お米で造られる酒と聞けば、多くの人が日本酒を思い浮かべるかも知れない。しかし「所変われば品変わる」のことわざ通り、様々な国・地域の風土や食文化に応じて、お米は日本酒とは全く趣が異なる多彩な美酒の「生みの母」となっている。では具体的にどのようなお米の酒があるのか。ということで、今回は泡盛と米焼酎について取り上げてみたい。
同じ「お米が原料の蒸留酒」とは思えない、全く異なる味と香り
そもそも「泡盛の原料ってお米だったの!?」と驚く人は多いかも知れない。何も知らずに泡盛を飲んで、「原料はお米だ」とその場で言い当てる人がいたら、その舌は神の領域と言えるだろう。それほどまでに泡盛は、お米生まれの酒とは思えない強烈な個性を放ち、一度ハマるとクセになる独特の味と香りを特長とする。
一方の米焼酎は、飲んだ経験のある人ならご存知の通り、芋や麦を原料とする焼酎と比べると全般的に味と香りがマイルドで、スッキリとしてクセのない風味を特長とする。何も知らずに口にした人でも、原料を知ると「確かにお米っぽいかも…」という印象を持つだろう。しかしこの両者は、日本の酒税法上どちらも単式蒸留焼酎と分類される。要するに泡盛も米焼酎の一種であり、二つの酒は原料も製法もほとんど変わらないのだ。
お米の種類、仕込回数、蒸留方法のわずかな違いがそれぞれの個性に
では、これほどまでに異なる味と香りに仕上がるのはなぜか。両者の細かな違いをまとめたものをもとにご説明しよう。参考までに日本酒も同じように並べてみた。
泡 盛 原料[タイ米] 麹[黒麹] 発酵[泡盛酵母] 仕込回数[1回]
米焼酎 原料[酒米・食用米] 麹[主に白麹] 発酵[焼酎酵母] 仕込回数[2回]
日本酒 原料[酒米] 麹[黄麹] 発酵[清酒酵母] 仕込回数[3回以上]
泡盛は細長くてさらさらしたタイ米を黒麹菌と混ぜ合わせて米麹にし、そこに水と泡盛酵母を加えて発酵させ、できた醪(もろみ)を蒸留すれば原酒ができる。その原酒をろ過して半年から1年(または3年以上)熟成させ、割り水でアルコール度数を調整するとおなじみの泡盛となる。
米焼酎は、酒米か食用米を麹菌と混ぜ合わせて米麹にし、そこに水と焼酎酵母を加えて発酵させた一次醪に、さらにお米と水を加え数週間かけて発酵させていく(二次仕込み)。こうしてできた二次醪を蒸留すれば原酒となるが、蒸留の際にタンク内の気圧を落とし、沸点を下げて低温での蒸留を行うことで、クリアな味わいとまろやかな口当たりを生み出している蔵元が多い。つまり原料の種類、仕込みの回数、蒸留方法のちょっとした違いが、泡盛と米焼酎の個性の差異につながっているのだ。
割って良し、温めて良し、そのままでも良し。楽しみ方は色々
泡盛は濃厚で芳醇な香りとかすかな甘味を特徴とするが、3年以上寝かせた古酒(クース)の中には、熟成が進むほどにバニラの香りを放ったり、黒糖やバラ、洋梨、柑橘類、コーヒー等の香りを彷彿させるものも少なくない。
そんな泡盛の楽しみ方は、本場沖縄では水割りで飲まれることが多く、冬場には泡盛特有の芳香が湯気と共に広がるお湯割りも人気だ。ただし古酒に関しては、ぜひ一杯目はストレートかロックで、香りの豊饒さとまろやかな口当たりを堪能してほしい。また若い人には、強めの炭酸水でのソーダ割りもおすすめ。肉料理との相性は抜群である。
かたや米焼酎は、一般的にはお米由来のマイルドな香りとドライな口当たり、スッキリした飲み口、そしてさっぱりとした後味の良さが持ち味である。そんな米焼酎の楽しみ方は、お米生まれ故にまさしくオールマイティ。水割りやお湯割りはもちろん、ロックでもストレートでも、さらには熱燗でもOKだ。クセがないため合わせる料理を選ばないところも、お米生まれの酒ならではの魅力と言えるだろう。
最後にもう一つだけ、お米生まれのレアな日本の酒をご紹介したい。日本最西端の与那国島だけで造られる花酒である。原料と製法は泡盛と全く同じだが、蒸留工程の初期分だけを集めているのでアルコール度数は60度を超える。そのため、税法上は泡盛ではなくスピリッツに分類される。
おすすめはストレート。それも瓶ごと冷凍庫で冷やしてほしい。度数が高いため凍ることはなく、そのトロッとした舌触りと濃醇な喉越しは、美しい名前と背中合わせの妖しい魅力を秘めている。機会があればぜひお試しあれ。
参考サイト:
沖縄県酒造組合 泡盛百科
http://www.okinawa-awamori.or.jp/enjoy/05.html
HAVESPI
https://havespi.jp/11818/
macaroni
FOODIE
https://mi-journey.jp/foodie/7375/
球磨焼酎酒造組合
http://jp.kumashochu.or.jp/page0107.html
焼酎街道
https://food-drink.pintoru.com/shochu/shochu-drinking/
崎元酒造所
https://www.sakimotoshuzo.com/hanazake
Under Water Sometimes Above Ground
http://www.hopislander.com/archives/1019867465.html