きな原因となる降雨の影響を受けにくい。一般的に、イネの生育状況とECにはそれほど相関がみられない、もしくはECは気にしなくてよい、と考えられている。

 

ECが参考になる『塩害』時の水田

 

では、水稲栽培でECの出番は一切ないかと聞かれれば、それは『否』である。例を挙げると、2011年の東日本大震災後、被災地の水田のECに関する調査や研究が多数報告された。津波による『塩害』が起きたためだ。

田んぼに海水が流入すれば、海水中の塩分やミネラルにより、ECの値はそれまで見られなかったような高い値になる。昭和34年の伊勢湾台風や、平成11年の台風18号による高潮被害の際にも伊勢湾台風の時にもECが計測され、それぞれの水田の被災状況を測る目安になった(参考文献1)。塩分(塩化ナトリウム)の量を知るには塩化物イオン(Cl-)の濃度を測るという方法もあるが、それにはイオンクロマトグラフィーという分析をしなくていけない。簡便に測れるECは塩分量の相対的な数値でしないが、簡単に手早く測定できるという点で強い味方になる。サンプル数が十分にあれば、ECの値から塩化物イオン濃度を推定することもできるのだ(参考文献2)。

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高いEC値が検出された水田は、基本的に湛水と排水を繰り返すことで徐々に塩分濃度を落としていく。土を水洗いする、というようなイメージだろう。目まぐるしく気候が変動する昨今、大きな台風や地震が引き起こす高潮・津波によって、水田が海水をかぶることがないとも限らない。そういった災害は起きないに越したことはないが、もし塩害が懸念されるような事態に陥った場合は、ECの値が参考になることを思い出してほしい。

 

参考文献:

1.http://jssspn.jp/info/nuclear/post-23.html

2.農林水産省 2011. 農地の除塩マニュアル

3.三浦憲蔵 2015. 津波被災農地の除塩対策16.東北地域の津波被災農地土壌の除塩対策. 日本土壌肥料学雑誌, 86, 459-462

 

文:小野塚 游(オノヅカ ユウ)
“コシヒカリ”の名産地・魚沼地方の出身。実家では稲作をしており、お米に対する想いも強い。大学時代は分子生物学、系統分類学方面を専攻。科学的視点からのイネの記事などを執筆中。

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