一年でもっとも日が長く夜が短い夏至を迎えると、いよいよ夏に向けて暑さも増していきます。「半夏生ず(はんげしょうず)」という言葉を聞いたことがありますか? 以前は夏至から数えて11日目、七十二候の末候にあたる日を指していました。現在は黄経※100度の点を太陽が通る日とされており、例年7月2日あたりになります。「半夏」とは「カラスビシャク」という薬草の漢名で、この時期に花をつけることから「半夏生ず」と言われているそうです。この時期は農家にとってとても大事なことから雑節のひとつ「半夏生(はんげしょう)」としてお米づくりの節目とされていました。
▲サトイモ科の植物「カラスビシャク」。コルク層を除いた塊茎は、「ハンゲ」という生薬として用いられる
※黄経:地球から見て、太陽が一年かけて地球を巡る軌道を黄道と言います。その塩の軌道上で、春分の日の太陽の位置を0度として(夏至が90度、秋分が180度、冬至が270度)、太陽が何度の位置にあるかによって今日が何の日にあたるかを測ります。その角度のことを言います。
お米づくりに大切な「半夏生」とは?
古来、夏至から数えて11日目にあたる半夏生までに田植えを終えていないと、秋の収穫の実りが減る(=半分になる)と言われており、「半夏半作(はんげはんさく)」「半夏半毛(はんげはんけ)」といった言葉があったほど。また、半夏生の日に降る雨のことを「半夏雨(はんげあめ)」といい、この日の天気によって一年の豊作を占う習わしや、この日に雨が降るとそれをきっかけに大雨が続くという言われなどがあります。さらに、かつては半夏雨には毒気が含まれていると考えられており、井戸に蓋をして備えたという驚きの慣習も。また、田植えを見届けた田の神様が、田んぼから天へ昇るときの雨だという言い伝えが残る地域もあるようです。
農家の労をねぎらう半夏生の行事食
この日は、田植えを済ませた農家が休息をとる日ともされており、各地に半夏生に食べる行事食の風習が残っています。なかでも有名なのが、関西地方で食べられているというタコ。稲の根がタコの足のように、多くしっかり張るようにと願い食べ始めたのが発祥だとか。香川ではかつて、田植えや麦刈りを手伝ってくれた人たちのために、半夏生にうどんをうって振る舞っていた由縁から、7月2日は「うどんの日」となったと言われています。
また、福井県では昔から半夏生の日に丸焼きのサバを食べる習慣があるようです。江戸時代に福井県の東部、越前大野の殿様が、田植えで疲れた体を癒し、暑い夏を乗り切るために、領民に奨励したのが始まりだそう。今では夏バテ防止のスタミナ食として、県内全域でおなじみの行事食となっています。
半夏生の日に食べられていたタコやうどん、サバの中から、今回はタコを使ったサッパリしたごはんのおともをご紹介します。
◆タコとオクラのサッパリ和え
<材料>
タコ(茹でたもの) 80g
オクラ 1袋
長芋 70g
生姜 1カケ
白だし 大さじ1程度
<作り方>
① オクラはサッと茹でて食べやすい大きさに切っておく
② 長芋は皮をむいて食べやすい大きさに切っておく
③ 生姜はみじん切りにし、タコは食べやすい大きさに切っておく
④ ボウルなどに白だしと生姜を入れて軽く混ぜ、タコ・オクラ・長芋を入れてよくなじませるように混ぜたら出来上がり
半夏生に欠かせないタコを使ったサッパリ和えは、オクラや長芋の粘り気が白だしや生姜などと絡んでとても美味しい一品です。オクラの他にきゅうりでも美味しくできます。サッパリしていますが、しっかりとした味付けなのでごはんのおともはもちろん、ごはんにかけても美味しくいただけます。お酒のおつまみとしても◎。これから暑くなり食欲がなくなる時期にも最適です。切って和えるだけのとっても簡単レシピなので、この機会に作ってみてはいかがでしょうか。
参考サイト:
半夏生さば - 越前おおの観光ガイド
https://www.ono-kankou.jp/tourism/detail.php?cd=488
福井の和食 | 福井県観光情報ホームページ ふくいドットコム
http://www.fuku-e.com/wasyoku/dento_detail.php?id=10
参考文献
『日本の七十二候を楽しむ』東邦出版
『日本の365日を愛おしむ』東邦出版
『暮らしのならわし十二か月』飛鳥新社
文:カベルネmama
管理栄養士、食生活アドバイザー2級の資格を保持。保育園で献立作成や食育を担当していた経験を持つ。現在は幼い3人の息子の育児をしながらレシピ記事作成を行う。料理を作ること・食べることが大好き。子どもたちのため、栄養たっぷりで簡単に作れ、喜んで食べてくれるものを考案する日々を送る。