【おばあちゃんちの常備菜】ツンとつきぬける辛みが心地よいわさびの茎の醤油漬け ・余ったわさびで作る酒かす漬け

 

tsuntoku1

日本の薬味の代表格ともいえるわさび。チューブ入りのわさびが全盛の昨今ですが、とっておきの刺身を食べる時などには家庭でもちょっとぜいたくして、生わさびを使ってみてはいかがでしょう。

デパートやスーパーで1本売りの根わさびを買うとそれなりに高価ですが、生産地の直売所やわさび農家さんのネット販売ではかなりお手頃な価格で手に入れられることも。また、わさびの茎は根わさびに比べるとぐっと安価なので、家庭用の食材としておすすめです。もし生の根わさびや茎わさびが手に入ったら、その味わいをとことん楽しむためにもぜひ作って欲しい常備菜2種をご紹介します。

 

茎わさびの醤油漬け

茎わさびはわさび生産地では野菜のように流通していて、茎だけにしたもののほか、葉のついたもの、葉と小さな根がついたもの(苗)もあります。他の地域ではあまり見かけることがありませんが、各地のわさび農家から取り寄せることもできるので、「茎わさび」「わさび苗」などで検索してみてください。

茎わさびは酢を加えた「三杯漬け」という漬け物にすることも多いのですが、濃縮つゆを使うと簡単で色良く食べやすい味に仕上げることができます。

<材料>
わさびの茎 

濃縮つゆ(醤油、みりん、酒、水、かつお節、昆布などで作ってもOK)


<作り方>
①わさびの茎を洗う。写真は「苗」
tsuntoku2

②洗ったわさびの茎を食べやすい長さに切る。
「苗」の場合は、主に茎と根部分のみ使う。根は外側を削って中身を刻む。

tsuntoku3

③80度の湯で10~20秒茹でて冷水にとって冷まし、ざるにあげて振りながらよく水を切る。よく振るなどして刺激を与えた方が辛みが出るといわれている。

*湯の温度は高くても90度まで。沸騰させた湯に入れると辛みがなくなる。
*茎が太い場合はゆでる前に塩もみしてもよい。
*茎が細い、柔らかい場合は、茹でずに湯をかけ回すだけでもよい。


④水気を絞ってから濃縮つゆ(好みの味に薄めてもよい)に漬ける。
tsuntoku4

 

⑤半日後くらいから食べられるが、1日経った方が味がなじむ。保存は冷蔵で1週間程度を目安に。
tsuntoku5

 

茎わさび醤油漬けの味わい方

そのままごはんのおともとして味わうほか、薄めの味で作っておけば、おひたしのような一品としても使えます。また、刻んで酢飯に混ぜて油揚げに詰めた「わさびいなり」もおすすめ。すっきりとした辛みが後を引くおいしさです。
tsuntoku6

tsuntoku7

tsuntoku8

 

残った根わさびの酒かす漬け

根わさびを買って生わさびならではの風味を満喫したものの、全部使い切れなかったという時などにおすすめの常備菜です。

そもそも根わさびはすべてをすりおろすのは難しいですし、茎の部分を捨てるのももったいないので、残った部分はぜひ酒かす漬けにしてみましょう。小さな根わさびを安価でたくさん手に入れた時などにも作ってみてください。

tsuntoku9

tsuntoku10

①根は外側の黒い部分を削りとった後に刻む。輪切りにするより縦に刻んだ方が辛みが強くなるといわれている。茎の部分も内側までよく洗って細かく刻む。苦みを極力減らしたい時は、刻んだわさびに塩少々を振って1時間程度置き、出てきた水分を絞ってから使う。

②酒かすは酒でゆるめ、塩と砂糖、みりんなどで好みの味に調味する。塩は強めにした方が味よく仕上がり、日持ちもする。

③調味した酒かすに刻んだわさびを漬ける。数日後から食べられる。冷蔵保存のほか、冷凍も可。

★写真のように瓶に酒かすを入れて調味し、その中に使い残しのわさびを刻んだものを随時加えていくようにすると便利。この場合は塩を強めにし、酒かすの表面が空気に触れないようにラップで覆ってから蓋をしめる。
tsuntoku11

 

すしはもちろん、日本食においてとても大切な役割を果たしているわさび。抗菌効果のほか、さまざまな研究によって健康に役立つ効果も発見されているとのこと。家庭でも生わさびに改めて注目して、常備菜としても楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

文:松本葉子
食と旅を専門とするフリーランスライター。全国の飲食店のほか、農家、牧場、漁協など生産現場での取材を元にした記事を雑誌、webなどで執筆。自身の料理スキルを生かした記事執筆や食品企業へのレシピ提供も行う。

【米粉レシピ】管理栄養士が教える「グルテンフリーな米粉パン~基本レシピ~」

 

gultenfree1

パンと言えば小麦粉で作ったものが一般的ですが、「グルテンフリー」という言葉をよく耳にするようになったこともあり、近年では米粉を使ったパンのお店やレシピを見かけることも多くなりました。私自身、十数年前に勤めていた保育園で、小麦アレルギーの子ども向けに取り扱っていた米粉100%のパンがありましたが、冷めると硬くとても美味しいとは言えないものでした。最近では米粉100%でも美味しいパンを見かけることがあり、アレルギーのありなし関係なく食べる人も増えたのではないでしょうか。

 

グルテンフリーな米粉

小麦にはグルテニンとグリアジンというタンパク質が含まれていますが、水を入れて混ぜることで2つのタンパク質が絡み合いグルテンになります。グルテンは、パンを作る際の骨組みになるとても重要な存在です。しかし、グルテンは自己免疫疾患であるセリアック病の原因になる他、様々な不調の原因になることも。自分では気づいていなくても、腸がグルテンに過剰に反応する過敏症や、グルテンを消化しにくい不耐症だという人もいます。グルテンによるトラブルは消化器官だけではなく、頭痛やめまい・イライラ・疲労感など多岐にわたると言われています。

グルテンが含まれているのは、パンやうどん・パスタ・ケーキなど小麦粉を原料としているものがほとんどです。米粉にはグルテンが含まれていないので、『長年便秘や下痢に悩まされている』『何となくやる気が出ない』『日中も頭がすっきりしない』などの症状が当てはまる人は、小麦を米粉に変えてみてはいかがでしょうか。

 

米粉のメリット

米粉は白玉粉や上新粉など以前からあったものもありますが、最近の米粉パンに使われる米粉はそれらの米粉とは少し製法が異なるよう。以前のものよりも粒子を小さくすることで、パンやお菓子など幅広く使用できるようになりました。

パン作りというと、捏ねや1次発酵・2次発酵など面倒なイメージがある方もいるのではないでしょうか。小麦で作るパンは、捏ねることでグルテンがしっかりと形成されるため捏ねの作業が重要となりますが、米粉で作るパンは捏ねる必要はありません。さらに、発酵も1度でできてしまうことから、短時間で作れるためオススメです。米粉の特徴はもっちり食感。パンやお菓子はもちろん、麺類や餃子の皮・天ぷらなどにも使えます。

gultenfree2

 

米粉パン~基本レシピ~

gultenfree3

<材料> パウンド型(16×8×5cm)
米粉(グルテンフリーのもの)         170g
コーンスターチ(片栗粉でもよい)       10g
インスタントドライイースト          3g
砂糖                     10g
塩                      2g
オリーブオイル(無塩バターや菜種油でもよい) 10g
牛乳                     100cc 
ぬるま湯(30度~35度)            70cc 

 

<作り方>
① ボウルに米粉を入れて真ん中を窪ませ、窪ませた場所にコーンスターチと砂糖、ドライイーストを入れる
② ①の真ん中にぬるま湯を入れて2~3分程おく
③ ②に塩とオリーブオイル、牛乳を入れて泡たて器でよく混ぜる
④ 型にクッキングシートをしき③を流し入れる
⑤ ラップをして40度で40~60分程発酵させる(目安は2倍)
⑥ 200度に予熱したオーブンで20~25分焼く
⑦ 焼き上がったら型からはずし、網の上などで粗熱が取れるまで冷ます

 

★ポイント
1. 米粉の種類によって水分の量が異なるので、③で混ぜた時にヨーグルトくらいのかたさになるよう調節してください。
2. 米粉によってはパンミックス粉など既にコーンスターチや増粘剤などが含まれている場合があります。その場合はパンミックスのみで180gにします。
3. 発酵させる場合はオーブンの発酵機能を使った方が便利ですが、室温でも可能です。室温の場合は60~90分かかることがあります。
4. オーブンの発酵機能を使う時はその後にオーブンの予熱をしますが、特に夏場は予熱している時間にも発酵が進むため1.8倍程の発酵で次の工程に移る方が◎。
5. 食べきれない場合は、1枚ずつラップに包み冷凍庫で保存できます。2~3週間を目安に食べきりましょう。解凍する場合は自然解凍か電子レンジで30秒程度温めた後、トースターで焼いてください。

 

参考サイト:
熊本製粉
http://www.bears-k.co.jp/featured_riceflour/

 

文:カベルネmama
管理栄養士、食生活アドバイザー2級の資格を保持。保育園で献立作成や食育を担当していた経験を持つ。現在は幼い3人の息子の育児をしながらレシピ記事作成を行う。料理を作ること・食べることが大好き。子どもたちのため、栄養たっぷりで簡単に作れ、喜んで食べてくれるものを考案する日々を送る。

【7月薬膳レシピ】トマトとオクラと豚肉の卵炒めで夏バテ知らず

 

7月に入り間もなく梅雨も明け、日本は夏本番を迎えます。自然界のエネルギーが最も盛んになり、私たちも活動的になりますが、その反面、夏バテや熱中症など暑さによる体への影響が出やすい時期でもあります。毎年夏バテをしてしまう方、今年は日々の生活に薬膳を取り入れて、快適で楽しい夏を過ごしましょう。

 

体の熱は夏野菜で冷やしましょう

shichigatuyakuzen 1

まず、夏バテや熱中症など夏の暑さによる体の不調の原因について。1つは、夏の暑さによる邪気(外から入る病気)が、体に入り込んでしまった時です。その熱を溜め込んでしまった場合、高熱やイライラ、顔が赤くなるなどの熱症状が現れます。暑さを感じるとどうしても冷たいものをたくさん取りたくなりますが、この場合は体の熱を取ってくれる食材を摂取し、熱を冷ましてあげることが大切です。そして食材はなるべく冷たくせずに、加熱調理して摂取することをお勧めします。

2つ目は、汗をかき過ぎることにより体の水分が消耗し、必要な水分と同時にエネルギーも一緒に出てしまった時です。息切れ、脱力、夏バテなどの不調につながります。この場合も同じです。冷たい飲み物で水分を補いたくなりますが、飲み物はなるべく常温以上のものを取り、一緒に体の水分を補う食材やエネルギーを補う食材を取って整えるよう心がけましょう。

 

また、夏は心(=心臓)に負担がかかりやすい季節です。心は体温維持を行なう働きからもともと熱が多いところですが、夏の暑さによりさらに熱がこもり負担がかかってしまいます。心に負担がかかり働きが弱まると、動悸や不整脈、のぼせや頭痛などの不調とともに不眠や情緒不安定など精神的トラブルも起こりやすいので、この時期は心を補ってあげることも大切です。

 

この時期に取りたいオススメの食材

◆体の熱を冷ます食材
トマト、ナス、ミョウガ、緑豆、きゅうり、スイカ、冬瓜、豆腐etc

体の水分を補う食材
きゅうり、トマト、オクラ、ズッキーニ、冬瓜、レモン、アスパラ、豆腐、緑豆、キウイetc

体のエネルギーを補う食材
米、山芋、とうもろこし、じゃがいも、キャベツ、カボチャ、なつめ、はと麦、豚肉、鶏肉、牛肉etc

「心」を補う食材
ゴーヤ、緑茶、卵、ユリ根、銀杏、菊花、アロエetc

 

夏バテ予防に「トマトとオクラと豚肉の卵炒め」
shichigatuyakuzen 2

<レシピ4人分>
豚の切り落とし 200g
トマト 大1個 
オクラ 10本
卵 2個
牛乳 大さじ2
*醤油 大さじ1
*みりん 大さじ1
*酒 大さじ1
*塩 小さじ1/2

<作り方>
1. 豚肉は食べやすい大きさに切り、下ごしらえをする
(豚肉の下ごしらえ・・片栗粉 大さじ1、酒 大さじ1、塩 少々をまぶす)
2. トマトは乱切りにする
3. オクラは塩で板ずりし、1cmくらいの斜め切りにする
shichigatuyakuzen 3
4.ボウルに卵を溶きほぐし、牛乳と塩少々を加えてよく混ぜる
 *牛乳を加えることで卵がふんわり仕上がります。
5. フライパンに油を熱し、4を流し入れふんわりと混ぜ、一度取り出す
shichigatuyakuzen 4
6. 油を少し足して豚肉、オクラを炒める
 豚肉とオクラに火が通ったらトマトと*の調味料を入れさっと炒める
 最後に5を戻し入れ、手早く混ぜ合わせたら出来上がり

 

文:建部春菜
「薬膳とヨガと心地よい毎日」主宰。熊本を拠点に薬膳やヨガをベースとしたライフスタイルを提案。様々な場所で薬膳やヨガのイベントを開催 。また、学研プラス merアプリにて「かんたん薬膳」を連載。

【全国のごはんのおとも】しょうゆの副産物・長崎県島原地方の『納豆みそ』

 

朝食に並ぶ『納豆』といえば、一般的にはネバネバした「水戸納豆」が有名だが、長崎県島原地方の『納豆』といえば、醤油を作る時に出る、もろみを指す。「醤油の実」として食べられている地域もあるが、島原地方では「納豆みそ」と呼び、ごはんのおともとして親しまれている。あまりに当たり前に食卓に並ぶため、筆者も進学で長崎県を出るまで、『納豆といえば「納豆みそ」だと思っていて、水戸納豆を食べた時に、あまりの違いにびっくりしたのを今でも思い出す。

shouyuno1

 

 

「納豆みそ」とはどんな味??

『納豆みそ』の主な原料は麦で、大豆や刻んだ昆布、生姜が混ぜてある。炊きたてのごはんにのせて食べると、甘辛いつけ汁に麦と大豆のプチプチとした食感が楽しめ、昆布の旨みと生姜のピリッとした風味が後から口の中に広がって、箸がすすむ。とにかくごはんに合うのが一番の特徴で、発酵食品だから栄養価も高く、塩分は醤油より控えめ。実は、ごはんのおとも以外にも、冷奴や焼き魚などに醤油代わりにかけて食べたり、酒の肴としても重宝する万能調味料でもある。

スーパーには、味噌のコーナーにそれぞれの製造会社の自慢の「納豆みそ」がずらりと並んでいて、選ぶのも大変なほど。大豆や大麦などを混ぜて蒸したなめ味噌の一種、「金山寺味噌」のことを九州の一部では、『金山寺納豆』と呼ぶそうだが、そこから納豆と呼ばれるようになったとも言われている。しかし、真相はわかっていない。謎が多い食べ物でもある。

shouyuno2

 

島原地方の歴史にも関わりが深い食べ物

「納豆みそ」は長崎県内でも特に島原地方で食べられていて、そのルーツには諸説あるが、1637年に起こった島原の乱で、原城に立て籠もった天草四郎率いる一揆軍が近くで採れた野菜や木の実、海藻などを混ぜて作ったのが始まりとされているほか、江戸時代、島原藩では馬に戸籍がつけられるほど馬を育てる家が多く、その馬たちへミネラル分を取らせるためにもろみを食べさせていたという歴史もあったそう。昔から醤油を各家庭で作る文化があり、その製造過程で出たもろみを食べやすくしたものが現在の「納豆みそ」になったのではないかと言われている。 

島原地方は古くから、醤油や味噌などの発酵食品が身近にある地域だった。現在でも、味噌や醤油の製造会社が多くあるのもその名残かもしれない。

 

老舗みそ蔵の「納豆みそ」へのこだわり

長崎県南島原市にある創業100年の『喜代屋でももちろん、「納豆みそ」は看板商品の一つ。 喜代屋の加来邦彦総務部長は、島原地方に味噌・醤油文化が根付いていることについて「雲仙山系からのきれいな水が流れていること、いい大豆が取れていたこと、吹きさらしの風が吹いていたことなど、気候や風土が良かった」と話す。

こちらの「納豆みそ」は昔ながらの巾着型のパッケージにこだわり、製造スタッフが手詰め作業で商品作りを行っている。機械で詰めると麦や大豆が割れて、つけ汁が濁り、風味が落ちてしまうから、ということだ。麦や大豆本来の美味しさを損なわず、長く愛される味を追求して、今では多くのファンがつく喜代屋の「納豆みそ」。加来さんら社員の営業や展示販売の努力もあり、現在は、県内だけでなく、九州や関西、関東まで販路を拡大し、懐かしさを感じる島原地方出身者などを中心に売れ行きも上がっているということだ。

shouyuno3

shouyuno4


もっと食卓に「納豆みそ」の魅力を伝えたい

喜代屋では、「納豆みそ」の美味しさや楽しみ方の提案も行っている。3〜4合のごはんに「納豆みそ」を一緒に入れて炊き上げた「炊き込みご飯」、醤油代わりに納豆みそをかける「卵かけごはん」、ネギやゆずなどを添えてお茶をかける「お茶漬け」、刺身や茹でたえのきに和えた「和え物」、納豆みそにきゅうりなどの野菜を一夜漬けする「漬物」など、取材しただけでもたくさんの料理を紹介してくれた。

shouyuno6

なかでも炊き込みごはんは、味噌の味がしっかりごはんにも染み込んで、麦や大豆がふっくらして美味しい。腹持ちもよく、お昼に食べると夜までしっかり働けそうなほどパワーがみなぎる感じがした。

他にも、スタンダードな「納豆みそ」以外に、焼肉と一緒に食べて美味しいキムチ風味の「スタミナ醤」やいりこが入った甘めの「いりこみそ」などのシリーズ商品も生み出している。

shouyuno5

ベースの原料はそのままに、納豆みそ自体の可能性を広げる試みで、それだけ食べても十分美味しいが、さまざまな料理への利用も広がる。「スタミナ醤」はキムチチャーハンの味付けにも使えるし、「いりこみそ」はクラッカーにのせておやつ感覚でも食べられる。

加来さんは、「現代的な食べ方も提案して、馴染んだ味以外の楽しみ方を地元の人にも楽しんでもらい「納豆みそ」の価値をもっと高めていきたい」と話す。

 

進化を続けるごはんのおとも

島原地方は米どころであり、ジャガイモやブロッコリー、人参など野菜の一大産地でもある。島原半島の形から、地元のJAでは「一億人のいぶくろ」とキャッチコピーを掲げるほど、何でも食べ物が揃う地域だ。減反政策が進められた時は、空いた田んぼで大豆などを育て、味噌を作り販売した女性たちもいるほど、味噌や醤油は誰でも作ることができる調味料だった。「納豆みそ」は、そんな島原地方の当たり前から生まれたソウルフードで、今でも食卓の片隅にちゃんと存在し、進化を続けているごはんのおともなのだ。

 

お米の発酵パワーで心身を健やかに。適量の日本酒がもたらす『百薬の長』効果とは

 

『酒は百薬の長』ということわざがある通り、古来、適量の酒はどんな良薬よりも体に良いと考えられてきた。そして世界に数ある酒の中で、健康への効能を最も期待できるのが実は日本酒なのである。ではいったい日本酒の何がどう健康に効くのだろうか? その辺りを少し掘り下げてみたい。

 

日本酒の健康パワーの源は豊富なアミノ酸にあり

醸造酒*である日本酒には、ビタミンやミネラル、アミノ酸、有機酸など、お米と米麹の発酵過程で生じた大量の栄養成分が息づいている。その数は何と120種類以上。嗜好品でありながら、栄養価が極めて高い飲み物である。特にアミノ酸含有量は他の酒類と比べても格段に多く、ワインの10倍以上とされている。

その中には、体内で合成できない必須アミノ酸(リジン/トリプトファン/ロイシン/イソロイシン)をはじめ、運動時のエネルギー源になるアラニン、内分泌・循環器系機能の調整に役立つアルギニン、免疫機能の維持や消化管の保持をするグルタミン酸などが含まれ、このアミノ酸の多さが日本酒の健康効果を高める大きな要因となっている。

*醸造酒: 日本酒、ワイン、ビールなどのように穀類や果実を発酵させてつくった酒。醸造酒をさらに蒸留させて造るのが焼酎、ウイスキー、ウォッカなどの蒸留酒である。

okomenohakkou1

 

血圧を下げ、心疾患のリスクを軽減させる効果も

アミノ酸分子が2個以上結合した化合物をペプチドと言うが、日本酒からは血圧をゆっくり下げる作用を持つペプチドや、悪玉コレステロールの酸化変性を抑えるペプチド、健忘症予防に役立つペプチド、糖尿病患者のインスリンの感受性を改善し、心疾患(高血圧/動脈硬化/狭心症/心筋梗塞)のリスクを軽減するペプチドなどが発見されている。特に糖尿病の治療では、日本酒に含まれるアルギニンも血糖値の低下に役立ってくれる。

こうした研究結果を受け、糖尿病学会でも血糖コントロールが良好で合併症がない限り、1日約1合の日本酒の摂取を許可している。もはや糖尿病=日本酒を避ける、という考え方は過去のものとなっているのだ。

okomenohakkou2

 

他の酒類を上回る血管拡張作用が心身を解きほぐす

アルコール飲料の多く(特に蒸留酒)は体を冷やす作用を持つが、日本酒は血管を拡張し血行を促進する物質(アデノシン:核酸の一種)を他の酒より圧倒的に多く含むため、体温が高い状態が長く持続する。そして血管が拡張すると毛細血管の働きも活性化するため、冷え性、肩こり、腰痛などが和らぐとともに、ストレスの解消にもつながる。

思えば寒い冬に飲む燗酒は、温めることで常温と一味違う旨味が引き出されると同時に、体を温め心をリラックスさせる効能を一層高める意味でまさに一挙両得。心身の疲れを癒してくれる、日本独自の優れた食文化の一つと言えるだろう。

okomenohakkou3

百薬の長の代表である日本酒の優れた効能をいくつか並べてみたが、かの『徒然草』にて吉田兼好は、「百薬の長とはいへど、万の病は酒よりこそ起これ」という一文と共に、世の酔っ払いたちの悪行をこれでもかと書き連ねている。

百薬の長となるのは、あくまで適量の日本酒のみ。過ぎたる酒は万病の元になることを肝に銘じつつ、お米の恵みの良薬と末永くおつきあい頂ければと思う。

 

参考サイト:
healthクリニック
http://www.health.ne.jp/library/5000/w5000392.html
日経Gooday

http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100015/062100022/
Sake Viva

http://jo-jima.com/ec/sake/blog/how_to_drink_sake/1113
良好倶楽部
https://ryoko-club.com/food/sake-nutrition.html

okomeno
mozi rekishi mozi tane mozi bunka mozi hito mozi hito mozi huukei mozi noukamuke

【秋レシピ】管理栄養士が教える!サバの水煮缶で作る『サバのソフトふりかけ』


【秋レシピ】管理栄養士が教える!不溶性食物繊維豊富なきのこで作る贅沢炊き込みごはん


美しく凛と咲く「ヒガンバナ」が農家の天敵から田畑を守る!


商人が農民をねぎらうためにはじまった、250年以上続く「八朔祭」


【秋レシピ】管理栄養士が教える! 冷え性予防に風邪予防も!?「みょうがで作るふりかけ」